懐かしの故郷へ
今回は、いつもと違い…1年ぐらい前から温めていた内容で書いてみました!!
もし、この辺読みにくいよってところありましたら指摘していただけると助かります!!
駄文ですが、よろしくお願いします(*ノωノ)
「なぁ、くーは将来何になるんだ?」
幼馴染の蒼斗が急に言ってきた。近所の川へ遊びに行った帰りの事だった。
「急にそんな事言われてもさー…。」
将来の事なんて全く考えていなかった僕…紅斗は一生懸命考えてみる。
そんな僕の様子を見た蒼斗は、
「えー…もしかして何も考えてなかったのか?」
僕の瞳を覗き込みながら更に聞いてきた。まるで晴れた日の海のような綺麗な蒼色の瞳だった…。
そんな瞳を見ながらふと、勇者になりたい!そう思った僕が口を開く前に、
「俺はな、世界を救う勇者になりたい!!」
蒼斗に先を越されてしまった。
「あお君さ?僕に聞いてきたのに先に言うなんてずるいよ…なら僕は、世界を救う勇者を助ける勇者になる!!」
「ははっ、勇者を助ける勇者になるってなんだよそれ。くーのくせに生意気だな。」
蒼斗は涙が出るほど大笑いしていた。
「なっ?!別にそんなに笑わなくてもいいじゃんか!!勇者だって助けてくれる人が必要だもん!!」
僕の真剣な表情でようやく悟ってくれたのだろう。どうにか笑いを抑え、涙をぬぐいつつ
「あー、はいはい。じゃあ俺に何かあったら助けに来いよ?約束だからな??」
そう言ってくれた。僕は嬉しくて、
「もちろんだよ!!約束な!!」
そう誓った時の空は、どこまでも紅く蒼い夕暮れだった。
ーーーーーーーーーー
あの約束から…何年経っただろう…?
僕らは今…長い旅を終え生まれ育った懐かしい城下町、『カンロ』へ3年ぶりに帰ってきたところだ。
「わぁ!どこもかしこもあの日から変わっていなくて、懐かしいよ!!ねぇ、蒼斗もそう思わない??」
僕は後ろにいる二人…勇者(自称)の蒼斗と魔法使いの茜の方を振り返りながら言った…が、
「えー、私もう歩き疲れたー!!そんなことどうでもいいから早く宿屋行こ~よ。」
「はぁ?何言ってんだよ飯が先だろうが?そんな事もわかんねぇのかよ、茜。」
僕と違って感性が乏s…過去に縛られない、今を生きる系だったようで…あんまり関心無いようだった。それよりも食事や休息の方が大事らしい…。二人はどっちを先に行くかで言い合いをしていたが、このまま言い合っていたら、今いる中央広場の公衆の面前でそのまま乱闘になり出禁にされそうだなと思った僕は、
「ごめんって、僕が聞いたのが悪かったよ…。先に王様に謁見しに行こ?」
と、言ったがその一言を聞いた騎士が、
「あー、ちょっと待てお前ら。王に謁見するならその恰好は止めろよ?」
「え?何でですか?」
僕と蒼斗は村人の普段着にちょっとした革製の防具で、茜は魔法使いらしい魔女の帽子とローブ(常盤色)を身にまとっている。…まぁ、魔物達と戦いながら砂漠越えしてきたから、服はボロボロなんだけどね。
なんてことを思っていると、騎士はジロジロとこちらを品定めでもしているのだろう…不躾な視線を向けていた…が、
「いやさ?困るんだよね。この国の王様は、どんな旅人であろうと歓迎してくれる…が、だからといって一国の王に会う時の服装がボロボロだとこちらとしては、下に見られているようでな…。実際、そのような格好の冒険者が来た時に、王に向かって『今すぐ大魔王倒してやっから早く金寄越せ!』だとか『この国の人たちは弱すぎてすぐに死んじゃいそうだから守ってやるよ。金さえ大量にくれればな』とかっていう暴言を吐いたやつらや、そのまま王に武器を向けた不届き者もいたからな…。今では自衛として、そのような格好をしている者達は謁見出来ない事になっているんだ。」
「何それ…ありえないんですけど!!そんなやつらと私らを同系列だとでも言いたいの!?」
「つーか、そもそも…そいつらと違って俺らはギルドに所属しているぞ!!証拠だってほら!!」
蒼斗が手の甲に呪文で刻まれた狼…僕らの所属する『シャドウフェンリル』ギルドの紋章をかざしたが、
「そう言われてもな…。私はその時まだ騎士見習いだったから詳しくは知らないんだよ。とにかく、注意はしたからな?それで面倒な事になっても知らないぞ。」
「言われなくてもそんな事するもんか!!」
騎士に対して茜が幼子のようにアッカンベーと舌を出した。
「こら茜!!この騎士さんは僕らの事を心配して言ってくれたんだぞ!!そんな言い方したらダメだろ?ほら、今すぐ謝って!!」
「くーは茜のお母さんかよ…。」
「あおは黙ってて!!」
この後、僕と茜は少し取っ組み合いになり色々あったが、三人揃って騎士に謝ることで解決した…。
…蒼斗は「なんで俺まで…。」と不服そうだったが。
ーーーー30分後ーーーー
僕らはあれから服装を整えるため、ギルド『シャドウフェンリル』の本拠地へと向かっていた。
現在、中央広場から東に進み、貧民街へ向かう途中にある少し奥まったとこにいた…が、目の前はアニメとかでよくある石造り壁があるだけで行き止まりだった。
「ねぇ?ここ何にもないよ??本当にここであってるの??」
という茜の抗議を無視し、周りに人が居ないのを確認した。どうやら誰もいないようだ。
僕と蒼斗が壁に向かって手をかざす。すると、どこからともなく声が聞こえた。
「影に潜み世を救わんとする獣よ。汝の名を示せ!」
本来ならここで二つ名と名前を名乗る事で開けてもらえるのだが、僕らにはそんな余裕はない。
「私歩き疲れて立ってるのもしんどいのに~。」
「お腹空いて一歩も動けなくなる前に開けてくれよ。」
「連れ二人が動かなくなる前に早く開けてくれませんか?…銀鼠さん。」
僕らの疲弊した声を聞き、声の主は
「むっ…なんだ、紅斗達か…君らの噂は聞いてるよ。派手に…ではないようだけどね。まぁ、砂漠を超えてきたんだろうし、今回だけ特別だよ。」
諦めたような声でそういうと、目の前の壁が木製の扉に変わり僕らを内側へと招き入れるように開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
中に入るとそこは、地下に出来た酒場のような場所で、ギルドメンバーの憩いの場だった。残念ながら今の時刻は昼で、メンバー達は魔物の討伐や護衛でほとんど居なかった。
唯一居たのは、カウンター席でグラスに並々と注がれた黄緑色の謎の液体を飲んでいる銀色の光沢のあるシルク布のような髪をした女性だけだった。
僕らが入ってきた気配に気付いたのか、ゆっくりとこちらを振り返る。ピョコンと狐の耳のようなケモ耳が動く…。ギルド『シャドウフェンリル』のギルド長、銀鼠さんだ。
「ただいま戻りました。銀鼠さん。」
「ほらこれ、お土産。」
蒼斗が背負っていたリュックの中から、布に包まれたものを取り出して手渡した。
女性…銀鼠さんは、その包まれたものを愛おしそうに撫でながら、
「ふふ、おかえり。今回の任務大変だったんじゃないの?わざわざ海を渡って孤島に逃げ込んだ魔王と思しき魔物を二人で退治してきたんでしょ?」
「何言ってんだよ銀鼠さん、これぐらい楽勝だわ!しかも、そいつとの戦闘は道中仲間になった茜も一緒だぞ?」
目をキラキラさせ、嬉しそうに話す蒼斗の言葉に…銀鼠さんは首を傾げながら答える。
「ふーん、そうだったんだ。で、その茜って子はどこにいるんだい?」
「え?何言ってるんですか?茜は隣に…。」
僕らが振り向いてみると、銀鼠さんの言う通り茜は居なかった。
「まさかあいつ…。」
そう呟いたかと思ったら、既に蒼斗は走り出していた。
ーーーー数分後ーーーー
少し半ベソになっている茜を連れて、蒼斗が戻ってきた。どうやら茜は地下のような場所が苦手らしく…。扉の前でうずくまっていたらしい。
「銀鼠さん、すみません…。こいつ、歩き疲れたから絶対入らない~!!とか言って連れてくるの遅くなりました。」
「いいんだよ、蒼斗。…その子、魔法使いだね?」
「うぇ!?見ただけでそんな事わかるんですか?!」
格好でわかるよと僕は思ったが、あえて何も言わないことにする。
「童は、見ただけでその人の役職も覚えている技もある程度は見抜けるからね。例えば…君は炎の攻撃魔法が得意で逆に光魔法が苦手よね?」
「そ、そうです。」
「最近は苦手を無くすため夜な夜な練習しようか考えているんじゃないの?」
「どうしてそれを…?」
どうやら図星だったらしい…。茜の目が見開いたまま銀鼠さんを見つめている。
「さぁ?それを知りたいのなら…童の言いたい事はわかるよね?」
「ちょ、ちょっと待てよ。」
さっきまでめんどくさそうな顔していたはずの蒼斗が、二人の間に入り銀鼠さんに問いかける。
「いくら人手不足だからってこいつ入れるなんて…。」
「どうして?君ら二人とこれを倒してきたんでしょ?なら、資格は十分にあるはずよ。」
いや…でも…と言葉を続けようとして言葉にならないのか、蒼斗にしては珍しく声にならない言葉を発していた。それよりも…だ。
「すみません。銀鼠さん…茜をギルドに入れるかどうかは後ででもいいですか?」
「うん?あぁ、君たちは王様にまだ謁見してなかった感じかな?」
「はい…。服装を整えてから行こうかなと。」
「それならちょっと待っててね。」
そういうと、2階の方へ行ってしまった。階段を上がっていく銀鼠さんの羽織っているローブからは、嬉しそうに左右に揺れている尻尾が見え隠れしていた。
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次回は1週間以内に投稿出来たらいいな…。