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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
死滅の森開拓&サルーン都市化計画編
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59話 12日目

12日目 午前6時半過ぎ


凛の屋敷のダイニングルームにて、まだ少し緊張した様子ではあったものの、食事を終えた村人と妖狐族の者が話をしていた。


他にも、篝と仲の良い妖狐族の子供達が集まり、凛を慕う様になって少し大人っぽくなった(と子供達は思っている)篝の話を、子供達がキラキラとした目で聞いていたり、


村や妖狐族の子供達は、歳の近いナナやコーラル、小夜と話をしていたり(見た目から雫もこれに含まれるのだが、本人はデザートを食べるのに集中したいからと言う理由で、子供達をやんわりとナナ達の方へ誘導)、


ニーナやトーマス、それとウタルやサムを含めた、数名の年長組同士が集まり、難しい表情でこれから凛達にどう報いていけば良いのかと話をしていた。




更に、美羽、火燐、翡翠、楓、紅葉、月夜、藍火の近くには、それぞれ1~3人の村人、或いは妖狐族の男性がいたりする。


どうやら、男性達は彼女達程の美人、或いは美少女を目にした事が今までになかったらしく、少しでも彼女達と仲良くなりたいと思った様だ。

互いに牽制し合ったり、(相手に好意を持っているからと言う意味で)顔を赤くする等し、懸命に美羽達へ話し掛けようとしていた。


これに美羽、翡翠、楓、紅葉は困った様子を、

藍火は落ち着かないのかそわそわし、

月夜は少し、火燐は結構苛立った様子を見せていた。




昨日は妖狐族と村人達が別々に夕食を摂っていた事もあり、凛はそこまで人が増えたと言う実感が持てなかった。


しかし、今日からは行動を共にする機会が多くなる為、当然ながらその分賑やかにもなる。


「(…そうか、昨日だけで43人増えたんだった。これでうちも大所帯って訳なんだね。)」


凛は50人以上もの大人数がダイニングに集まり、食事を取り、食後にどう動くのを見ていた。

そして、篝達やナナ達の所で盛り上がっていたり、火燐が男性達に吼えていたり、ニーナ達はそれに驚いたりと、今までとは異なる風景を見て、内心軽く感動していたりする。


「…皆さん、すみません。」


凛がそう言って席から立ち上がると、先程まで賑やかだったのがぴたりと止み、皆の視線が凛に集まった。




「皆さんが来て下さったおかげで、ここまでの大人数になる事が出来ました。ありがとうございます。」


凛は話の最後で皆にお辞儀し、皆はそれに応える様にしてお辞儀を返す。


「まずは悲しいお知らせ…とでも言いましょうか、恐らくですが、ウタルさん達の食料を奪った野盗、それと妖狐族の皆さんを襲った野盗は、同じ者達による犯行ではないかと僕は思っています。」


『!?』


「商人さんの護衛の方が篝を救い、野盗を追い払った後、野盗は逃げる為に北上し、食糧確保の為に村へ向かったのが一連の流れの様ですね。」


「それでは、食料以外に村へ特に被害がなかったのは…。」


「ええ、商人の護衛からの追撃を恐れて逃げる、それかどこかへ向かう為…と言う所でしょうか。念の為、後でサルー()ンの()街の()代表()さんに報告しておきますね。」


「おお…!凛様はサルーンを治めてらっしゃる方と縁がおありなのですね。」


「あ、はい。少し前に、ワイバーンの群れ…と言っても10体程の小さいものですが、サルーンを襲撃すると言う出来事が起きたんですよ。それが切っ掛けで代表の方と知り合いになり、藍火も仲間になってくれました。」


凛の説明にウタル達とサム達の両方が驚いた後、意外な共通点があったとして互いを見合う。

そして凛の更なる説明を受けてウタルが手を挙げ、2人が話をし始めた。




しかし、凛の話から出たワイバーンは、空から攻撃を行う銀級の下位竜(レッサードラゴン)とされてはいるものの、それでもれっきとしたドラゴンの1種だ。

ワイバーンを一撃で仕留める位の攻撃を与えなければ、怒りや死に物狂いで暴れる様になり、必然的に周囲への被害は増えてしまう。


更に、この世界のワイバーンは少々(ずる)賢い性格だったり、弱った状態から捨て身での特攻を仕掛けて来る場合もある。

その為、金級の実力を持つ者でも、ワイバーンを含む複数の魔物相手にした際、油断や疲弊した状態の時に空中からの特攻を受ける等して死ぬ場合があったりする。


「ワ、ワイバーン…?と言いますか、10体は決して小さくないかと…。」


「あれ、そうなのですか?火燐達の方には50体程のワイバーンが向かったと聞いていたので、てっきり少ないものとばかり…。」


「まぁ…単に数が多いってだけで強くはなかったな。」


『………。』


そんなワイバーンを、凛は火燐に事もなげに話し、ウタル達やサム達は顔を青ざめさせながら聞いていた。


「…自分、仲間になったと言うよりも、主様の配下にならざるを得なかったって感じがするっすけどね。主様は自分よりも強い同胞達を簡単に倒していくし、自分はああしないと生き残れなかったとも言えるっす。」


『!?』


そこへ、藍火が微妙な表情を浮かべながら呟いてしまう。


ウタル達やサム達は、藍火が(現在はブルーフレイムドラゴンだが)ワイバーンが人に変化したものだと説明を受けていたものの、見た目が人間にしか見えないとあって、実は全く信じてはいなかったりする。


しかし、藍火の呟きが聞こえ、藍火が人外であるとの信憑性が一気に増しただけでなく、凛や火燐達がワイバーンを容易く倒せる程の実力者だと分かった様だ。

凛達に驚愕の視線を向けたり、近くにいる者同士でざわつき始めた。


視線を受けた凛、美羽、翡翠、楓、紅葉は苦笑いで、

火燐はにやりと笑い、

雫は我関せずと言った感じでデザートを食べ続け、

(ほとんど何もしていなかったからと言う意味で)暁達は少し困った様子を浮かべていた。




因みに、ここにアルファの姿がなかった為に話題は上がらなかったが、アルファは現在、野盗と思われる者達のすぐ近くにいたりする。


昨晩、凛はサム達が襲われた所からウタル達の村を経由し、おおよその方向を計算した地点にアルファを向かわせていた。


アルファはウタル達がいた村を出発し、サーチを展開しながら野盗達が逃げたと思われる方向へ飛んで向かった所、日付が変わってあまり時間が経たない頃に反応が見付かった。


野盗と思われる者達は見張りとして多少の人数が起きてはいるものの、ほとんどの者はまだ寝ているとあって、現在は様子見の状態となる。




それからざわつきが広がっていき、凛はそれを静める為に両手をパンパンと鳴らし、皆の注目を集める。


「すみません。いきなりではありますが、これからの事についての話を少しさせて頂きますね。これから皆さんには、この屋敷を管理する組、領地内の農地で作物を管理する組、料理を覚えて貰う組、それと商売の為に沢山の人と接して貰う組の4つに分かれて貰おうかと思います。」


『………。』


「屋敷を管理する組を『屋敷組』、領地内の農地で作物を管理する組を『農地組』、料理を覚えて貰う組を『料理組』、商売の為に沢山の人と接して貰う組を『商売組』とし、料理組はニーナさん、商売組はトーマスさん、屋敷組はコーラルさんが代表を務めて頂く事とします。」


「「「宜しくお願いします。」」」


凛は今後に向けての説明を皆に行い、説明の間に自身の前に移動して来たニーナ、トーマス、コーラルへ向け、右手で指し示す形で紹介する。

紹介を受けた3人は凛の説明の後に声を揃わせ、深く頭を下げるのだが、ウタル達やサム達はいきなり話が始まった事で戸惑った様子を見せていた。


「ニーナさん達を代表としましたが、これはあくまでも仮にです。適性の高い方ややる気のある方がいた場合、変更する可能性があります。では、4つの組についての説明を、1つずつさせて行きますね。」


そんなウタル達を他所に、凛は再び話をし始める。


屋敷組は屋敷中の掃除、食事等の片付け、風呂の用意をする等、屋敷に関する管理を行う者達、


農地組は凛達が植えた作物に水を撒いたり、収穫を行ったり、収穫後に再び種を蒔く等、農業に関する仕事を行う者達、


料理組は屋敷のキッチンで料理の練習を行い、凛達から合格を貰えたらサルーンの食事処へ(おもむ)き、料理方法を伝授する者達、


商売組は凛が出す予定の商店で販売する商品の知識を学び、その情報を客達に提供する、或いは実際に販売する者達で分けたい…と言う旨を、凛は出来るだけ分かりやすく皆に説明する。


その後、凛は商売組は人と接したり話したりする事が好きだったり、得意とする者、

料理組は元々料理するのが好き、または凛の屋敷に来て食べた物を自分も作ってみたいと思った者、

農地組は農作業が好き、或いは得意な者が挙手すると言う形で立候補して貰い、

いずれも当てはまらない者を屋敷組とする事が決まった。


村と妖狐族の人達に別れて貰った結果、ニーナ達を除き、商売組は8人、料理組は7人、農地組は24人、屋敷組は4人となった。

しかし、凛は最後に魔物と戦いたい者がいるかも尋ねてみたのだが、誰も手を挙げなかったりする。




ナナは母親であるニーナのいる料理組に行きたがるも、ニーナから「もう少し大きくなってからね」と言われ、渋々屋敷組となった。


そこへ、雫が「屋敷の管理をするなら、メイド服は外せない」と言い、無限収納からクラシックタイプのメイド服を出す。


これにナナは興味津々となり、コーラルも一緒に着よう促すも、コーラルは恥ずかしいからと言って断る。


しかし、ナナが目に涙を浮かべながらぷるぷると震えてコーラルを見た為、コーラルはたじたじになり、結局折れてしまう。


ナナは嬉しそうに、コーラルはとぼとぼと歩きながら雫からメイド服を受け取り、メイド服を着替えてくるからと言ってその場を離れ、2人は女性風呂の脱衣場へ向かう事に。


「…って言うか雫。メイド服はどうやって用意したの?」


「瑠璃を初めて見た時から、いつか役に立つと思って用意しておいたのだ…!」


「そうなんだ。(全然答えにはなってないんだけど、雫がここまで嬉しそうにするのは珍しいな)」


凛は不思議そうな様子で雫に尋ねると、雫は『私、良い仕事をした』と言わんばかりに両手を腰に当て、じと目のままどや顔で答えた。

凛はそんな雫に微笑みながら返事を行い、そんな事を思っていた。




3分後


ナナが先に着替え終わったのか、1人だけで戻って来た。


メイド服姿のナナは可愛らしく、皆から褒められるとその場でくるっと1回転し、えへへーと言いながらにへらと笑う。


すると、コーラルが顔の半分だけ出した状態でこちらの様子を見ており、それに気付いたナナがコーラルの元へ向かって行った。


そしてナナはコーラルの腕を引っ張り始めた為、コーラルは「えっ、ちょっと…まだ心の準備が…」等と言いながらも、皆の所に連れて行かれてしまう。

皆の前に立ったコーラルはスカートの裾を掴み、恥ずかしそうにしながら下を向いていた。


そこへ、凛がコーラルの横へ立って良く似合っていると伝え、コーラルが恐る恐る顔を上げると、皆が同意する様にして頷いた。

コーラルは恥ずかしいやら嬉しいやら、よく分からない様な笑顔(?)を浮かべ、凛達はこれに苦笑いとなる。


「ナナちゃんとコーラルさんがメイド服を来てくれた事ですし、女性の制服はメイド服にしましょうか。男性は僕が燕尾服を用意しておきますね。ただ、女性でもメイド服はちょっと…と言う方は、燕尾服にして頂いても全然構いません。」


凛は燕尾服を出しながらそう話すのだが、スカートが苦手な者がいるのか、説明中に女性はメイド服だと聞いて「えっ!?」となり、燕尾服でも構わないと聞いて安堵した者もいた。




8時半頃


凛は農地組に作物への水のやり方を一通り伝えた後、アルファの妹分となるベータ(2番機)を創るのに必要な素材を得る為、死滅の森の中を進んでいた。


アルファは現在、野盗と思われる者達がどこへ向かうかの調査兼追跡を行っている。

そして妹分であるベータは、商売用の商品を無限収納から出し入れ、及び商品の生成を主な役割とする予定だ。


今回森に来たメンバーは凛、美羽達、エルマ達、篝、リーリアの9人で、紅葉達と藍火は領地を守る為だったり、教えられる部分をウタル達やサム達へ教える為に残って貰った。


そんな凛達の中で、(昨日武具のお預けをくらった)エルマとイルマ、篝の3人が特にやる気となり、少しでも多くの魔物を倒して早く進化したいと張り切っていた。


と言うのも、一行が屋敷を出る前、凛はエルマとイルマ、リーリア、篝の4人に、ナビの恩恵を受ける(リンクを繋げる)かどうかを尋ねたからと言うのも関係していたりする。


凛は4人にナビの恩恵を受けると、色々と効率が上がり進化しやすくなったり出来る旨を伝えると、エルマ、イルマ、篝の3人は凛や自分の為に、

リーリアは自分の為ではあるものの、いざと言う時の為に守れる様になりたいからとして、リンクを繋げる事を了承した。




凛達はそれから3時間近く、森の中を散策し続ける事に。

そして以前よりも探索の範囲を広め、沢山の魔物の討伐を行い、ベータ以降のエクスマキナの材料、それとサルーンで解体を依頼する為に銀級や金級の魔物の討伐を行っていった。


やがて、エルマ達が進化出来るまでに成長し、一行は使い捨てポータルを使い、揃って屋敷に戻るのだった。

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