ケルト神話より「クーフリン」その2
ローズマリー・サトクリフ版のクーフーリンについて語っております。第二弾です。
この作品には、萌えが詰まりまくっておりましたので、一回では到底語り尽くせませんでした。
今日はこの作品に出てくる、女性たちにスポットを当ててみたいと思います。
まず、女性がかっこいいです。単なる脇役、引き立て役にとどまりません。
クーフリンに武術を教えるのは、女戦士スカハサです。クーフリンは彼女から『英雄の鮭飛び』という技と魔の槍『ゲイ・ボルグ』を与えられます。
(ちょっとわき道にそれますが、このゲイ・ボルグをクーフリンが実際に使用したのはたった二回だけです。しかもその槍で戦った相手は、スカハサの砦でともに修業した親友フェルディアと、自分のたった一人の実の息子でした。)
クーフリンの一人息子の母親は、スカハサの隣国の領主アイフェです。そうそう、スカハサの国は『影の国』と呼ばれていました。そのネーミングも、なんかかっこいいです(笑)
アイフェは隣国であるスカハサの領土から幾度となく略奪を繰り返しており、二つの国の間に戦が起こります。クーフリンはスカハサの弟子としてこの戦いに参加するのです。
なかなか決着はつかず、スカハサも深手を負います。
最終決着をつけるために一騎打ちをするアイフェとクーフリン。
で、クーフリンが勝ち、捕虜となったアイフェとの間に、何故か愛が芽生えちゃうという!?
クーフリン、思い人であるエウェルの心を手に入れるために、武勲を立てようとスカハサに弟子入りしたはずなんですけどね(笑)
いえ、この時代この世界では咎められることではなかったのでしょう。
それに、スイッチが入ったときはえらい形相になりますが、普段は美少年であるクーフリンは、とってもモテたらしいです。
そして忘れてはいけない存在。永遠の敵である、ラスボス的立ち位置のメーブも、男性ではなく女性です。コナハトのメーブ女王。旦那さんなんか「フン!」とつまんで捨ててしまいそうな女傑です。
血なまぐさいことなんてへっちゃらー。いや、むしろ好き。誰かに負けるなんて許せない―! 私を侮辱したやつのことは、決して忘れないー! 復讐してやる!……という感じの女性です。
クーフリンが親友であるフェルディアと決闘をしなければならなくなったのも、フェルディアがコナハトの戦士だったためです。
強い女性がぞろぞろ出てきて、彼女たちがクーフリンの生きざまに深く影響を与えていきます。
もちろん、戦には出ずに家を守る女性もいますよ。多分、そういう女性の方が多いと思います。クーフリンの妻となるエウェルやクーフリンの乳兄弟である勝利のコナルの妻レンダウィルがそういった女性の代表格です。しかし、戦に出ないからといって彼女たちから弱々しいという印象は受けません。
男の言いなりになり、言いたいことを言えずに涙するような女性はいません。武器を取らずとも、皆戦士であり、名誉というものが命よりも大切だった時代だったのでしょう。
現代日本ではありえない考え方ですけれども、そんな時代があったのだなと、そして人々はきっとその中で精いっぱい生きていたのだなと、この物語を読んでいると、そんな風に感じるのです。