94話
屋敷に戻り少し時間が経った頃、凛達は収穫した小麦粉、苺、オレンジ、葡萄、メロン、桃を使ったフルーツタルトをおやつとして食べていた。
クロエは周りにいる人達がやっているのを見て、初めて見るフルーツタルトを恐る恐る口へと持って行き一口食べる。
すると、んーーーっ!と言いながら椅子に座り浮いている足をばたつかせる。
クロエはどうやらフルーツタルトを気に入った様だ。
皆も美味しそうにしながら食べている。
卵を提供してくれたハーピィクイーン達も驚いている様だ。
火燐はダイニングに来た時は物凄くムスッとしていたが、一口齧ってからは少し機嫌が良くなり、
雫はじと目を輝かせながらふおおおおお、と言って食べていた。
訓練を終えて帰宅した凛を中心に、料理が出来る者でフルーツタルトを作り始める。
凛達がフルーツタルトを作っている様子を、バーベキューの時から始めて先程インストールが終わり人化したハーピィクイーンを含むハーピィ達が興味深そうに見ていた。
「凛様、こちらは卵…なのでしょうか?」
「うん?そうですけど、どうかしました?」
「何に使うかは見当がつかないので分からないですが、良ければ私達の卵を使って頂けないでしょうか?」
「ハーピィクイーン達が自分で言う位だから美味しいのでしょうけど…良いのですか?」
「はい、勿論です!それと私達は凛様の配下になったのですから普通に話して頂けると…。」
「分かり…分かった。それじゃお願いするよ。」
「それでは、私達は準備して来ますね(やったわ!早速役に立てる事をアピールしなきゃ!)。」
タルトの生地を作ろうとして卵を並べていると、ハーピィクイーンから卵について尋ねられた。
凛はハーピィクイーンに御主人様は止めて名前で呼んで欲しいと頼むと、凛様と言う事になった。
その後ハーピィクイーン達が卵を用意すると言っていたので、ハーピィの卵に少し興味を持っていた凛は了承する。
ハーピィクイーン達は内心喜びながらも、急いで卵の用意をしにキッチンから離れるのだった。
因みに、ハーピィの卵の大きさは駝鳥と同じ位、ハーピィクイーンの卵はそれから一回り大きかった。
ハーピィの卵は無精卵だが、ハーピィクイーンは有精卵、無精卵を分けて産む事が出来る為、必要に応じて産み分けるのだそうだ。
その後一応はフルーツタルトを用意出来たのだが、人数に対して収穫したフルーツが足りていなかった為、20センチ程のフルーツタルトを8等分した物を1人1個しか用意出来なかった。
今回のフルーツタルトは現段階で用意出来る最高の素材を使用して作った。
その為今までで1番美味しいデザートにはなったが、1人当たりの量が少ないので不満が残ってしまう結果となってしまったのだった。
領地は現在、アルファとイプシロンの2体のおかげで半径7キロ位にまで広がっている。
凛は皆がフルーツタルトを食べ終えた所で、取り敢えず湖を広げた後に空いてる土地で何を育てたいかを皆に尋ねる。
すると皆から果樹園を多めでその次に米や麦、その次に野菜類の順番でお願いしますと言った意見が多く返って来た。
この世界は僕が来るまで甘味が少なかった影響か、女性だけでなく男性も甘味が人気なんだよね…。
凛は朝食、昼食、夕食の際ににフルーツを含めたデザートを用意する様にしているが、領地にいる皆は必ずと言って良い程デザート迄完食している。
しかも中には足りないからかお代わりを要求して来る人がいる位、デザートや果物が人気なのが窺える。
特に暁はクールな見た目に反して男性の中で1番の甘い物好きだ。
その為、甘い物を沢山食べる姿を見られるのが恥ずかしいのか自室でこっそりとケーキ等を食べている事が多い。
出発前の事なのだが、暁は自室でケーキを食べる事に夢中だったのか凛が話をしに訪ねて来た事に気付かなかった。
「(コンコン、ガチャッ)暁ー、これからの事について話があるんだ…け…、ごめん…、僕お邪魔だったみたいだね。」
「…ん?あっ、凛様!?これは違うんです!!」
凛は暁の部屋をノックした後に部屋へ入ると、15センチ程のチョコレートケーキのホールをフォークを使って美味しそうに食べる暁を見てしまう。
暁は自分の醜態をよりによって主である凛に見られてしまい、暁はこの後必死に凛へと弁明した。
しかし凛は口の周りにチョコレートを付けながら必死に弁明する暁にほっこりしていたので、暁の弁明はほとんど聞こえていなかった。
そして今後はもっと甘い物を用意しようと、その当時の凛は思ったのだった。
当然今回用意したフルーツタルトは紅葉達の分も用意していると凛は紅葉に伝えている。
そして暁は顔には出さないものの、現在用意出来る最高級のフルーツタルトと聞いて内心ガッツポーズをしまくっていた。
凛は屋敷の周りはまだ実験中なので、それ以外の現在拓けている土地を果樹園にしようかと皆へ伝える。
凛以外の一同は喜ぶのだった。
もう少ししたら少し魔力を注いだ水を使った作物が収穫出来る様になるはず。収穫後に食べ比べをしてからどう育てるかを決めようかな。
この時点ではまだ3種類の育て方の実験中で、後何日かしたら初級魔法位の魔力を注いだ水を使った作物の収穫が出来る位に育っていた。
凛は早く収穫出来ないかなー、と楽しみにしていたのだった。
その後凛達はおやつの時間が終わった後、午後6時になるまでクロエに魔力操作と魔法の訓練をして貰った。
元々魔法に素質があったのか、訓練が終わる頃には中級までなら魔法が扱える様になる。
クロエは魔法が中級まで扱える事が分かった後、紅葉の役に立てると喜んだ。
「(紅葉、クロエの事なんだけど火以外の水、風、土、光、闇の適性があったみたいで、それぞれ中級までなら魔法が使える様になったよ。風と土と闇については紅葉の血の影響だと思うんだけど、この3属性はそろそろ頭打ちな気もする。それと、食事は勿論出来るけど普通の人とは少し体の造りが違っているから、何かあっても直ぐに対処出来る様になるべく一緒にいてあげてね。)」
「(凛様ありがとうございます。畏まりました、クロエも私に懐いていて下さっている様ですしあまり離れない事に致します。)」
「(うん、お願いね。クロエが武器を扱えるかどうかはまた今度で。それじゃ、クロエをそちらへ送るのでポータルを用意して貰って良いかな?)」
「(畏まりました。)」
凛は紅葉と念話で話した後、紅葉が使い捨てのポータルを開く。
凛はその使い捨てのポータルをクロエと一緒にくぐり、クロエを紅葉達の元へと送った。
凛はそこで紅葉達やゴーガン達と軽く雑談した。
紅葉達は勿論、ゴーガン達も先程食べたフルーツタルトを絶賛してくれたので凛は嬉しそうにする。
その後凛は自分達も夕御飯を食べるからと屋敷へ戻るのだった。