560話
アイル達はボス部屋に入った後、しばらく歩いた事で部屋の全貌が露になるのに伴い、ボスも姿を現した。
そこには、全長8メートル程、炎や氷で構成されている狼が1体ずつ並んでおり、座りながらアイル達の事をじっと見ていた。
どうやらここ砂漠エリアは、2体で1つのボスになる様だ。
「…あれ?ノディ様。この狼、なーんか見た事あるよーな気がするんやけど。」
《はい。アイル様のご推察の通り、この者達は炎狼スコルと氷狼ハティ。昊様のスキルで顕現した狼の眷属です。それらを1回り小さくし、炎狼スコルには炎操作とソル様の加護を、氷狼ハティには水操作とルナ様の加護を与えて強化したものになります。》
ボウッ ボボボボボボウッ
「…うぉっとっと!つまり、早い話が、スキルで出した狼達を、ボス用に手を加えたっちゅー訳か。…にしても、いきなりとはご挨拶や、なっ!」
アイルはボスとなる2体の魔物を見て立ち止まり、不思議そうな様子でノーデンスに尋ねる。
すると、ノーデンスが答え終わったタイミングで炎狼スコルが口から炎の球を吐き出し、跳躍による移動も行った。
一行は散開する形で炎の球を一旦避けた後、炎狼スコルはアイルを的と決めたのか、移動後も次々にアイルに向けて炎の球を吐き出していった。
アイルは話しながら炎の球を避けつつ、少しずつ炎狼スコルの元へ近付いて行く。
そしてイーノックはアイルのサポートをしようとして後を追い、それ以外の者達は氷狼ハティの元へ駆けて行った。
戦闘が始まって1分程。
炎狼スコルと氷狼ハティは通常のサイズよりも1回り小さくなった事で、かなり小回りが利く様になっていた。
そして扱う属性こそ炎や光、水・氷や闇と異なるものの、基本的な動きや、天歩を用いながらの立体的な攻め方を行うと言う点では、情報元である昊を参考にしたのか2体共似たような感じだった。
その為、ココは(狼達の魔物の頂点に立つ)昊の姿が目の前の2体と重なり、「昊様みたいな動きをする…素敵」と、少しだけ興奮気味になっていたりする。
更に3分後
「ガウワウ!」
「ぐっ…アイル!今だよ!」
「あいよっ!アイシクルスピア、乱れ撃ちやでぇ!」
ザザザッザザッ
「ギャオゥ!」
「逃がさへん!アクアエッジ・ディケイドぉ!!」
ザシュッザシュッ ザザザザッ
「グググ…クゥン。」
炎狼スコルがイーノックに噛み付き攻撃を行い、それをイーノックが盾で防いだ後にアイルへ合図を出した。
アイルは返事をしながら水氷のチャクラムを操作し、炎狼スコルへ向け、魔力を込めたアイシクルスピアを十数本連続で放つ。
その内の3割程が炎狼スコルの体に刺さり、炎狼スコルは受けたダメージにより怯んでしまう。
アイルはその隙を突き、今度は通常のよりも威力、大きさ、回転数がかなり増したアクアエッジ・ディケイドを2つ放ち、更に追撃として水氷のチャクラムも向かわせた。
炎狼スコルは放たれたアクアエッジ・ディケイドや水氷のチャクラムを避けようとするも、ダメージが蓄積されて弱った為に回避出来なかった様だ。
炎狼スコルの腹部と右肩に深い斬り傷を付けられた事が切っ掛けで軽く体を斬り刻まれ、悲しげな声を上げながら消滅していった。
「さて、後はココ達…。」
「遅い。」
「ぬぉわぁっ!!…こ、ココ、頼むからいきなり驚かせるのだけは勘弁して貰えへんか?うち、びっくりし過ぎて死んでしまう思たわ…。」
「大丈夫、その時は(もう1度甦らせる為に)紅葉様へお願いする。」
「…いや、それ割と本気のやつやん。ほんま、勘弁してぇな…。」
「そんな事よりアイル、早く止めを刺す。」
「そんな事て…。てか、奴さん完全に虫の息状態やん。ココ、やり過ぎちゃうん?」
「………。」
アイルは炎狼スコルが消滅した事を確認し、氷狼ハティがどうなっているのを見ようと、ココ達の方を向く。
するとすぐ目の前の位置にココの顔があった為に盛大に尻餅を突いてしまい、かなり驚いた様子でココに突っ込みを入れた。
ココは澄まし顔で答え、アイルは微妙な表情で呟き、ココが澄まし顔のままでアイルの右手を引っ張り上げる。
アイルはココに引っ張られるままとぼとぼと歩き、やがて氷狼ハティの姿を確認する。
氷狼ハティは本当に生きてるのか分からない位、かなりぼろぼろな状態となっており、ぐったりと言うか、ほとんど動かないままで倒れていた。
アイルはこうなった原因はココだと予想を立て、呆れた視線をココに向けると、ココは明後日の方を向いてアイルからの視線を逸らす。
ココは氷狼ハティを昊と重ねる余り、氷狼ハティの強さが神輝金級中位…つまり一介のフロアボスでしかないと言う事を忘れてしまっていた。
昊は今のココよりも速さや強さが上となっており、ココは毎朝の訓練のつもりで氷狼ハティの相手をする。
氷狼ハティはエリアボスとしての意地から何とか粘っていたものの、やはり地力の差が違い過ぎたのか、短時間でぼろぼろにされたと言う流れになる。
「アイル…貴方、仮にも乙女なのに、さっきの叫び声は正直どうかと思う。」
「そんなん言わんといてぇな…。うちかて、あれはないわぁって分かってるんよ…。」
アイルはココとやり取りの後、サティから等と突っ込まれ、軽くいじけてしまう。
その後、アイルは少し気を取り直したものの、何だか申し訳ないと言う心境になりながら氷狼ハティにも止めを刺し、銀色の宝箱2つと赤色の宝箱1つをドロップ。
赤色の宝箱には帰還用アイテムが、
銀色の宝箱には銀色の狼の尻尾と思われるデザインをしたチャームが、
それとかなり肌触りが良く、青い狼と思われる毛皮を用いたローブがそれぞれ入っていた。
アイルは尻尾型のチャームは確定報酬で、(ベルトの位置等)防具のどこかに着ける事で速度が5割程増し、元となるフェンリルをモチーフとした『フェンリルチャーム』、
青い毛皮のローブはレアドロップ品の内の1つで、外側は寒さから守り、内側は涼しく、水系の技や魔法の威力が上がる『ハティローブ』との説明をノーデンスから受ける。
因みに、今回は出なかったが、もう1つ『スコルローブ』と言うものがあり、外側は熱さから守り、内側は暖かく、炎系の技や魔法の威力を上げてくれる効果を持つ防具がある。
それと、アイル達は強いから楽に勝てたが、本来なら途中で出現するスカーレットアントクイーンや、シアンアントクイーンが稀にドロップする甲殻を用い、防具に変えて炎や氷を防ぎながら戦うと言うのが正攻法だったりする。
アイルは(ノーデンスから聞いた)宝箱の中身の情報をサティ達に伝え、1休みしてボス部屋から先へ進むのだった。




