DAY 11 休日も全員集合と高校でクラスの三大美女から普通に話しかけられた日
──日曜日、早朝五時。
「はぁ、はぁ、い、一キロはまだ走れないけど、せめて半分は走るぞ……」
「ボッス!」
先週までの俺なんて、日曜日は家で肉の仕込みをしながらゴロゴロ転がっているだけだったが、金曜日以降、俺は生まれ変わった。
早起きをし、能動的に身体を動かそうと近所の公園まで来た。
結局伊江里さんたちと一緒のとき、一キロほぼ全部歩いてしまったからな。
今日でダイエット計画も三日目。
少しずつでも成長しないとダメだろうし、目標を段々上げていくぞ。
今日は散歩も兼ね、愛犬のボスも連れてきた。
「ご、五百メートル……五百メートル走ったぞ……!」
「ボッス、ボッス!」
体感だが、一㎞コースの半分は走ったはず……多分。
ボスがリードを持つ俺を引っ張ってくれたのもあるが、昨日よりは走ったぞ。
「おおおおー! 偉ーい、ミャーマ! ってか全員いるしボスがいるー!」
「今日は約束はしていないんだけど……みんないて嬉しい、ふふ」
「……五百じゃねぇ。正確には三百ぐらいだ」
足がガックガクになったので、歩きながら落ち着かせ公園のベンチへ。
ぐったりうなだれていたら、聞き覚えのある女性三人の声が。
ジャージ姿の藤浪桃世さん、西崎華さん、伊江里クロワさんが勢ぞろい。
あれ? 今日は日曜日でお休みだったはず……全員集合してるじゃないか。
って伊江里さん、もしかして走り出しから俺を見ていたのか?
「ボスー! 抱かせろー!」
「ボ、ボッス!」
ポニーテールがとても似合うスポーツ女子、藤浪桃世さんが俺の愛犬に抱きつこうと構えるが、危機を感じたボスがダッシュで逃げる。
「っと、なんでこっちに来るんだボス。お前の飼い主はあっちの美山進太だろうが」
ボスが元気に飛び込んでいったのは、金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさん。
「ふふ、好かれているのねクロワ。いいなぁ、私もボス抱きたいなぁ」
和風美人の西崎華さんもジリジリと愛犬ににじり寄るが、ボスが伊江里さんの後ろに逃げる。
「今日はダイエット計画お休みの日曜日なのに、みんないてビックリしたよ」
「ふふ、私も。でも多分、みんないるんじゃないかなぁって思ってた」
和風美人、西崎さんが、わざわざスポーツドリンクを作って持ってきてくれたので、紙コップでありがたく頂く。
「私もー! なんていうかこのチーム、似たもの同志が集まった感じ。っていうかミャーマー、なんかボスが私を避けるんだけど、なんでー?」
藤浪さんがポニーテールを揺らし抗議をしてくるが、俺だって分かりませんよ。
多分藤浪さんの放つ、『圧』が強いんじゃないですかね。
「本来今日はお休みで、各自の判断でダイエット計画を進める日だ。無理はするなよ」
金髪ヤンキー女子、伊江里さんがボスの頭を撫でながら言う。
うーん、ボスが嬉しそう。
みんなで軽くストレッチをし、解散。
さぁて、明日からは高校もあるし、ダイエット計画を気にしつつ、ゆっくり休むか。
朝ごはんは、帰りにバナナにヨーグルトを買うか。
お昼は……肉無し野菜炒めに茶碗半分のご飯、夜は肉無しお蕎麦とかでどうですかね。
まだ制限甘い? まぁまだ三日目だし、身体を慣らす意味もあるから、こんなもので許して下さい。
次の日、月曜日早朝。
メッセージで全員集合の号令がかかる。
いつも通り公園を一キロ……五百メートルほど走って残りは歩き、朝のノルマ達成。
このあと高校に行くのだが、これを一か月は……結構大変だな。
だがこれを乗り切れば、和風美人西崎さんとデートが出来るし、金髪ヤンキー女子、伊江里さんが何でも一つ言うこと聞いてくれるみたいだし……がんばるぞ!
「おう、美山。あれ、なんかお前、顔色良くね?」
朝八時、高校の教室に入ると、親友の波多野悠一が声をかけてきた。
なんかこいつの顔を見るの、久しぶりな気がする……
「え、顔色? なんだろう」
「ほら、金曜まで青白い顔だったのに、今はなんというか……血色が良いというか」
血色? ダイエット計画で肉は足りていないはずだぞ。
「あ、俺、金曜日から肉を食べずにダイエットを始めて運動しているから、それのせいかも」
「ダ、ダイエット……! 肉魔人のお前が肉を食べていない……? う、うそだろ美山、お前から肉を取ったら、何が残るっていうんだよ! まさか痩せてモテようとかいう浅はかな計画なのか? やめとけ、あんなのイケメンだけに許されるやつだから」
俺のダイエット開始宣言に、親友が目を見開き驚愕の顔になる。
肉魔人って何だよ。
別に痩せてモテようなんて思ってないっての。
「おーーっすー、ミャーマ、さっきぶりー! お昼は私の席に集合だからなー」
友人と揉めていたら、背後から元気な声が聞こえ、肩をパシーンと叩かれた。
え、お昼は藤浪さんの席に集合? どういうことだ?
「……ちょ、あれ? 今のうちのクラスの一軍の中心メンバー、藤浪桃世さんだよな……? なんでお前に声をかけてきたんだ?」
波多野が不思議そうな顔で見てきたが、そういえば学校ではどういう関係性で行けばいいのだろうか。
あんまり親しくするのも向こうに迷惑だろうしな……誤魔化しておくか。
「さ、さぁ……誰かと勘違いしたんじゃ」
「あ、美山君、おはよう。眠くない? 体調に変化は無い? ああ、良かった、大丈夫そうだね。じゃあお昼にね、ふふ」
適当に誤魔化そうとしたら、また背後から女性に声をかけられた。
和風美人、西崎華さんが心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできて、俺の状態を確認してくる。
無事だと分かると笑顔になり、藤浪さんの元へ歩いて行った。
「……い、今の、全国に支店を持つ歴史ある高級料亭……西崎家のお嬢様、西崎華さんだよな? おい美山、お前何かしただろ。今まで話したことも無かったのに……もしや彼女たちの弱みでも握って脅したとか……」
二人目の女性が現れ、波多野が震えだすが……いや、むしろ最初脅されたのは俺かな。
強制的にダイエット計画に参加させられたし。
ああ、確かに西崎さんの家のお店は高級だった。五千円じゃあ無理だぞ、あれ。
「……ふぁ、ねむ。ったくなんでお前は逆に顔色良いんだよ。昼、桃世んとこ来いよ、お弁当チェックすっからな」
三人目は金髪ヤンキー女子、伊江里クロワさんが登場。
俺のほっぺをつまみながら睨んでくる。
え、お弁当チェック、だと……?
そ、そんなの聞いていないぞ!
「おい、あれ……」
「どういうことだよ、今の」
なんか教室がざわざわと騒がしい。
主にクラスの一軍であるイケメンさんたちが騒ぎ、俺を見てくる。
俺なんかが急に仲良さげに話すのも彼女たちに悪いし、いつも通りのモブ集団に徹しようとしたが、なんか彼女たちが普通に俺に声をかけてくる。
え、その、学校でもその感じでいくんですか……?
学校では、俺は今まで通りモブ集団でいたいんですが……
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影木とふ




