563話
「ふぃ~、ようやく倒せたわぁ。あのボス、パーティー全滅とか普通に有り得そうな感じやったけど…色んな意味で大丈夫なんやろか…?」
《アイル様。感傷に浸るのも良いですが、早く皆様を迎えに行かないと…すぐ近くでココ様が見ていらっしゃいますよ。》
「…え?」
「ぢーーーーー…。」
「あー…分かった分かった、すぐ行くって。だからココ、そんな目で見んでぇな。」
アイルはボスを倒したと言う余韻に浸る間もなく、ノーデンスから促されて別な方向を向く。
すると、ココが少し離れた位置から自分の事を見ており、それに気付いたアイルは困った様子を浮かべ、ココがいる所へ移動し始めた。
「(ぐー)…お腹空いた…。」
《ならば丁度良かった。トゥナヴォルガの確定ドロップは、調理済みの食べ物となります。討伐後1時間の間、宝箱の周辺にセーフティーエリアが出現致しますし、エリア内で昼食を摂られると良いかと。》
「…!アイル、今すぐ行く、早く宝箱を開けて昼食にする。」
「ちょ、ココ、分かったから。後ろから押さんといてって。」
合流後、一緒に歩き出してすぐにココのお腹が鳴り、ココが悲しそうな表情を浮かべていると、ノーデンスから宝箱についての情報が伝えられた。
ココは宝箱の中身が食べ物だと知るや否や、瞬時にアイルの背後へ回り込む。
そして目を輝かせながらアイルの背中を押し始め、アイルは更に困った表情となって皆の元へ向かう羽目に。
(ボス部屋で待っていた)皆と合流を済ませた後、アイル達はボス部屋の中に入り、足場の奥にある2つの宝箱の元へ向かう。
宝箱はどちらも赤色で、片方には独特な光沢を持つ黒い革が、それともう片方にはうな重の絵が乗った透明な球が人数分入っていた。
《皮の方はレアドロップ品のイールスキンでして、セベクの革よりも高い撥水性、防御性を誇り、軽量化も施したものとなっております。今は黒色ですが、希望の色へ着色が可能。鮮やかな色から金色、銀色に変える事も出来ますよ。因みにですが、財布に加工すると、僅かに幸運が上がる仕様になっていたりします。》
「…この、うな重の絵が載っとる透明の球は?」
《そちらは見ての通り、うな重となります…ただし!》
「うぉっ!」
《確定報酬とは言え、ボスからドロップする料理がただの料理な訳がありません!》
「お、おぉぉ…?よう分からんけどそうなんや?」
《はい!ご飯となる部分に白銀米を使用するのは勿論の事、蒸す際のお酒やタレとなる味醂にも(もち米に変化させた物を含め)白銀米を使用させて頂きました。加えて、トゥナヴォルガ自身が神輝金級上位の強さです。ご飯の上に乗っている身だけでなく、タレの一部にも(トゥナヴォルガの)骨や皮を利用しておりますので…。》
「な、何やてー!?それ、絶対に美味しいやつやん!!」
ノーデンスは上機嫌でイールスキンとうな重の説明を行うと、アイルは驚いたり興味津々な様子で聞き入っていた。
そして、ノーデンスが思わせ振りな発言をした事で、アイルはノリの良い返事を行う。
「…って、驚いてる場合やなかった。皆ー、このうな重はやな…。」
『………。』
「って、皆待ちきれずに食べてんのかーーーい!!」
アイルは我に返り、ドロップした2品の説明を行おうとして皆の方を向く。
しかし、アイルの視線の先では、既にサティ達がうな重を物凄い勢いで掻き込んでいた。
アイルはそんなサティ達に対し、思いっきり突っ込みを入れてしまう。
ノーデンスによる宝箱の説明は、サーシャとココにも聞こえていた。
サーシャは普通にしていたが、ココは目を輝かせ、ふんふんと鼻息を荒くし、涎を垂らしながらノーデンスの説明を聞いていた。
しかし、説明が終わるまで我慢出来ず、ココはうな重の球をアクティベーションし、手元にうな重を呼び出して食べ始めた。
ココはうな重をはふはふ言いながらも一心不乱に食べ進めていき、サティ達はそんなココを見て触発され、同じく食べるに至った様だ。
「うち、完全に出遅れてしもうとるやん…うんんんんんまっ!!何やこれ!?鰻の軟らかさ、タレの美味さやご飯との釣り合い、香り、全て最高やん!これなら何杯でもお代わり出来そうやで!」
《ふふふ。マスター達と何回も試行錯誤を繰り返しましたからね。もっと褒めてくれても良いのですよ?》
「偉い!このうな重を用意してくれたノーデンス様や凛様達は偉過ぎるわ!」
《ふふふふふ。》
その後、苦笑いでうな重を1口食べてみた所、今まで食べた中でもトップクラスに美味かった為、アイルもうな重を掻き込み始める。
そして、興奮した様子で感想を述べると、これにノーデンスが上機嫌となり、アイルから煽てられた事で更に機嫌を良くする。
「あー、どうしよ。このうな重目当てに(ボス部屋を)通うのも悪ぅないなぁ…あーーっ!あかん、本気で悩むわーっ!大体何なん?この量であり得ん位に美味い…。」
「うるさい!!アイル、食事中は黙って食べる!」
「あ、すまん。1人で盛り上がっとったみたいやな。うちも黙って食べ…。」
アイルは食べるのを止め、頭を抱える様になのだが、そこをサティから突っ込まれ、おとなしく食べるのに専念しようとする。
「それと、また食べたくなかったら呼ぶから、その時も1人で頑張る事。良いわね?」
『(こくこく)』
「えー。そんなん、自分で取りに行けば…。」
「良・い・わ・ね!!」
『(じっ)』
「はい…分かりました…。」
しかし、続けてサティが話し、他の者達も頷く形で同意を示した。
その為、アイルは渋った後に断ろうとするも、サティや皆の迫力に圧倒されてしまう。
アイルはがっくりと項垂れ、了承せざるを得なかったのだった。




