79話
「ただ…俺達はこれが最後の進化となった様です。一足先に最後迄進化出来たと言う喜びもありますが、これで終わりだと思うと少し寂しい気もしますね。」
「そうだね。確かに暁の言う通り、これで進化が終わって打ち止めになった。けど成長自体は出来るからさ、これからも皆で一緒に頑張っていこうね。」
「ええ勿論です。凛様、これからも宜しくお願いしますね。」
「こちらこそ。」
「「「………。」」」
「暁達の強さを知って驚くのも分かるが、凛殿に至っては神金級の強さなのだがな…。」
「「「…!!」」」
暁は続けて、少し寂しそうな表情でそう言った。
凛は励ます様にして笑顔で暁にそう言うと、暁もそう答えて微笑んだ事で凛は笑顔のままで頷く。
ダニエル達3人は暁達が魔銀級の強さだと認識が追い付いていないのか、未だに呆けたままだった。
そこへガイウスが少し遠くを見るような悲しい表情でそう呟くと、3人は殆ど聞いた事が無い神輝金級と言う言葉で更に驚いてしまう。
「「………。」」
「まさかその見た目でそんなに強いなんて…。…!(しまった!つい口に出しちまったよ!)」
「確かにルルさんの言う通り、僕のこの見た目じゃそう思えないもんね。」
「凛、今のはあたいが悪かった。この通りだ、勘弁しておくれよ…。」
凛と暁はその後も話を続けている内に、ダニエル達3人は我に返る。
3人はガイウスの呟きを聞いて、凛達は魔銀級の魔物を罠で弱らせる等して有利な状況へと持って行った後、皆で協力して討伐する事を重ねて強くなったのだろうと思う事にした様だ。
それでも凛の見た目からしてそこ迄強くは無い…ましてや神輝金級の強さと言う事に理解が追い付かないのか、ルルが無意識にそう口に出してしまう。
ルルは直ぐに気付いたのかはっとした表情になり、慌てて口を押さえる。
しかし凛はばっちり聞こえていたのか、苦笑いを浮かべてルルにそう返事する。
ルルは反省したのか申し訳無さそうな表情となり、そう言った後に頭を下げた。
「この通り暁達の進化が終わりましたので、こちらはいつでも出発が可能になりました。それと食事に関してですが、こちらで用意しますのでその分の荷物を減らして頂いて大丈夫です。ガイウスさん、サルーンから王都迄は何日位掛かるのでしょうか?」
「それはありがたい。そうだな…馬車だと2週間以上、早馬でも1週間位は掛かるだろうな。」
「(王都迄馬車で1週間位だと思ってたけど、予想以上に王都って遠いんだね。)…でしたら、出発当日に馬車に積む予定の物を一旦こちらで預かります。そうすれば積み荷の分だけ馬車が軽くなり、早く王都に着く事が出来ますよね。」
「こちら側からすれば至れり尽くせりだな。だがそれだけの量を仕舞える程、凛殿の空間収納の容量がベヒーモスを倒した事で増えたと言う事なのだな。」
「(あっ!そう言えば、ガイウスさん達には無限収納じゃなくて空間収納だって説明してたんだった。すっかり忘れてたよ。)…そうなんですよ。おかげさまで空間収納に仕舞える量が増えました。」
取り敢えずルル達3人が落ち着いた様なので、凛はガイウス達へ説明した後にそう尋ねる。
ガイウスは少し考える素振りを見せながら答えると、凛は内心そう思った後にガイウス達に提案する。
ガイウスは少し感心する様にして凛へ言うと凛は内心少し焦りながらもなるべく平静を装い、笑顔でそう答える。
その後も凛達は少し話をした後、これから各々で準備をして明日の午前7時に街の北門の前に集合と言う事に決まる。
ゴーガン、オズワルド、ルルの3人は、明日の予定が決まった事で準備を行う為にこの場から離れた。
暁達は特に用意する物もないので、美羽達に挨拶して回った後に試食・試飲会の手伝いをする事となった。
そして午後6時となる。
流石に今の時間に試食・試飲を行っている者はいなかったが、まだ興奮が冷めないのか何十人もの人達が各店の前で話し合っている様子が見れた。
「今日はこれで終わりとなりますが、また明日も同じ物、同じメニューで試食・試飲会を行いますので宜しくお願いしますね。僕達は最後にこれから後片付けを行います。片付けの作業がやりやすい様に、道を開ける等のご協力をお願い致します。」
凛がそう伝えると、周りにいた人達は本当に明日も無料で食べれるのかと歓喜する。
続けて凛がそう言うと、それを聞いた者達はもうここに用はないとばかりに帰る者、
地面に散乱しているごみを見るが、拾うのを面倒がって帰る者、
そして同じくごみを見た後、凛達が行っている片付けの協力をしてくれる者の3つに分かれた。
凛は試食・試飲会を行う前にごみ箱の設置を複数していたので、参加者が大体のごみをこちらへ入れてくれていた様だ。
凛はごみ箱を無限収納へ直した後、美羽達に箒等の掃除道具を渡す。
そして皆で掃除をしていると、ごみを1つ1つ手で掴んで集めている人達がいた。
凛達はそれを見てほっこりしつつ、手伝ってくれる者達と一緒に片付けを終わらせる。
「ありがとうございました。こちらは手伝ってくれたお礼です。帰った後にでも召し上がって下さいね。」
凛は片付けが終わった後に片付けを手伝ってくれた1人1人にそう言って小さな袋に入ったクッキーを渡し、美羽達と一緒に屋敷へと帰る。
凛達が屋敷に戻ると、屋敷の入口でエルマとイルマの2人が凛達が帰って来るのを待っていた。
凛はナビから2人が午後5時過ぎに進化が終わったとの連絡があった為、エルマ達が目覚めている事を知っていた。
しかし凛はもう少ししたら会えるのと、もう直ぐで試食・試飲会が終わる為そのまま休ませようと思い2人には敢えて何も言わなかったりする。
エルマは進化して金級上位の大天使となり、背中の翼が2対4枚に増えて少しだけ翼が大きくなっていた。
イルマも進化して金級上位の大悪魔となり、エルマと同様に背中の翼が大きくなる。
「エルマ、イルマ。進化おめでとう。」
「「ありがとうございます!」」
「…なんだか2人共進化した事で背中の翼が窮屈になりそうに見えるんだけど、翼を引っ込めるとか出来る?」
「「…!」」
凛達は2人にお祝いの言葉を伝えると2人は嬉しそうに感謝の言葉を述べる。
しかし2人共背中の翼が少し窮屈になった様だ。
部屋から屋敷の外に出る時もそうだったのだが、これからの生活に支障が出るかも知れないと不安な表情になっていた。
凛は2人にそう尋ねると、2人はその発想は無かったのか驚いた表情となる。
2人はうんうんと唸りながら試行錯誤を始め、3分程経って背中の翼を綺麗に引っ込める事が出来た。
エルマとイルマは喜んだ後、皆と一緒に屋敷の中へ入るのだった。