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風の子 ふうちゃん

掲載日:2024/05/16

「今日は、すごい風だね〜」

 おばあちゃんは、自転車をこぎながら、つぶやきました。

「ちっとも、進まないよ」

 おばあちゃんは、力いっぱいペダルを踏み込みました。

 おばあちゃんは、病院にいるおじいちゃんに会いに行っているのです。

 おじいちゃんは、ついこの間、家でごはんを食べているときに気を失って倒れてしまいました。

 すぐに病院に行ったので意識は取り戻したのですが、大事をとって、しばらく入院することになったのです。

 おばあちゃんは、毎日自転車で病院にお見舞いに行っていたのでした。

「ふぅ〜、いくらこいでもちっとも進まないわ」   おばあちゃんは、木陰をみつけて自転車をとめると、すわりこみました。

「おじいちゃんに会いに行きたいよ〜」

 つい、おばあちゃんは大きな声で言ってしまいました。

 その瞬間、ぶわ〜っと大きな音とともに、目の前にもくもくと雲のような白いものが立ちはだかりました。

「おやおや、なんだい」

 おばあちゃんがびっくりしていると、雲のような白いものが話し始めました。

 よく見ると、顔があって、かわいい目をしています。

「ぼくは、風の子 ふうちゃん」

「ふうちゃん? かわいい名前だね」

 思わずおばあちゃんも声をかけました。

「今日は風の国の運動会で、風が吹き荒れているんです。おばあちゃんにはご迷惑をおかけしました。ぼくの背中に乗ってください! おじいちゃんの病院まで連れて行ってあげます」

「風の国の運動会だったのね。お楽しみのところ悪いわね。でも、お言葉に甘えて連れて行ってもらえる?」

 おばあちゃんは、ふうちゃんにそう言うと、ふうちゃんの背中におんぶしてもらいました。

「まかせてください! 行きますよ〜」

 ふうちゃんが大きく息を吐くと、ぶわ〜っと風が吹いて、あっという間に、おばあちゃんはおじいちゃんの病院に来ていました。

「ふうちゃん ありがとう」

 おばあちゃんが、そう言ったときにはもう、ふうちゃんの姿は消えていました。

「ふうちゃんのこと、おじいちゃんにも教えてあげなくちゃ」

 おばあちゃんは、うきうきしながら、おじいちゃんの病室にむかっています。

 風は、少しやさしくなってきています。

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