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怪物先生と最強人間  作者: 磯野洸輝
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第二話「怪物先生」

 第二話「怪物先生」

  案内掲示板によると一年生の教室は二階にあるみたいだ。下駄箱に靴を入れ、三人は階段を上って行く。

 《これが新設校か。杉の木のいい香りが漂ってくる。姉さんたち羨ましがるかな?》

 蒼龍はふとそんな事を思いながら角を曲がった。教室に着き扉を開ける。開けるとそこにはまるで時間が止まったかの様な静けさがあった。蒼龍は指定された席に着いた。蒼龍の席は二列目の十一番目にあった。蒼龍の横の五番の席に奥沢が座り、劉淵は二十七番の席に座った。

「言い忘れていたわ。もう彼氏のフリをしなくても大丈夫よ。」

「そうか。」

 蒼龍は鞄から本を取り出し読み始めた。奥沢も本を取りだし読み始めた。時計の針が奏でる秒針のリズムが教室に響く。それに合わせているかの様な小鳥のさえずり。それと同時に吹いてくる爽やかな春の風の音と共に漂う桜と校舎の香り。隣から一枚、二枚とページをめくる音が聞こえてくる。時計の針が八時半を指した。すると、廊下から男性と思われる足音と、本来聞こえるはずのない異様な音が響いてきた。そして扉が開いた。異様な音は教壇の所で止まった。奥沢は蒼龍に声をかけた。

「蒼龍君あれを見て・・・・・。」

 奥沢に言われて俺はあれを見た。

「・・・・・。」

 言葉は出なかった。いや、言葉にできないほどの衝撃だった。静かな空気は一変、奇妙な空気へと変わっていった。

「蛸よね?」

「烏賊だろ。」

 その怪物は蛸みたいな無数の足と吸盤を付けて頭に烏賊のエンペラが付いている。

 《そうだ、足を数えよう。・・・・・え?嘘だろ、もう一回・・・・・え?》

「どうしたの?」

「ああ足が、足が九本ある。」

「八本でもなく十本でもなく九本。なんか中途半端ね。」

 蛸烏賊生物の隣にいた男性が、

「皆すまない。訳あってこの怪物が君達の担任をすることになった。こうなった経緯や事情は話せない。これは国家からの命令だ。だから君たちは聞きたいことがあるだろうが、そこは飲み込んでくれ。」

 と言う。

 《飲み込めねーよ。》

「じゃぁその足が九本の理由は聞いても大丈夫ですか?」

 金髪のイケメン男性が言った。怪物は顔を赤らめ、

「実は私はこの日本という国の漫画が好きでしてね、それで真似て体を改造したんです。そしたら恥ずかしいことに間違えて一本多く付けてしまったのです。」

 《あの漫画を真似たんだな。てか、茹でダコみたい。》

「というのは嘘です。」

 《嘘かよ。》

 そう言うとエンペラが裂けていき、変な音を出しながら地面に落ちた。

 《着ぐるみかよ。》

 心の中でツッコんだ。

「これが俺の本当の正体だ。」

 着ぐるみの中から屈強な男が現れた。身長は約百九十センチメートルぐらいで、魏の英雄曹孟徳を思わせるほどの威厳のある顔立ちだった。

「これから私が君たちの担任をする。よろしく。うっ、恥ずかしい。」

 そう言うと屈強な男は教室を出た。怪物がいなくなるとイケメンで屈強な若い男性が教壇に立った。

「私は国の防衛省から配属された元自衛官幹部、鷲塚正義だ。君たちの副担兼をすることになった。よろしく。」

 《元なのに兼?》

 俺は兼という言葉に引っかったが何も言わなかった。鷲塚は付き添いの人に何か指示をした。

「これより君たちにはこちらの制服を着てもらう。それと、君たちには最低限度の学生生活を保証する。」

「最低限度?」

 金髪の男性は問うた。鷲塚はプリントを配った。プリントには、「最低限度の学生生活の保証一覧表」と書いてあった。内容はこうだ。

 一、勉学・遠足・学園祭・修学旅行・卒業式・春休み・夏休み・冬休みは必ず行う。ただし、来年の入学式は行わないものとする。

 二、生徒内の人間関係は自由とする。

 三、休日は土日祝とする。

「ねぇ、この入学式は行わない。ってどういうことかしら?」

 神崎が問うた。

「それについては国から止められていてな。理由は言えない。だが、ここに書いてある内容は必ず行う。」

 鷲塚は顔をこわばらせて、

「次に配るプリントには君たちが必ず果たすべきことが書いてある。」

 内容はこうだ。

 一、通常授業とは別に訓練という特殊科目を実施する。これに拒否権は無いものとする。

 二、ある目的の事を他人に話した場合、社会的制裁を受けてもらう。ある目的以外の事を話すのは個人の自由とする。

 三、特別な部活に入らされた者はこの学校の生徒会となる。これに拒否権は無い。なお、他の生徒は帰宅部とする。

 四、校内や校外において事件や殺人に巻き込まれた場合、警察や法律は関与しないものとする。事件や事故で相手を傷つけても警察は関与しないものとする。万が一殺人を起こした場合は、法で裁かれるものとする。それ以外は法律外とみなし、全て特別な部活の者が解決する。

 五、ある目的を、怪物と共に必ず果たす。これに拒否権は無い。

 六、校内での不登校や虐めといった人間関係の解決は特別な部活の職務とする。これに拒否権は無い。

 七、生徒会の者は、学校の経理・食堂での生徒たちへの料理の提供・表向きの活動を担う。

 と書かれていた。

 《何この人権無視の奴隷みたいな契約書。》

「ところで、担任はどこへ?」

 金髪の男性が問うた。

 怪物先生はしばらく経つと戻ってきた。

「すみません、トイレに行っていました。では気を取り直して、これから出席を取ります。一番赤井長政君。」

「はい。」

「二番井伊雅紀君。」

「はい。」

「三番石田光さん。」

「はい。」

「四番宇喜多透君。」

「はい。」

「五番奥沢雪乃さん。」

「はい。」

「六番奥田川姫菜さん。」

「はい。」

「七番河口実さん。」

「はい。」

「八番河田賢治君。」

「はい。」

「九番川谷友樹君。」

「はい。」

「十番神崎彩さん。」

「はい。」

「十一番蒼龍政則君。」

「はい。」

「十二番田白鷺美咲さん。」

「はい。」

「十三番中塚健太君君。」

「はい。」

「十四番仲手川唯さん。」

「はい。」

「十五番西田鉄也君。」

「はい。」

「十六番野中五郎君。」

「はい。」

「十七番羽沢有希子さん。」

「はい。」

「十八番藤田心君。」

「はい。」

「十九番牧田将太君。」

「はい。」

「二十番増田敬君。」

「はい。」

「二十一番美竹花音さん。」

「はい。」

「二十二番毛利剛君。」

「はい。」

「二十三番矢田太郎君。」

「はい。」

「二十四番矢谷五十六君。」

「はい。」

「二十五番湯川元気君。」

「はい。」

「二十六番与田是清君。」

「はい。」

「二十七番劉淵颯太君。」

「はい。」

「二十八番若井忠次君。」

「はい。」

「二十九番若草日陽向さん。」

「はい。」

「三十番若林紗夜さん。」

「はい。」

「以上で出席を終わります。次は入学式ですので体育館へ行きましょう。」

 彼らは一列に並び教室を後にし、体育館へ移動した。

 保護者の盛大な拍手と共に入場した。席につき、校長の話が始まった。

「この新設校は、マダール高校と言います。この学校は全て税金で賄われています。皆さんはこの学校に入れた名誉ある生徒です。胸を張って本校の生徒と言えるよう、明るく楽しい学園生活を送るように。最後に私の好きな言葉で終わらせたいと思います。」

 校長は大きく深呼吸をした。

「私は何のために生まれ、そして死ぬのだろう。今はその答えを求め生きている。人生にもしもは無い。一日一日を大切に生きていく。」

 会場は大きな拍手で包まれた。入学式が終わり教室へと戻った。皆席に着くと怪物が入ってきた。

「皆さん改めまして、私が君たちの担任をすることになった怪物です。よろしくお願いします。」

 第二話「怪物先生」~完~

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