88話
「取り敢えず商会が出来上がりましたが、何からしましょうか?」
「そうですね…「俺をホズミ商会に傘下に入らせて欲しい!」「あ、ズルいぞ!俺もお願いします!」「私もだよ!」…だそうですよ、凛様。」
「えっと、ありがとうございます…で、良いのかな?皆さんが参加した後、それぞれやりたい事をお伺いしましょうか。」
『はい!』
最初に傘下に入りたいと言っていた人は麺料理を扱う店をやりたいと言って来た。
テーブルに並べたパスタはナポリタン、ミートソース、カルボナーラ、ペペロンチーノ、明太子の5皿で、少ないと感じたのか、凛に他に麺料理がないかを尋ねる。
凛はパスタ以外が言いかと思い、追加で醤油ラーメン、うどん、そばを出し、この料理人がパスタ以外の麺料理も食べてから納得したと言うか、麺料理そのものを気に入ったので色んな麺料理を扱う店をやりたいと申し出たのだそうだ。
幸い自分の店の隣が空き店舗なので、隣を買い取った後に両方で違う麺料理を出したいとの事。
他にもカレーライスが気に入ったのでカレーライスの店を出したい、
ご飯が気に入ったので丼物やご飯に合うものを出したい、
うちはパン屋だけど丸パンを1種類しか出していなかったから、テーブルに並べてあった菓子パンや惣菜パン等を焼いてみたい、
自分の所は宿屋だけど出す物がほぼ決まっているので、日替わりで出せそうな物があれば教えて欲しい、と言った要望が次々に出た。
これはベータの役割を変えた方が良さそうだね…。
要望があった人達の話を聞きながら凛はそう思い、今後の事を考えていたのだった。
講習会があった夜に凛はニーナ、トーマス、コーラル、ウタル、サムを自室へと呼んだ。
因みにナナは既に眠っている。
「今日の昼過ぎに街へ行って料理関係者に料理を見たり味わって貰う為の講習会を開きました。夕食の時には言いませんでしたが何故かホズミ商会なる物が出来てしまいまして、商店と喫茶店に配置予定だったベータの扱いを変えざるを得ない状況になりそうです。」
凛が5人へ向けてそう言うと、5人は黙って聞いていた。
「それでなのですが皆さんには戦闘組とは別の、幹部となって貰おうと思い呼ばせて頂きました。責任は増えますが、無限収納やアクティベーション、僕との念話が使える様になりますので、ベータやイプシロンを探さなくても済む様になります。難しいなら断って頂いても大丈夫です。」
「…やるわ。と言うか、凛様の世話になっておいてやらないなんて選択肢は有り得ないわよ。皆もそうよね?」
『勿論!』
凛が尋ねるとニーナが答え、ニーナが他の4人を見る。
トーマス、コーラル、ウタル、サムはニーナを見返して頷きながら答えた。
「ありがとうございます。」
凛が頭を下げる。
「アルファとイプシロンの2体が領地を拡げながら今も魔物を倒してくれています。しかしその2体は今の状態から強くなる事は出来ないので、倒した魔物の魔素が僕に送られる様になってます。最近知ったと言うかナビが気を効かせてくれたのか、その送られた魔素を僕へと届けて吸収する事無く、一時的に無限収納内に隔離してくれていた様です。」
「…魔素って一方的に吸収される物だとばかり思っていたわ。凛様、それで?」
「その隔離した魔素を僕とリンクで繋がっている、又はナビの恩恵のある配下へと僕の意思で渡す事が出来るそうです。隔離している魔素の量にもよりますが、簡単に言えば僕の意思で配下を強くさせる事が出来ると言う事ですね。」
「それ、物凄くズルをするって事じゃない…?」
「構いませんよ。多分ですが、これからは皆さんへの危険が増えると思うんです。なので出来る事はやっておきたいんですよ。」
「物騒ね。私ももう少し訓練を真面目にやろうかしら…。っと、どうすれば良いの?」
「僕と手を繋いで貰えれば大丈夫です。後はこちらでやっておきますよ。」
「凛様、これで良いかしら?」
凛が説明すると一同は魔素を隔離と聞いて驚いた後、危険が増えると聞いてニーナは渋い顔になりながら思案する。
そして直ぐに我に返ったニーナは右手を前へと差し出した。
凛は頷いた後にその手を右手で握り返してリンクを繋ぎ、そのまま魔素も 少しずつニーナへと送る。
「…終わりました。体に変化はありませんか?」
「こんなにあっさりと終わるものなのね…。少しずつ何かが流れて来ている感じがするわ。」
「一気に流すと体への負担になると思いまして。一応このまま少しずつ流すので、明日の朝には銅級冒険者位の強さになっていると思います。」
「…感覚に慣れるまでが大変そうね。」
凛が手を離してニーナに尋ねると、ニーナは自分の体を見回したりして確認する。
そして冒険者ですらないただの村人だった自分が、多少の心得は最近出来て来たとは言え紙級、鉄級を飛ばしていきなり銅級冒険者位の強さになると聞いて項垂れた。
その後他の4人も同様にリンクを繋いだ。
「凛様はさっきナビの恩恵って言っていたけれど、私達以外にもリンクを繋ぐのであれば凛様の加護って言った方がありがたみが増すと私は思うわ。」
『異義無し!』
《同じく。》
ちょ!ナビまで!皆悪のりが過ぎるよ!!
その後、凛は何とか訂正しようとするも5人が、そして何よりナビ本人(?)から却下された。
凛は自分の加護なんて恥ずかしくて言えない、と羞恥で身悶えそうになるが、結局は受け入れざるを得ないのだった。




