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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画編
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92話

「幽霊…ですか。」


「紅葉様…。」


「ええ、分かっています。こちらに害が無い様でしたら試してみましょうか。」


「はっ。」


受付の男性がこの場からいなくなった後、紅葉と暁はそう言った。

旭とゴーガンも皆が行っている朝の訓練を見ていたので、今のやり取りで紅葉が何が言いたいのかを何と無く察した様だ。


4人は先程声の聞こえた方向へ進み、やがて奥にある檻へ着くと人と思われる白骨化した死体があった。

そして、その上に浮いている白い半透明の少女の様な存在へと意識を向ける。




「……生きたい。」


「貴女は生きて何がしたいのでしょうか?」


「……生きて…何が…?」


「ええ、そうです。貴女がここに来る前にやりたかった事はありませんでしたか?」


「やりたい事…あったけど、生まれつき私は体が弱くて、いつも寝てばかりだったから、出来なかった…。」


「そうでしたか…。もし自由に動ける体が手に入ったとしたらどうします?」


「私は…冒険がしてみたい。自由に動き回って強い魔物を倒して行くの!…でもどうしてお姉さんは私にそんな事を聞くの?」


「試す様な事をしてごめんなさいね。生き返るとまでは行きませんが、自由に動ける体でしたらご用意出来ます。それを貴女に対して用意して良いかを判断させて頂いたのです。」


「お姉さん凄い!でも見ての通り私は死んじゃってるから、何もしてあげれないんだ…。」


紅葉と白い幽霊の様な少女(?)は暫く話していたが、やがて少女(?)は項垂れてしまう。


「いえ、大丈夫です。私は貴女の事を気に入りました。いきなり練習無しの本番ではありますが…、死霊魔術ネクロマンシーで貴女を動かせる様に致します!」


紅葉はそう言って目を閉じた後、両手を前にやりながら集中して作業へと取り掛かる。


紅葉は鬼姫に進化した後、闇属性にも適性が出来た事が分かり、訓練の際に風と土だけでなく闇魔法の練習もする様になる。

そして闇属性で扱える事の中に死霊魔術ネクロマンシーがある事が分かり、必要な時があるかも知れないと思い一応準備はしておいたのだ。




生前の少女だった骨の周りに解体したものの筋が多くて食用に向かなかった、金級の強さのソードドラゴンの肉を圧縮した物を筋肉の代わりとして付ける。

そしてソードドラゴンの肉の中に何かの役に立てる様にと、紅葉は自身の血を1滴だけ混ぜた。


「後は貴女の生前の時の姿をイメージしながらその体の中へと入って下さい!」


「分かったよお姉さん!」


作業自体は始まってから3分程だが、物凄い集中力と初めてとは言え失敗したくない思いからか、紅葉は汗だくになりながらそう叫ぶ。

少女(?)は紅葉に従いかつて自分の骨だった物の周りに肉が付いた、人間の体の様な物の中へと入る。


すると少女(?)がいた所を中心に辺りが白く光り、暁、旭、ゴーガンは目元に手をやって光をさえぎる。




「はぁ…、はぁ…、終わりました。」


紅葉がそう言うと光が収まった。

そして光があった所には、目を瞑った13歳位の少女が全裸で立っていた。

少し灰色がかった黄色の髪色を、肩に掛かるかどうか位の長さ迄伸ばしている。


紅葉は無限収納からローブを取り出し、立っている裸の少女にそっとローブをかぶせる。

少女はピクッと動いた後、灰色の瞳をした目を開く。


「貴女にと思い体を用意致しました。どこか変な所はありませんか?」


「んー…ないかな?って言うか凄く体が軽いよお姉さん!」


「私は紅葉と申します。貴女は?」


「私はクロエだよ!紅葉様、ありがとう…。」


紅葉が少女…クロエへと体に不具合が無いかを尋ねる。

クロエは準備体操の様な事をしたり跳ねたりしていたが体の勝手が掴めないのか、動かしてはその勢いに引っ張られていた。


そしてクロエは紅葉へと深くお辞儀をする。




その後紅葉はクロエがゾンビ(生ける屍)になっただけで生き返った訳では無い事を説明したが、クロエは全然問題無いと答える。


そして紅葉が凛へ死霊魔術ネクロマンシーを使ってゾンビとしてクロエをよみがえらせた事、ソードドラゴンの肉を使った事を念話で伝える。

凛はどちらも問題無いと言った後、紅葉へ労いの言葉を掛ける。


すると、紅葉は頬を染めてお礼を返した。


凛は続けて、ガイウスからその街の住民が出たいと思っているならサルーンへと案内してくれないかと映像水晶で連絡が来たと紅葉へ伝える。


先程ゴーガンはガイウスへと連絡していた。

住民が一方的にしいたげられて良い訳がないし、同僚であるはずのこの街のギルドマスターを見て住民を任せられないと判断して、ガイウスへ住民が増やせる機会が出来そうだと話を持ち掛けると直ぐに話が纏まった様だ。


紅葉は真面目な顔に戻り凛へと指示をあおぐ。

凛はサーチによる色分けに、何かに対して恐怖を感じている色を紫色としてマーカー(目印)に追加したと説明する。


それを聞いた紅葉は直ぐにサーチを展開する。

すると、軽く見ただけでも100人以上の人が紫色として表示された。


「(凛様、少なくとも100人以上の方が紫色として出ました。)」


「(やっぱり多いね…。治療をした人達に話を聞いたら、盗賊達による住人への殺傷はよくある事なんだって。街の住人がフーリガンから出たいと思うかを尋ねたら、盗賊以外で残りたいって答える人はまずいないだろうって言われたよ。ガイウスさんからもサルーンへと案内して欲しいって言われたからね。)」


「(それではフーリガンからサルーンへと住民の方々を移すのでしょうか?)」


「(本当はダメなんだけどね…。偽善とは言え知ってしまった以上放ってはおけないし、サルーンもこれから人手が必要なので行きたい人だけにしようか。)」


紅葉は凛と念話で話した後、街の中心辺りにポータルを設置して開く。

すると直ぐに凛達と購入後に治療されて元通りになった奴隷達がやって来た。

凛達は購入した奴隷達と一緒に紫色で表示された住民の元へと行き、フーリガンから出て新しい場所へ行かないかと説明する。


凛達は紫色で表示された住民を説得し、一緒にポータルをくぐるまで一緒に行動した。


当然の様に盗賊から絡まれたり妨害されたが(盗賊側は極上の女達を手に入れようとしてだが)、凛達は1時間程でこの街に残ると言われた人以外の紫色で表示された住民のほとんどを、サルーンの街へと移動させるのだった。

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