風の子 ふうちゃん
「今日は、すごい風だね〜」
おばあちゃんは、自転車をこぎながら、つぶやきました。
「ちっとも、進まないよ」
おばあちゃんは、力いっぱいペダルを踏み込みました。
おばあちゃんは、病院にいるおじいちゃんに会いに行っているのです。
おじいちゃんは、ついこの間、家でごはんを食べているときに気を失って倒れてしまいました。
すぐに病院に行ったので意識は取り戻したのですが、大事をとって、しばらく入院することになったのです。
おばあちゃんは、毎日自転車で病院にお見舞いに行っていたのでした。
「ふぅ〜、いくらこいでもちっとも進まないわ」 おばあちゃんは、木陰をみつけて自転車をとめると、すわりこみました。
「おじいちゃんに会いに行きたいよ〜」
つい、おばあちゃんは大きな声で言ってしまいました。
その瞬間、ぶわ〜っと大きな音とともに、目の前にもくもくと雲のような白いものが立ちはだかりました。
「おやおや、なんだい」
おばあちゃんがびっくりしていると、雲のような白いものが話し始めました。
よく見ると、顔があって、かわいい目をしています。
「ぼくは、風の子 ふうちゃん」
「ふうちゃん? かわいい名前だね」
思わずおばあちゃんも声をかけました。
「今日は風の国の運動会で、風が吹き荒れているんです。おばあちゃんにはご迷惑をおかけしました。ぼくの背中に乗ってください! おじいちゃんの病院まで連れて行ってあげます」
「風の国の運動会だったのね。お楽しみのところ悪いわね。でも、お言葉に甘えて連れて行ってもらえる?」
おばあちゃんは、ふうちゃんにそう言うと、ふうちゃんの背中におんぶしてもらいました。
「まかせてください! 行きますよ〜」
ふうちゃんが大きく息を吐くと、ぶわ〜っと風が吹いて、あっという間に、おばあちゃんはおじいちゃんの病院に来ていました。
「ふうちゃん ありがとう」
おばあちゃんが、そう言ったときにはもう、ふうちゃんの姿は消えていました。
「ふうちゃんのこと、おじいちゃんにも教えてあげなくちゃ」
おばあちゃんは、うきうきしながら、おじいちゃんの病室にむかっています。
風は、少しやさしくなってきています。




