84話
凛は紅葉達が無事に野盗達を捕縛出来るのか少し心配になりながら、今も賑わいを見せているバーベキューの様子を見ていた。
しかし20分程経ち、
「(凛様、無事に野盗達を全員捕縛致しました。近くに都市がある様ですのでそこへ向かい、捕らわれていた方や亡くなられた方を含めて連れて行きますね。)」
「(紅葉達が無事で良かった!後はゴーガンさんの指示に従ってね。)」
「(お気遣い感謝致します。それでは失礼しますね。)」
紅葉から無事に終わったとの報告が念話であったので凛は安堵する。
「ガイウスさん、紅葉達が無事に野盗達を捕縛したとの連絡が来ました。ただ、捕らわれている人が2人。それと既に殺されていた人が3人いたのでそれも含めて近くの都市へと向かうそうです」
「ふむ、時間と距離を考えるとどうやらソアラの近くに野盗達は住み処を移したんだな。あの辺は新人や鉄級の冒険者が多いからな、野盗達も追っ手が来ないと踏んで余裕が出来、暴挙に出たのか…下種が!」
凛がガイウスへ報告を行う。
するとそれを聞いたガイウスは怒りの表情を露にする。
しかし直ぐにはっとなり、凛殿伝えてくれて感謝すると言って軽く頭を下げる。
その後普段通りへと戻り、凛と雑談する。
「…そう言えば、従業員の募集は行っても良いんでしょうか?」
「商店や喫茶店の前に看板を立てたり、ギルドの掲示板に載せるのはどうだ。」
凛からの問いにガイウスは答える。
「本来はダメなのだが、これからの事を考えると凛殿は大衆浴場だけでなく、何か他の事もやろうと思っているのではないか?」
「そうですね。ですがこれ以上やると既存の料理処や商業ギルドに悪いですし。今回は商店と喫茶店、それと酒場の従業員を街から募集しようと思っているんですよ。」
続けてガイウスは凛へと尋ね、凛は苦笑いを浮かべながら答える。
「募集しようと思っていると言う事は街で暮らす人達の家族を思っての事なのだな。それなら募集と並行してここやソアラの街で奴隷を購入したらどうだ?紅葉達にソアラや王都方面の街等の物件を買わせた後にポータルを設置すれば時間短縮にもなる。それに少し言い方は悪いがこちらは人手不足が解消されるし、向こうは下手な者に買われず凛殿に救われるとの考えも出来るぞ。」
続けてガイウスは凛へ諭す様に説明する。
「流石この街の長ですね!僕じゃそこまで考え付かなかったですよ。」
「いやなに、冒険者として揉まれた結果だ。募集の件は考えておこう。」
凛は尊敬の眼差しをガイウスへ向けながら言うと、ガイウスは少し寂しそうな表情で言ったのだった。
凛は紅葉へゴーガンさんに案内を頼んで商業ギルドへと行った後、安い所で良いので何か家を1つ購入して貰って良いかなと念話で伝える。
紅葉達は今、都市ソアラの冒険者ギルドの中にいる様だ。
都市ソアラの面積はサルーンよりも小さいが、ソアラから各方面に向かう道があるので人が集まり易いそうだ。
ソアラの商業ギルドは都市の中心からやや西にある冒険者ギルドの隣の隣になるらしいので、冒険者ギルドで野盗や捕らわれていた人達の手続きが済んだら向かうとの事。
30分程して、中心部から少し北東部にある少し小さな家を金貨5枚で購入したと紅葉から連絡があった。
しかし野盗達に捕らわれていた2人…新人の冒険者の女の子達が、助けた紅葉達に憧れを持った様で後を付いて来ると少し困った様に伝える。
冒険者ギルドで行われた説明によると彼女らは数日前に冒険者登録をしたばかりで、近くの村から来た男の子3人と女の子2人の5人組のパーティーだったそうだ。
昨日、以来でソアラの外に生えている薬草の採集をしている所へ野盗達に襲われ、野盗達の住み処へと連れて来られた。
その日の内に見せしめとして男の子達は殺されてしまい、お前達もこうなりたくなかったら大人しくしていろよ、明日の昼過ぎに沢山可愛がってやるからなと言われてどこかへ行った様だ。
そして紅葉達が来る少し前に野盗が女の子達の元へ行き、女の子達を襲おうとする。
しかし女の子達は抵抗した為野盗は怒り、女の子達へ殴る蹴る等の暴力を振るっていた。
そして暫くして女の子達がぐったりした所を、ギリギリ間に合った紅葉達が捕縛しようと野盗達を攻めて無力化、紅葉が女の子達に回復魔法を使い傷を癒したとの事だそうだ。
「(報告ありがとう。それでその子達はどうするって?)」
「(私達の事を師匠と言い、私達に付いて行きたいと…。)」
「(懐かれちゃったね。とは言えそちらも今からまた王都へ向かうからソアラを出るし、女の子がソアラを王都方面へ向かっても構わないって言うのであれば取り敢えず今日一晩泊めてあげて。それで明日の朝に暁と一緒にこちらへ連れて来ると良いよ。)」
「(…宜しいのですか?)」
「(まだまだ人手は足りてないしね。それに元村人の人達もこれから鍛えるから、新人冒険者もほとんど変わらないし誤差みたいなものだよ。)」
「(凛様のお手を煩わせてしまい申し訳ありません。)」
「(気にしないで。紅葉に家を購入する様に頼んだのも奴隷を買う為ってのもあったし。ついでで悪いんだけど、そこからサーチで奴隷商を見て篝の時の様に余り時間が残されていない様な奴隷はいるかな?)」
「(少々お待ち下さい…はい、今は大丈夫の様ですね。)」
「(良かった。それじゃ悪いけど一先ずその子達の事を頼むね。)」
「(はい、畏まりました。)」
そうやって凛は紅葉と念話でやり取りを行った後、無事にバーベキューを終わらせて片付けを行う。
片付けが終わる頃には凛の関係者以外はいなくなったので、凛皆へごめん、少しだけ抜けるねと言って警備の詰所へ向かう。
凛は詰所にいたアルフォンスに清涼飲料水のペットボトル等の差し入れを渡して皆の所へ戻り、そのまま片付けを終わらせて皆で屋敷へと帰ったのだった。