チャイムだけを俺は待っている。
それからも、芹沢茉莉奈さんの細かい質問は多岐に渡り、俺は返事を出来る限り誠実に答えようと苦心したが、兎に角慣れない人間@しかも女子に、心は少しずつ荒んで行く。
日直の責任が重た過ぎないか?
何で芹沢さんを心配して委員長にも口利きした筈の担任は、ただ黙って飯を食べているんだ。
「誠!!日本の学校って本当に給食が出るのね!」
芹沢さんの瞳はやはりキラキラ、いや、キラキラを超えて、今度はギラギラして来た。
「何で⁇親が給食費を払ってるんだから、給食は出るだろう。」
「だって、私はアニメでしか給食を見た事がなかったの。母は日本人だから、何でも作ってくれるけど、何となく子どもっぽくて、アニメみたいな給食が食べたいなんて言いたくないの。」
‥それは俺も絶対に言えない。でも、あんまり同意し過ぎても、自分が無い奴とかアメリカ人のお姫様には思われたんだろうか?
「芹沢さんが何でも作ってくれると思う人なら、リクエストしたら良いじゃ無いか。まぁ、もう日本に居るんだから、どの道毎日食べるけど。」
「!美味しい!!誠、給食美味しいわよ!!後、何だか白い服を着て配ってくれる人達は、どうやって決まるの?」
「日直みたいに、名簿順に全員やるんだよ。」
「え⁈全員⁈私に出来る様になるかしら‥。」
芹沢さんのギラギラしていた瞳は、物凄く分かりやすく曇った。
「誰でも出来るんじゃ無いか?調理は調理室で終わってるんだから、清潔にして配るだけだろう?」
俺にとっては、給食当番より、今日の日直こそが重荷だ。
「そう‥⁇日本人て全員が器用なの⁇」
「芹沢さんは不安なの⁇別に日本人が皆んな器用な訳じゃ無いよ。ただそうゆールールなだけ。」
「‥そのルールは誰が決めるの?」
「‥そこまで考えたことがないな。変える必要性を特に感じた事が無いからね。」
芹沢さんの瞳は、溢れそうに丸くなった。
「え!?誰が決めたか分からないルールに皆んなが従って居るの!?」
「‥そんなに驚く様な事かな。皆んなの事なんか俺は知らないよ。俺が言えるのは俺の事だけだ。皆んなに聞けば良いじゃ無いか。」
頭痛は悪化した。折角の給食タイムに、食欲が失せるのは初めての事だ。俺の取り柄は唯一身長がそこそこある事なのに。
俺はそのまま4分の3迄は飲み込んでいた給食を片付けに行った。
頭痛の悪化を防ぎ、芹沢さんの質問に答えなくて済む様にトイレに行くのだ。