DAY 3 体感100キロマラソンの後は美女のシャワータイムだった日
「おらサボんな! 走れ走れ!」
「頑張れー、ほいほいほい、リズムも大事だからー、音楽聞きながらとかオススメー」
「……というか、結局私たちも一緒に走るのね……。まあ仲間は多いほうが続けられそうだけど」
あれ……おかしい……なんかとても胸が苦しくて辛い……恋か?
いや、肉だ……肉が足りない。
……なんで俺、学校が終わった夕方に公園を走っているんだ?
いつもなら平和な肉作成タイムなのに……おかしい、全身の筋肉が悲鳴を上げている。
「む、無理……! もう無理ィ! 俺の身体って肉を食べる専用で、走る構造をしていないんだって!」
「急に止まるな! 休むんなら、歩きながら落ち着かせろ!」
よく分からないが、クラスの三大美女と言われる伊江里クロワさん、藤浪桃世さん、西崎華さんが放課後俺の家に来た。
今まで男友達ですら呼んだことが無いのに、いきなりお美しい女性三人が家に来てくれて嬉しいは嬉しいが……走らされるとか聞いていない。
肉を食べて積んだ徳で奇跡が起きたのかと思ったが、どうやら違ったようだ。
俺が肉を食べて積んだのは、脂肪だけなのかよ……。
「はい美山君、水分。走っている状態から急に止まると、身体への負担が大きいから、クロワが言ったように歩いてから止まってね」
フルマラソンを完走した俺に、和風美人西崎さんがペットボトルの水をくれる。
おお……西崎さんは優しいなぁ。
ここに来る前に全員学校指定ジャージに着替えているのだが、女性三人とも、すっごい細身。
あれのどこにダイエットとやらが必要なんだ?
つか間近で初めて見たが、西崎さんの胸が相当でかい……。
「おい華、甘やかすな、まだ百メートルも走ってないっての。ったくよぉ、まず公園に来るのに息が上がるってどういうことだよ」
百メートル……? 嘘だろ、もう四十キロ以上走っただろ……俺のマシュマロセンサーが震えながらそう言っているぞ。
近所の大きな公園まで歩いてきたのだが、なんで高校より遠くにある場所に来なければならないのか。
高校まで歩いて五分、公園まで歩いて十分。
うん、俺の人生において、肉を削って公園に来る必要無し。
「頑張れー、ミャーマ! ちゃんとご褒美があるからさー」
ポニーテールを揺らしながら近寄ってきた藤浪さんが笑顔で言うが、ご、ご褒美だと?
そ、そうか……そういえば聞いたことがあるぞ。
確か古い書物に、走ったあとの肉は数十倍美味しい、と書いてあった!
なるほど!
全ては肉の為に……!
「も……むり……寿命、縮んだ……早く肉を……」
「あ、こら! 帰ってきていきなり冷蔵庫の肉をつかむな! まず風呂でシャワー浴びて来いっての!」
数百キロマラソンを乗り越えた俺は、動かなくなった足を引きずり、なんとかハウスに帰宅。
肉たちが笑顔で出迎えてくれたが、伊江里さんが彼等を蹴散らし、風呂場に叩き込まれる。
「ったくよぉ、たった一キロマラソンでヘバるとかどうなってんだ。初日のメニューの半分もこなせなかったぞ」
「まぁまぁクロワー、すっごい頑張ってたよ、ミャーマ。というかー、こんなに男子の心配してるクロワ初めて見たけどー、お二人はどういう関係ー? あははは!」
「……そういえばそうね。クロワって男子に興味無いんだと思ってた。今回のダイエットの件も、急に言い出して美山君誘ったり。クラスの男子には塩対応なのに、ずいぶん積極的」
「うっせぇな……あいつはただの実験体だっての。それ以上なにもねぇよ」
なんだ? 風呂場でよく聞こえないが、女性三人がなんか揉めてるぞ。
というか、なんでまた俺の家に来てるの、あの三人。
早く帰ってくれないと、肉たちの祝福を受けられないじゃないか。
「ふぅさっぱり。さて肉を……」
「おいてめぇ、ダイエットだって説明したの忘れたのかよ。肉ばっかり見てんじゃねぇよ! 監視だ、やっぱこいつ監視しねぇとダメだ。これから私たちもシャワー浴びるけど、一人ずつな。残った二人はコイツの監視だ」
シャワーで汗を流し、さっぱりしたので肉を焼こうとしたら、伊江里さんにがっつり右手をつかまれた。
え、ちょ、俺の肉タイムなんですが……ん? これから私たちもシャワー……?
えっと……?
ご帰宅は……されない系?
「…………」
その後、伊江里さんがシャワーを浴びに行くが、残った藤浪さんと西崎さんに挟まれてソファーに座るという、両手に花な状況に。
あの、美女二人に挟まれるとか状況としては嬉しいのですが、俺は肉を補給しないと生命ゲージが減少するので、その……。
「おぅ、次いいぞ。ああ、風呂場にあったお前の服、借りたからな。つかデカすぎ、ぶっかぶかじゃん」
金髪ヤンキー女子、伊江里さんがお風呂場から出てきたが、なんか短パンみたいなのに俺のTシャツを着ているという……え、何この状況。
すっごいエロいんですけど……?
伊江里さんが俺の横に座り、長く美しい金髪をタオルで拭き始める。
うっわ……甘くて良い香りがする……。
その後、藤浪さんと西崎さんもシャワーを浴び、俺の周りに女性三人が集まり、保湿だの化粧やらを始める。
身体のラインがバッチリ見えるハーフパンツだったりタンクトップだったり、え、あの、風呂上がりの同級生とか、すっごいエロいし肌色多すぎてどこ見ればいいのか分からないんですが!
そしてよく考えたら、さっき俺の家のお風呂で、クラスの三大美女が裸になったんだよね……。
「……男子の前でお風呂とか化粧とか抵抗あったんだけど、美山君ってなんか不思議と何ともない。お風呂場も清潔だし、タオルもすっごいふわっふわで良い香り。これ、うちより住みやすいかも」
「分かるー、ミャーマって他の男子と違ってガツガツしてないよね。なんか無害系男子って感じー、あははは」
和風美人、西崎さんが俺の家のタオルに顔を埋め、幸せそうな顔で香りを嗅いでいる。
あ、まぁ俺、甘い香りの柔軟剤が好きで、それを使っているからかな。
無害系? いや、俺十六歳の男子っすよ、普通に性欲とかあるし、今だってあなたたちの肌色多め空間をすっごい網膜に焼き付けていますからね。
「こいつにそんな度胸ねぇって。どうせ肉にしか興味ねぇんだよ」
金髪ヤンキー女子、伊江里さんがドライヤーで髪を乾かしつつ、冷蔵庫からミネラルウォーターを出してくる。
え、なんなのその実家感。
「ボッス!」
「うわ……ってまたお前かよ。餌なら美山進太から貰えって」
愛犬ボスが、また伊江里さんにアタックしていく。
ボスが抱きつき、伊江里さんの着ているシャツが伸びる。
おおおお! 俺のでかいTシャツを着ているせいで、隙間から伊江里さんの膨らみが見えそう……がんばれボス、その調子だぞ!
「というかー、男子の服着るとかクロワってばエロすぎー! ミャーマがガン見してるー!」
「はぁ? 着替え忘れたんだからしゃあねぇだろ。こいつの服、デケェけど良い香りするし、問題ねぇだろ……ってキモい目で見るな美山進太」
「タオル良い香り……美山君も良いボディソープ使ってるよね。甘い香りがする」
伊江里さんのエロい姿を脳内に記憶しようとしていたら、キモいって言われた……まぁごめんなさいだし、納得ですけど。
構ってもらえなかったボスが俺のところに来たので頭を撫でていたら、和風美人の西崎さんがタオルを抱きしめながら俺に近寄ってきた。
「え、あの……」
西崎さんがスンスン俺を嗅ぎ、顔を赤らめている。
「美山進太、てめぇ、誰でもいいのかよ」
え、いや、なんで伊江里クロワさんがすっごい睨んできたの……?
「じゃあ盛り上がってきたしー、そろそろ頑張ったミャーマにご褒美タイムと行こうかー!」
赤い顔の西崎さんと怒り顔の伊江里さんに挟まれて肉を震わせていたら、藤浪さんが雑誌を開き、叫び始めた。
ご褒美?
そういえばさっきも藤浪さんがそんなこと言っていたな。
それより、えっと、もう十八時過ぎですけど、みなさんはいつお帰りに……?
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影木とふ