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無口な隣の席の人

高橋蓮は、いつも静寂を好んできた。

教室の後ろに座り、ノートにスケッチを描き、余計な会話を避ける——それが彼の生き方だった。


藤沢理香はその正反対。

人気者で、尊敬され、常に人に囲まれている彼女は、静かな無名の存在に時間を割くようなタイプではない。


席替えで二人が隣になるが、どちらも何も期待していなかった。

しかし、共有する静寂、ふとした視線、交わされない言葉の中で日々が過ぎるにつれ、二人は気づき始める——

もしかすると、すべてのつながりに言葉は必要ないのかもしれない。

第1章


席替えが行われた。まただ。


高橋蓮は肩にカバンを掛け、教室を見渡して新しい席を探した。

いつもの席——窓際で、余計な会話を避けられる場所——はなくなっていた。

代わりに、彼の名前は藤沢理香の隣に書かれていた。


蓮は静かに息を吐いた。最悪だ。


理香は誰もが知るような存在だった。頭が良く、自信に満ち、尊敬されている。

ただ人気があるだけではなく、教師から信頼され、クラスメイトに憧れられ、男子たちは必要以上に彼女を意識していた。


そして今、彼はそんな彼女の隣に座ることになった。


蓮は静かに席につき、ノートを机に置いた。

彼女が話しかけてくることはないだろうし、正直、その方が気楽だった。

余計な注目を浴びるのは、彼の望むところではなかった。



昼休み – 静かな観察


その日の昼、教室は活気に満ちていた。

生徒たちは弁当を取り出し、食堂へ向かう者もいれば、机を囲んでグループを作る者もいた。


蓮はいつものように席に座ったまま、食べ物の代わりにスケッチブックを取り出した。

手は滑らかに動き、絵の細部を描き込んでいく。

今回の題材はオオカミの頭。毛並みは正確な筆致で描かれていた。


向かい側では、理香が友人たちと会話をしていた。

だが、ふとした瞬間、彼女の視線が偶然彼のノートに向かった。


その瞬間、彼女の笑い声がわずかに小さくなった。


彼女は何も言わなかった。

だが、視線はほんの一瞬、長く留まっていた。


絵を描く人はこれまでも見たことがあった——

だが、こんな風に描く人は初めてだった。


彼の線は、整然としていて、意図的で、まるでプロのようだった。


隣の友人が軽く肘で突いた。

「どうしたの?急にボーッとして」


理香は瞬きをして、ハッとした。

「ううん、なんでもない」


そう言うと、彼女は視線を逸らし、何も見ていなかったかのように振る舞った。


蓮は気づいていなかった。

彼はスケッチに集中していた。



静かな合意


日が経っても、何も変わらなかった。

彼らは隣同士に座っていたが、一言も言葉を交わさなかった。


無理に話すこともなく。

ぎこちない自己紹介もなく。


ただ… 時折、視線が交差するだけ。


蓮は気づいていた。

理香が数学の授業中、五分ごとに時計を気にしていることを。


理香も気づいていた。

蓮が本をめくるとき、まるでそれを大切に扱っているかのように、慎重にめくることを。


蓮は気づいていた。

理香が先生の質問に答える前、必ずペンを机の上で三回叩くことを。


理香も気づいていた。

蓮は決して質問をしないことを——彼は、ただ理解していた。


だが、どちらも、そのことには触れなかった。


それが変わったのは、ある日、彼が彼女を見るのをやめたときだった。


最初は気にならなかった。

別に、彼に見つめられることを期待していたわけでもない。


だが、四日間もの間、完全に無視されると、彼女は… なぜか苛立ちを覚えた。


英語の授業中、彼女はこっそりと彼を見た。


——何もない。


一瞬たりとも、彼は反応しなかった。


彼女は眉をひそめた。

「…なんでこんなに気になるの?」


そしてついに、その沈黙が長く続きすぎたある午後、彼女は口を開いた。


「…あんた、私を無視してるでしょ」


蓮は顔を上げなかった。


「お前が余計な注目を浴びたくないと思ってるんだろ。お前の評判が一番大事なんじゃないのか?」


理香は瞬きをした。


——覚えていたのか?


なぜか、その答えが彼女の心をざわつかせた。


初めて、彼女はどう答えればいいのかわからなかった。

これはまだ蓮と理香の物語の始まりに過ぎません。

二人の関係は今のところどう感じましたか?

あなたの感想はとても大切なので、ぜひコメントで教えてください!

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