クラス委員長は天使か悪魔か
俺は授業の間、ひたすら耐える時間を過ごした。芹沢茉莉奈さんが気になる気持ちを押し退けて、ノートを取りながら、暗記する項目を自分もメモる。
芹沢茉莉奈さんは、俺に時々、「誠、この式はどうやって解くの?」
など必要と思われる事を聞いて来たので、俺はその度に、使う公式の式に軽く指を刺した。
触らない様にする事だけ気をつけていた。
チャイムが鳴る。休み時間だ。
俺は少しだけホッとして、次の教科書やノートを出す。
「誠。国語も教えて。」
芹沢茉莉奈さんの好奇心に満ちた瞳が、グレイ色で輝いていた。
国籍がアメリカでも、ほぼ日本人に見える。
日本人に見えないのは、人を真っ直ぐに射抜く様に見るその瞳だけだ。
「国語を?でも、国語なら俺じゃ無くても教えられる奴は山ほど居るよ?ホラ、皆んなが芹沢さんに興味があるんだし、芹沢さんだって女の子の友達が良いんじゃ無いかな。水口委員長、芹沢さんに国語を教えて貰えないかな?」
唐突に俺から名指しを受けた水口委員長は、嬉しそうに立ち上がって近くに堂々と来た。
水口委員長は、芹沢さん程飛び抜けた美人では無くても、知的な雰囲気があり、可愛くて色気が有ると、男子からも女子からも絶大な支持のあるクラス委員長だ。勿論俺としても、信頼できると思ったから頼んだとゆうか、話を振ったのだ。
「勿論、私も先生からは頼まれて居るわ。文化が分からない上に突然の編入だもの。先生方は、とても心配して居るわよ。」
「‥誠は私に教えるのが嫌なの⁇」
嫌なのは勉強を教える事じゃ無い。
注目された転校生を独り占めの様に面倒を見なきゃならない今の教室の空気なのだ。
「嫌なんじゃ無いよ。異性の俺よりも、同性の信頼できる人が必要だと思ったから。」
本当は嫌だし今の俺の頭痛を救えるのは水口委員長だけなのだ。
だが、そんな心の叫びは、2人共に伝わらなかった。
「誠が嫌じゃ無いなら、今日は先生に言われた通りに誠に聞くわ。」
と芹沢さんが堂々と言ったのだ。
何だそれ。皆様宜しくって言っただろう。
女子の言葉のペラペラさが、今の俺には何よりも重い。
「勿論、誠で良かったら存分に頼ると良いわよ。彼、きっと私よりも点数が良いわ。」
何その情報網。俺は委員長の成績や点数何か知らね〜ぞ。
とゆうか、俺が頼りにした水口さんは、単純に何でも出来るから天使だと信じていたけど、目の前の俺のSOSを無視って事は、悪魔だったのだろうか。
女子でクラスの中心人物なら、自然と情報は周りそうですよね。誠は未だ女性の怖さなど知らないある意味で幸せな人生でした。