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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画編
73/594

70話

「「「喫茶店?」」」


ガイウス、ゴーガン、ダニエルの3人は凛が言った喫茶店と言う単語が聞き慣れない単語だったからか、揃って口に出してしまう。

周りにいた人達も同様に思ってはいたが、ガイウス達が代わりに言ってくれた事で口に出さずにいた。


「喫茶店とは、飲み物や菓子、果物、軽食を提供する飲食店の事ですね。サルーンの街にもそれぞれを出す所はありますが、1つの飲食店で纏めて出せる所はないのではないかと思いまして。」


「成程な。」


凛がそう言うとガイウスが答え、皆も同意したのか頷いていた。




「後はこの、プリンアラモードやチョコレートパフェ、オムライスやハヤシライス、ホットケーキやパンケーキ等も喫茶店を連想する食べ物かなと思いまして。」


凛は商店と喫茶店が並んだ建物の中心の前に直径150センチの丸いテーブルを出し、それらを並べながら言う。


周りの人々は、今迄に見た事が無い物がテーブルの上に次々と現れた事に驚いた。

しかし芸術品であるかの如く皿の上に綺麗に盛られたり、彩り鮮やかに飾られたそれらをじっと見てほう、とため息を漏らす者がいる等して興味を示す。


「ガイウスさん。建物を建てた後になってしまいましたが、こう言った食べ物を提供する食事処を僕も出して宜しいですか?」


凛はテーブルに並べた料理を無限収納へ直した後にテーブルも収納する。

その様子に周りの人達の中からはああっ、と残念そうな声が出てしまう者が何人かいた様だ。


凛は残念がる人達を尻目に、収納を終えてガイウスへ尋ねる。




凛は果物以外のデザートやご飯類を提供する飲食店が、サルーンに無かった事を残念がっていた。

パンに使っている小麦粉を転用したパスタ等は、まだ違う使い方が出来ると納得して貰える。


しかしこの世界では生の果物がデザート扱い、米に至っては存在すらしていない。


「(デザートやお米の事を料理人に伝えたとしても、まだ概念そのものが無いから理解されるのに時間がかかりそうだね…。それならサルーンの街の飲食店の料理人に一から説明してメニューに加えて貰うよりも、自分でお店を開いてどちらも出した方が早いかも知れない。そうすれば料理人だけで無く、一般の人にも料理に興味を持って貰える筈!)」


凛は屋敷を解体した際にそう考えていた。




「うーむ…。凛殿、この喫茶店なる所で、以前食べさせて貰った海鮮あんかけチャーハンも出すのか?」


「え?普通のチャーハンでしたら出す予定ですが、追加で海鮮あんかけチャーハンもメニューに加えましょうか?」


「ああ、頼む。あれを食べてから森林龍のステーキ以外、少し物足りなくなってしまってな…。」


「うん、あれはかなり美味しかったもんね。君がそう言うのも分かるよ。それに海までかなり距離があるのにここで海老や蟹、帆立が食べれるとは思わなかったしね。」


「ああ、美味かった。あれをすぐに出せる様な店は、恐らくこの街にはあるまい。それに先程並べた他の料理も食べてみたいからな。喫茶店を出すのを許可しよう。」


「ありがとうございます!」


凛とガイウス、ゴーガンがそう言うと周りにいる人達の中にもう少しでお昼になるのも相まって、森林龍のステーキの次に美味しい物と想像したのかごくっと唾を飲んだりぐぅとお腹が鳴っている者がいた。


ダニエルは何やら小さく切られている羊皮紙にメモを取っていた。




「あ、そうだ。明後日と明々後日(しあさって)の10時から18時迄の間、プレオープンとしてそれぞれの店で販売する予定の物の試食、試飲会を行います!1人当たりの量は少ないですが、先程見せた様な料理が無料となってます!皆さん、宜しければ是非参加して下さいね!」


凛はガイウスにお辞儀した後に凛が大声で言うと周りから歓声が上がる。


「凛殿、そんな事を言って大丈夫なのか?」


「本当はもう少し日にちが経ってから言おうと思ってました。ですが周りに集まって来る人達が増えてきたのと、皆さんが注目してる今のタイミングが伝わり易いと思いまして…。」


ガイウスが凛に近寄ってと尋ねると、凛はそう言って少し恥ずかしそうにして右手を後頭部にやっていた。

周りにいる人達はガイウスとゴーガンが美味しいと褒める料理が無料ただで食べれると分かり、その場で喜んでいる者、今の情報を知り合いに伝えようと駆け出す者と様々だった。




そして周りにいた人達は用は済んだとばかりに次々と離れ、5分程経つと凛達の周りにほとんど人がいなくなった。

凛はそれを見計らった様にして、無限収納から1つの巾着袋を取り出す。


「この小さな袋は空間収納の簡易版、とでも言いましょうか。この袋の中に、先程料理を並べたテーブル2つ分の面積の量が入ります。」


「「「は!?」」」


凛がそう言うとガイウス、ゴーガン、ダニエルは叫んでしまう。


「この袋の中は冷暗所の様な扱いの空間になっています。袋の中にはクッキーやポテトチップス等のお菓子類、卵スープや味噌汁等のフリーズドライした物やカップラーメン等のインスタント食品、お湯で暖めて器に移すレトルト食品、レーションや缶詰め等の保存食、それと水、お茶、紅茶等のペットボトル飲料…と言う物が入っています。一応名前を挙げてはみましたが、いずれも皆さん初めて聞く物ばかりだと思います。ですので、食べ方や賞味期限等を商品の後ろに記載させて貰いました。」


凛はガイウス達にそう説明する。




「実は最近になってその袋が作れる様になったんですよ。悪用されない為に、商店で購入した物しか入れられない様にするつもりです。その内その袋も販売してみようと思うのですがどうでしょうか?」


「「「お前は(君は)(貴方は)何をやっているんだ(ですか)!」」」


「すみません…。」


凛が続けて説明を加えた後にガイウス達に尋ねる。

しかし凛は3人から怒られてしまい、しゅんとなる。

3人は直ぐに目配せを送り合って頷き、凛が建てた建物の傍にささっと近寄って巾着袋の扱いをどうするか話し合った。


この巾着袋は凛が建てた商店の物しか入らないが、それでも凛が挙げた名前の物が先程の料理の様な物だとしたら、この世界では一級品だ。

しかもそこそこの量の物がこの小さな袋に収まるとなれば、世界を揺るがしかねない代物となってしまう。


3人はやらかしてしまった凛を差し置いて、自分達が袋の扱いを決めてしまって良いのかと重圧プレッシャーを感じていた。

その後5分程話し合いを続けるも、結論は出なかった。




「あの…、その袋は見本として出しただけですので出そうと思えば何個でも出せますよ?」


「「「それを早く言えー!!」」」


「ごめんなさい…。」


その後も3人は難しい顔で話を続け様とするが、凛がそうと言うとぴたりと話し合いを止めて凛に向かって叫んだ。

凛は3人から怒られた事で、更にしょぼんと落ち込んでしまう。


「…ふむ。一点物で無いのであれば、それなりに高値で販売すれば良いか。」


「そうだね。」


「ではその方向でいきましょうか。」


その為美羽が苦笑いを浮かべ、よしよしと言いながら凛の背中をさすっている間に3人はそう結論付ける。




「先程ダニエルさんに昨日商業ギルドで取り合いがあったと聞きましたので、先程お出しした中身込みの巾着袋をお詫びとしてお渡ししますね。これは客観的に見て幾ら位の価値があるのかを知りたいのもあって、先程僕が販売予定と言った後に渡すつもりだったんですよ。」


「…左様でしたか。ホズミ様の意見を最後迄聞かずに先走ってしまい、誠に申し訳ありませんでした。」


凛は苦笑いを浮かべて巾着袋を出し、ダニエルへと渡しながら説明する。

ダニエルは申し訳無さそうにして受け取った後、凛に向けて深くお辞儀をした。


「凛殿、そちらの言い値で構わぬ。ダニエルに渡したのと同じ物を譲ってはくれないだろうか?」


「出来れば僕も欲しい。」


「この巾着袋はサンプルとして幾つか作ってます。僕の言い方が悪かったですし、お二人にも差し上げますよ。」


「済まなかったな…。」


「僕も悪かった。」


ガイウスとゴーガンもそれを聞いて欲しくなったのか凛へ尋ねる。

凛は苦笑いを浮かべて巾着袋を出してそう言うと、2人は謝罪をした後に凛から受け取った。




「後は今建てた建物の中の確認をするだけですので、僕達だけで大丈夫だと思います。」


「分かった。喫茶店と商店の営業が始まるのを楽しみにしているぞ。では解散するとするか。」


「「はい。」」


「そうだね。」


その後凛は3人にそう伝えると、ガイウスが返事をした後に凛達も返事を行う。

そして先ずはダニエルが、次いでゴーガンとガイウスが離れて解散となった。


「ダニエルは割と最近になって王都から来たギルド員でな。若手だがやり手の様だぞ。」


ガイウスは離れて行ったダニエルの背中を見てそう言い、凛から離れて行った。




その後、凛は美羽と2人で建物の中を見て行った。

建物は商店、喫茶店のどちらもコンビニが縦に2列、横に2列の計4つ分位ずつの広さとなっており、建物の内側(中心側)に会計や調理スペース等が設けられている。

そして建物の真ん中部分にコンビニが縦に2列分の広さのスペースが設けてある。


そこは従業員の休憩スペースや商店と喫茶店が通り抜け出来る通路、それと閉店後に施錠を行って屋敷へと戻る為のポータルを設置している。

ベータ(2番機)には商店の商品やギルドの酒場のお酒の用意だけで無く、喫茶店にも料理の材料を用意して貰う為の通路として使って貰う事にした。


凛達は建物の確認が一通り終わり、再び冒険者ギルドへと入る。

するとルルはまだお酒を美味い美味いと上機嫌で飲み続けており、酒場のマスターはどうしたものかと困っていた。

そこへ入って来た凛と目が合う。




「マスター、すみませんがルルさんは昨日死にそうな目に遭っていますし、そのまま本人が満足するまで飲ませて貰っても宜しいですか?こちらは迷惑料代わりです、足りなければ追加でお出ししますね。」


「いや、充分過ぎる位だ。その分少しでもこの子の面倒を見る事にするよ。」


「ありがとうございます。僕は屋敷へと戻りますので、ルルさんの事をお願いしますね。」


凛は幸せそうにお酒を飲んでいるルルを酒場から離すのは悪いと思ったのか、マスターへ向けてそう言って金貨1枚をカウンターの上に置く。

マスターは軽く首を振ってそう言い、ルルの方を向く。

凛はそう言って軽く会釈を行い、美羽と共に屋敷へと戻ったのだった。

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