DAY 38 痩せた俺が『天使たちの溜まり場チーム』のリーダーになった日
「マジで痩せたなぁ、俺」
早朝五時、玄関にある鏡に我が身が映っているが、高校入学時とは別人レベル。
俺のキュートで丸かったシルエットはどこかへ消え去り、シュッとした細身に変化。
現在は筋肉もつけたので、細マッチョ、という感じだろうか。
高校に入り、伊江里クロワさん、西崎華さん、藤浪桃世さんというクラス三大美女と出会い、俺の生活は激変した。
それまではダラダラとした自堕落生活を送っていたのに、いきなり『ダイエット計画』に強制参加させられ、一か月ちょっとに及ぶ食事制限に朝夕の運動と、初心者には結構厳しい生活を送ることになったからなぁ。
でも一人暮らしの俺の家にクラス三大美女が普通に出入りし、『溜まり場』状態になったのは、ちょっと、いや、かなり役得だったか。
……なんというか、具体的に言うと……下着姿の彼女たちに遭遇する確率が高い、という目の保養的な意味で。
そんなご褒美などもパワーに変え、俺は見事にダイエット計画をやり遂げ、痩せることに成功。
自分でも驚く細身を手に入れた。
「……朝から何を自己陶酔してんだ」
俺の部屋から金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが出てきて、俺をジロっと見てくる。
「あ、おはよう伊江里さ……じゃなくてクロワ。いや、俺痩せたなぁって自己確認をしていたんだ」
おっと、学校祭以降、俺は彼女たちを下の名前で呼ぶ、となったんだ……。慣れないが、なんでかそのように決まったのだから、そう呼ぶしかない。
そして彼女たちは、昨日も普通に俺の家に泊まっていったからな……。
俺の部屋には伊江里クロワさん、寝室に藤浪桃世さん、空き部屋に西崎華さんが寝泊まりし、俺は居間のソファーで寝ている。
部屋割に不満はない。
……なぜ? さっきも言ったが、彼女たちの下着姿に遭遇する確率が高い、というか、ほぼ毎日下着姿で過ごしているから。
そして今、俺の目の前にいる伊江里クロワさんが、ブッカブカのTシャツにハーフパンツ姿という、ちょっと前かがみになってくれたら色々と見えてしまいそうな格好なんですよ。
もちろんノー下着状態。
この状況で不満など……無い。
同じクラスの女子が俺の家でこの格好なんだぞ? 破壊力抜群である。
「……ちょっと私と比べてみるか。うん、前と全然ちげぇ」
伊江里クロワさんが俺の横にピタっとくっ付くようにして立ち、鏡越しに俺を見てくる。
あ、ま、まぁここの鏡に二人収まろうとしたら、腕がくっつくレベルで接近しないといけないしな。
うう、伊江里クロワさん、甘い香りがする。
「ク、クロワのおかげだよ、ありがとう。これなら俺もちょっとはモテるかな、あはは」
「……ちっ……色気づきやがって。一人いりゃあ充分だろ……」
俺が冗談を言うと、伊江里クロワさんがドンと肩をぶつけてくる。
「おっはー! おっと、夫婦の語らいを邪魔してしまった系ー? って、ミャーマって学校でも結構女子から見られてるの、気付いてないー? 実はモテ期がドンぶらこっことやってきていたー、あはははは!」
「あら、珍しくクロワが攻めてるー。そうですね……最近、結構美山君に女性の視線が集まってきていますから……今度そういうのは全て一掃しないといけませんね……ウフフフ」
背後からポニーテールを揺らし、藤浪桃世さんが抱きついてきて、西崎華さんが怖い笑顔で横に立つ。
二人も起きてきたのか。つか夫婦って……伊江里さんに怒られるからやめて……。
藤浪桃世さんが黄色のタンクトップに、下は下着一丁。
西崎華さんが、下着は着けているが、うっすいスッケスケのワンピースみたいなやつ。
見てくれ三人の格好を、これがほぼ毎日だぞ。
そりゃあ俺だってダイエット計画頑張るさ。
う……そして色々柔らかいものが当たる……。
え、俺って痩せてモテだした? 冗談じゃなくて、マジ?
……いや、藤浪桃世さんってたまに妙なことを言うから、話半分で聞いておこう。
「みなさんおはようございます。さて、今日から夏休みとなりますが、事前にいただいた希望を元にスケジュールを立てていこうと思います。さすがに全てを実行する、とはならないでしょうが、優先度と天候を鑑みて行動し、出来るだけ四人で楽しい夏休みを過ごせたら嬉しいです」
居間に集まってもらい、『天使たちの溜まり場チーム』の会議開始。
議題は『全力で楽しもう16歳の夏休み!』
一応全員に『この夏休みにやりたいこと』の希望は取ったのだが、西崎華さんのやってみたいことの希望が多すぎて、さすがにそれは夏休みをフルで使っても難しいのでは……となったので、希望の多かった順に、やっていこうかと。
天候に左右される系、海とか花火とかは、臨機応変にスケジュールを組んでやるしかない。
「あと、四人は平等のチームですが、一応リーダー、代表者を決めたほうが円滑に進むと思いますので、俺としましては伊江里クロワさんに……」
「……うっざ、お前がやれ」
「ミャーマでいいでしょー! 絶対てきにーん!」
「美山君が良いと思います。性格的にも合っていますし。それに美山君の言うことなら、じゃじゃ馬クロワもなぜか素直に従いますし、ふふ」
四人のスケジュールを把握しておく人物、形だけでもリーダーを決めておこうとしたら、女性陣が一斉に俺を指してくる。
「え、俺……ですか……?」
三軍の俺が、クラスの一軍に所属している美女三人のチームのリーダーをやるんすか……?
「お前で良い。理由はお前が決めたことなら誰も文句は言わない、以上」
「フハハハハ……! 我が弟子ミャーマには『他人支配』の能力がある……! さぁ心眼を開眼せよ……! 試しに『全員服を脱げ』と言ってみるがいい、その能力の一端が見えるだろう……フハハハハ!」
「能力……ではないですが、美山君の言うことなら、私たちは気持ちよく聞くと思います。あと個人的に男性から何月何日何時にどこどこに来てとか連絡が来るのって小さいころから憧れでしてそれが叶うと思うと私は毎晩携帯端末を握りしめ興奮し意中の男性からのお誘いを待つ乙女のように──……」
「……分かりました。形だけのリーダーですが、俺がやろうと思います。っても権限とかは無いので、たんにスケジュールを一番詳しく把握している人、と思って下さい」
伊江里クロワさんが女性陣のリーダーっぽいし、適任かと思ったのだが……俺か。
まぁいいか、形だけの物だし、断る理由もない。
「おおっとー、普段がっちりジャージを着込む私が、ミャーマの指示でなぜかタンクトップと下着一丁になっている……! なにぃ……ここからさらに脱げ、だと……! くぅ……弟子の『他人支配』の能力に逆らえないとは、師匠失格……無念!」
とりあえず今日のスケジュールは……と携帯端末を見ていたら、藤浪桃世さんがブルブルと震えだし、着ているタンクトップに手をかけ、一気に服を脱……っておい!
確かに一瞬、みんなエロいな、もっと脱いでくれないかな……と下心は湧いたけど……え、俺ってマジで『他人支配』の能力があるの……!
思っただけで誰かを動かすことが出来るとか、『時間停止能力』に並ぶ人気の能力……!
「なんちってー、うっわ、ミャーマの期待の目がすっごい! そっかー、そんなに私の裸が見たいのかー。じゃあそんなミャーマにはこれだ! 『夏休みのスタンプ台帳』ー! これを一人一枚ずつあげるから、頑張ってスタンプ貯めてねー」
藤浪桃世さんがタンクトップを一気にまくり上げ……!
おおおお、そのまま……って途中でビタっと手を止め、藤浪さんが悪い顔でニヤァと笑い俺を見てくる。
あああああ……やられた……すっごい期待の目で見てしまった……って、何この紙。
夏休みのスタンプ台帳……? 小学校の時の、早朝ラジオ体操のスタンプ的なやつ?
「さすがにこの個性的なチームをまとめるのは大変だろうし、ご褒美あげるー。スタンプを30個集めたら、何か一つ、ミャーマの希望を叶えてあげるよー。マジで何でも言うこと一個聞くー」
リーダー役のご褒美。なるほど、いやありがたい。
……え、何でも一個……ゴクリ……
「……あ? てめぇ、何を期待の目で見てやがる。私からも一枚やるけど、ご褒美はスタンプを30個貯めた特典みたいなものだ。エロいのはそういう理由じゃやらねぇ。……そういうのは普通に言え……」
伊江里クロワさんからもスタンプカードを渡される。
え、最後声が小さくて聞こえなかったのですが……?
「──誘いの連絡を受けた乙女はそれはそれは舞い上がり着ていく服そして下着までも念入りに思案し用意し期待と不安のデート当日を待つのですあまりにガードが固そうな服はお誘いしにくいのかなでもゆるゆるの隙だらけの服も軽い女に見られるのかもしれないしいいバランスのちょっと今夜誘ってみたくなるようなそういう雰囲気をだしつつ私は──」
すんごい早口で喋っている西崎華さんもスタンプ台帳を一枚くれたが、もしかして、さっきからその句読点無しの話、続いていたんですか……
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影木とふ




