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魔と人の境界線2

ピー


フォルノスが指笛を吹くと空から漆黒の馬がかけてきた。

カラスの様な翼が生えている黒天馬ダークペガサスだ。



「な・・・」



フォルノスの近くに馬は降り立った。

筋肉質の体が黒光りしている。凛々しくも馬特融の優しい瞳がセンジュを見つめた。



「一体何を・・っ!?」



フォルノスはセンジュを片手で抱き上げると馬に乗った。

セヴィオは楽しそうに笑っている。



「責任は取るんだろうな?フォルノス」


「なんの責任だ?今からこの娘が空から万が一落ちてもそれはただの事故だ」


「はい!?」



センジュに抵抗など出来る訳もない。


フォルノスとセンジュを乗せた黒馬は空へと羽ばたいた。


黒天馬は空高く一気に駆けた。



_無理ぃぃぃぃぃっ!!!



センジュはフォルノスにしがみつく様にしっかりと腰に手をまわした。



「おい、いい加減にしろ。手を離せ」


「は、離せるわけない!!っていうかなんなの!?どうする気!?」



あっという間にセンジュは半泣きだ。


フォルノスはセンジュを一度も見ようともしない。



「お前をここから落とす。その恐怖の反動で力が発揮出来るか試す」



「出来ない!!」



センジュはすぐに否定した。



_この人私を本気で殺す気だ!さっき剣を抜いた時も本気だったし!絶対にそうだ!




「私がいきなり現れて、目障りで不快なんでしょ!?だからこんな事するんでしょ!?」


「・・よくわかっているじゃないか」



ぼそりとフォルノスはセンジュの耳元でそう言った。



「お前などいなくとも、魔界はあの方さえいれば良いのだ。我々は今までそれで上手くいっていた」



「!!」



_やっぱりこの人私が目障りなんだ!!




「だがどうだ?お前という存在が現れた。しかも4人中から相手を選ぶだと?今まで保たれていた均衡はどうなる?」


「だ、だから・・私は誰とも一緒になりたくない!そんな風に思っているなら私を人間界に戻してよ」


「出来るものか。あの方の決定だ」


「そんなにパパが怖いの?」


「恐怖ではない。あの方はこの世界では神にも等しい存在だ。だから誰もが従う。・・だがお前の為に魔界は・・崩れていくだろう・・それが一番恐ろしい」




_パパじゃなくて私の存在が怖いって事!?そんなの・・・やっぱりこの世界は私の居場所じゃない。居場所なんかない。そうだよね。そりゃ・・そうだ。私だって別に来たかったわけじゃないし。




センジュは自ら手を離した。

ふわりと体が風に乗った。




_力がなくたっていい。私は人間だもん。ママの子だし。普通でいいし。




「お前・・」



フォルノスの目の前でそのまま頭から地上へ落ちた。



「どこにも居場所がないなら、これでいいよ」



_ママの所に行きたい。生きていたって、自分の思い通りに生きられない人生なら意味ないよ。こんなところにだって居たくない。

ママに会えるのなら。

死んだっていい。



センジュは目を閉じた。



『センジュ』




ドキン




「ママ!?」




_ママの声が聞こえる!私を迎えに来てくれたのかもしれない!




「ママ・・逢いたい・・」



涙が空へと消えてゆく。



そのままセンジュは落下した。



バサッ


その直後、センジュの真下に黒天馬は下降した。

フォルノスはセンジュを地上寸前で抱きとめた。


「おい?」


「・・・」



センジュは気を失っていた。



「・・・厄介な女だ」



フォルノスはそのまま城のバルコニーへと向かった。


「へえ・・珍しいもん見た。あの冷酷なフォルノスが、ねえ・・」


その様子をセヴィオは八重歯を覗かせながら含み笑いを堪えている。


「面白くなってきたかも」


気を失ったセンジュをフォルノスはベッドへと寝かせた。



「おい。起きろ」



フォルノスはジッとセンジュを見つめる。

呼んでもセンジュから反応はない。



「・・仕方ない」



センジュの額に自分の指を当てた。


パチッ


と電撃がセンジュの体に走った。



「うっ・・」



「起きろ、寝ていいと言っていない」



センジュはフォルノスの冷徹な声に反応し、目を見開いた。



「あ・・え?私・・」



「落下した。なんの力も発揮せずにな」



「・・・」



_助けてくれた?この人が?



その行動に驚きを隠せなかった。

助けてくれるとは微塵も期待していなかった。

本人は死ぬ気つもりだったからだ。



「なんで・・助けたの?」



「咄嗟にな。次は放置する」



フォルノスはセンジュから目を背けた。


その態度にセンジュもうつ向いた。


互いを認める事が出来ないのだ。


「力は発動しなかった様だな。魔王の血を引く者の割に」



センジュは思わず顔を歪めた。



「どんな期待をしてたのか知らないけど!当然でしょ。私は人間として暮らしてたし今だって人間だと思ってるし!理想のお姫様を想像してたのなら悪いけど」



「ああ、俺のとんだ勘違いだった様だ」



フォルノスは荒く息を鼻で吐いた。ワザとがっがりとした表情を見せつけた。


そして蔑んだ様な冷たい目でセンジュに見下した。



「なら、ただの人間らしく我々魔族に従えばいい。相手を決め、一生慎ましやかにその後ろを歩け。この魔界で生きていたいのならな」



「な・・・」



_なんなのこの人!?本当に嫌だ!最低な人だ!この世界で生きたいわけじゃないのに!!




「絶対絶対絶対に!貴方だけはお断りだから!!」



センジュは吐き捨てる様に言い、顔を背けた。


しん・・。



と部屋の空気が一気に重くなった。


2人とも黙ったまま時間が流れていく。


その空気に耐えられなくなったのはセンジュだった。



_なんで部屋から出ていかないの!?この空気耐えられない!ああ逃げ出したい!そうだ!逃げよう!!




フォルノスの方を一切確認せずにセンジュはベッドの足の方から逃げ出そうと試みた。


右にはフォルノスがいる、左側は壁だったのだ。



「!?」



フォルノスに腕を掴まれた。


ドキッ



「な・・何?」



「・・・」



フォルノスは無言のまま腕を掴んだが、すぐにそれを解いた。


フォルノス自体も無意識に体が動いた様で自分でも驚いた顔をしていた。



「なんでもない。今日はもう終わりだ。好きに過ごすといい」




そう言ってフォルノスは部屋を出ていった。



「な、なんなの・・もう」

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