DAY 39 夏休みのスタンプ台帳の秘密とヒーローショーだった日
ついに高校一年生の夏休みが始まった。
ちなみに、夏休みに入る前の定期試験の俺の結果は、学年総合48位。
ダイエット計画で普段より勉強時間は少なかったはずだが、順位は予想より上だった。
要因として、今回学年総合一位だった西崎華さんとテスト対策が出来た、とういうのが大きかったのかもしれない。
ダイエット計画、急に誘われて驚いたが、痩せたうえに成績も上がるとか、俺にとっては恩恵しかなかったな。
本当に、誘ってくれた伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんには感謝しかない。
まぁ一番の恩恵は、クラスの三軍の俺が一軍のメインメンバーである彼女たちと仲良くなれた、ってのがダントツだが。
「うぉおおおおおー! 大型商業施設最高ー! 鍋から浴衣まで何でも売ってるし無敵すぎるー!」
朝食はサンドイッチをいただき、買い物へ。
いつも走っている公園の横にある大型商業施設、近いからよく利用しているのだが、今は夏休みなので、結構学生さんがいて混雑している。
「ちょ、藤浪さん! 走っちゃだめですって! あとで寒天ゼリー買ってあげますからステイ、ステイ!」
商業施設へ入った途端、藤浪桃世さんが大興奮。
ポニーテールを揺らし、満面笑顔で走り回りだしたので、慌てて止めに入る。
しかし何でも売っている表現として、鍋から浴衣までって、相変わらず独特の感性だなぁ、藤浪さん。
「あー! また名前じゃない呼び方ー! あと餌で釣るとかミャーマの私の扱いどうなってるのー! 仮にも師匠なんだぞー!」
「ご、ごめん桃世。ほら、夏休みで小さい子供もいますから、大人な桃世は落ち着いた仕草を見せましょう」
ダッシュで飛び出していった藤浪さんが俺の声に反応し、五倍速巻き戻し動画を見ているかのような速度で戻ってくる。
はっや……!
師匠とかよく分からないが、動きの機敏さでは藤浪さんには敵わないなぁ。
「大人……も、もちろんももよーん様は大人な女だからな、小さな子供たちの見本になるようなエレガントな存在として君臨せねばな、うん」
夏休みで広い空間に来れて弾けてしまったのだろうが、それは公園でやりましょう。
「ふふ、美山君がお父さんみたい。桃世も素直に聞くし、かーわいい。ちなみに桃世が弾けてしまったのは、四人で買い物に来れて嬉しいのと、面倒なナンパに遭わない解放感、が大きいかなぁ」
「それ、マジで三人だけで買い物に来ると、いちいちチャラい男が寄ってくんだよ。フードコートとか最悪でよ、食事してたら横の席に陣取ってきてずっと話しかけてきたり……ああああ思い返しただけでウッザ……! お前マジでずっと私の側にいろ」
西崎華さんの話に伊江里クロワさんが同調しているが、なるほど、確かに楽しい買い物に来たのに、いちいちナンパされてたんじゃ楽しくないだろうしなぁ。
今も周りの男たちがチラチラこちらの様子を伺っているし、今まで本当に大変だったんだろう。
まぁ三人はマジで目立つし、お美しいんですよ。
「分かりました、俺なんかでよければ皆さんの盾になりましょう! 見てください、ダイエットで余計な肉を落とし、代わりに筋肉を味方につけた俺の身体を!」
俺は筋肉が美しく見えるポーズをとり、盾役をアピール。
……とりあえず、妙な動きをする男が側にいれば、余計なナンパはある程度防げるだろう。
「あっはははは! ミャーマかっこいいー! これぞまさに肉の盾だー!」
俺の行動に藤浪桃世さんが大爆笑。
俺の背中をバンバン叩いて笑っているが、大丈夫です、今の俺はその程度の衝撃には動じない身体を手に入れましたので!
「ふふ、桃世がここまで気に入る男性って美山君が初めてじゃないかしら。桃世って不思議な感覚の持ち主だから、感性が合う人がなかなかいなかったらしくて、小中と苦労したみたいなの……。でももう安心ね、美山君なら桃世の全てを受け止めてくれそう。まぁ私も美山君に全てをさらけ出しますけど、ふふ」
「こいつ、子供の頃から妙に器用だからな。ってお前等の妙な性癖をこいつにぶつけんな。美山進太はずっと私の物だって言ったろ」
俺がポーズを決めると、藤浪桃世さんも同じポーズをしてきたので、じゃあ二人でフュージョンみたいな合体ポーズを……と遊んでいたら、子供たちが笑顔で寄ってきてしまった。
え、藤浪桃世さんって、小中と苦労していたんですか……。
まぁこの独特な感性は人を選びそうではあるが、俺は藤浪さんの感覚、楽しいし好きだけどなぁ。
「俺は桃世の話とか、好きですよ。普通じゃ発想しない不思議な言葉を選んできますし、すっごい楽しいです」
「フハハ見ろ子供たちよ、エレガントももよーん様の大人な姿を……って今ここで告白とか、ミャーマのほうが感覚おかしいってー! あははは! やっぱミャーマおっもろー、はいスタンプー!」
俺が笑顔で言うと、藤浪さんが顔を真っ赤にして、集まってきた子供たちをまとめて抱き寄せる。
そして俺のスタンプ台帳に、勢いよくドカンとスタンプを捺印。
「え、あれ、スタンプ……」
「……細かい説明してなかったけどよ、これ、私たちが押したいな、と思ったら押すんだ。嬉しかったり楽しかったり、押す基準は人それぞれなんだけどよ……つまり、私のスタンプが欲しけりゃ桃世ばっか構ってねぇで、私の側にいろっての……」
俺が不思議な顔をしていると、伊江里クロワさんが『夏休みのスタンプ台帳』の説明をしてくれた。
なるほど、そういうシステムなのね。
30個貯めたらご褒美くれるって言うし、よし、この夏休みは『スタンプ台帳クエスト』をやり遂げてみせるぞ!
「ふふ、あまり気負わず、四人で夏休みを楽しんでいれば自然と押されていくと思いますよ。30個貯まったご褒美は……ご期待下さいね」
西崎華さんがニッコリと微笑む。
ご褒美にご期待……ゴクリ……一体どんなご褒美なんだろう……。
「ももよーんマーン! またねー!」
「フハハ! 良い子にしていれば必ず会えるさ……さらばだ子供たちよ!」
そして気が付いたら、藤浪桃世さんの周りにはすごい数の子供が集まっていた。
ももよーんマン……よく分からないが、子供の感性とすごく波長が合うんだろうなぁ、藤浪さん……。
それでここには何をしに来たんでしたっけ……ヒーローショーのお披露目じゃあないですよね。
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影木とふ




