木の天井
処女作、微ホラーです。
軽く書いていますが割とグロテスクな話。
気軽に(?)読める短さです。
ベットに転がって見上げる自慢の木の天井。幼い頃は、この模様が怖くてろくに近付かなかった。
くねくねと文様を描くこの天井がまるでなにかを描いたようにくっきりとしていて気持ち悪くて。
当時の持ち主だった祖母は聡い子だねと軽く笑った。
「今は全然平気だけどね」
「意外と怖がりだったんだ、四季って」
「どうかな?」
あれから数年経ち現在、その祖母の部屋であったそれは死去と同時に私の部屋になった。
「でも、すっげぇ綺麗な模様。こんなにはっきりと浮き出るもんなのな」
「うん、綺麗なんだよ」
にこにこと笑う私の様子に裕樹は肩を竦めた。
どうやら、また私の弱点を掴みあぐねたらしい。
「あー、いいなぁ木の天井。何の木?」
「桂だったかなぁ、高いんだよ。この家になる前は首吊りの木と呼ばれてた魔力のある伝統の」
「嫌な木だな、おい」
「もちろん半分嘘?」
ほっと安堵の息を吐いた彼は怖い話が大嫌い。クールだと思われがちだが、ただの突っ込み。かっこいいとは無縁。むしろダサイ男。
「でも、見てるとほんと心がぱあってしてくる。いいな、木。」
呟く裕樹の背を押しながら私は外へ出る。
ぱあっと心が浮くような気がしてくるのは、きっとこの天井の魔力。
うーん、かなりの人が首を吊った力は衰えてなかったか。
祖母が一度夜に此所に私を招いてくれた事がある。母でさえ入った事のなかった此所は夜はまるで異空間だった。
天井の模様がぼたぼたと落ちて来て、自らの首を締めながら部屋の中でのたうち回るのだ。
―――― ぞくぞくとした。
ふらふらとその辺からやって来たらしき女性をぼたぼたと落ちて来たそいつらがつかみ掛かって行く。
祖母はニタリと笑いその様子を楽しそうに見ながら、一人から縄を受け取り女性の首に巻き付けて天井へ向けて投げ付けた。
キィキィと不気味な音が部屋に響く。
「どうだい?綺麗だろう?」
天井には首吊をつった女性。苦しそうにあがいている。落ちて来たそいつらも隣りで同じように首を吊り楽しそうにニタリと笑った。
「綺麗だわ、お婆ちゃん」
後から知ったのだけど、その日隣りに住んでいた女性が一人自宅で首を吊って死んだらしい。
此所で首を吊ったから死んだのか、死んだから此所に来たかは実際知らない。
「あれ?この前来た時より模様増えてない?」
「気のせいじゃないかな」
夜明け前にそいつらは模様の中に消えて行く。首を吊った数だけ顔が増えてく。飽きる事のない天井。
ただ、それだけの話。