534話
普段は行いませんが、少しでも読みやすくする為に凛の説明の部分を改行させて頂きました。
ほぼ同時期
『お待たせしました。ただ今から、ダンジョンについての説明を始めさせて頂きます』
世界中に存在するホズミモール、その中の至る所に設置されたモニターに、凛がマイク片手で話し始める様子が映し出された。
ホズミモールを利用している客達は、真っ暗だったモニターにいきなり映像が映った事に驚きつつ、何が始まるのかと興味津々な様子で観始める。
凛の前にはゴルフボール位の大きさをした黒い球が浮いており、凛はそれに向けて話していた。
その黒い球は動画を撮るカメラの様なもので、精霊達や妖精達が遠隔で操作している。
「まず、ダンジョンへ入る前に登録が必要になるのですが、その登録にはレスカを使います。…ステラ。」
「はいはーい!」
「こちらは僕の部下で、ステラと申します。ステラ、お願い。」
「はーい。」
凛は話をしつつ、ポケットからレスカを取り出した後にステラを呼んだ。
ステラは返事をしてから凛の元へ向かい、レスカを受け取った後、100メートル程離れた所にある1番左端のカウンターへ向かって行った。
その途中、どこからか1台のカメラが現れ、ステラの後を追って行く。
「レスカは買い物の時に使うものですが、新たにダンジョンの記録も出来る様に調整致しました。そして彼女が向かったのは『初級ダンジョン』と呼ばれる場所でして、入る為の手続きを受付で行って頂く形となります。
現在は閉じている状態ですが、扉の向こうは下り階段となり、階段の先は鉄級の魔物が多数出現するダンジョンとなっております。」
凛はステラが受付カウンターでレスカの更新を行っている)間に説明を行っていると、どうやらレスカの更新が終わった様だ。
扉は解放され、ステラが右手にレスカを持った状態で凛の方を向いた。
因みに、ステラは受付で待っている間や凛の方向を向いた後も含め、軽くご機嫌なのか尻尾をふりふりと動かしていた。
「…どうやら登録が終わった様ですね。では早速、案内役としてステラに潜って頂きます。」
「はーい、行って来まーす!」
凛はステラの方を向いて更新が終わった事を確認し、そう言ってステラを促すと、ステラは左手をぶんぶんと振って階段を降りて行った。
「今回、ステラには鉄級の魔物が出現する初級ダンジョンに潜って頂きましたが、他にも銅級から銀級の魔物が出現する『中級』、
金級から魔銀級の魔物が出現する『上級』、
そしてここリリミル限定で、神輝金級の魔物が出現する『超級』のダンジョンがございます。
ダンジョンは初級が10階、中級が30階、上級が50階、超級は100階層で構成されております。」
凛はそう話しながら、自身の斜め上後方に配置された大型モニターへ視線を移す。
するとモニターが点き、ステラの後ろを付いて行ったカメラを介し、ステラがゆっくりと階段を降りている映像が映し出された。
凛は階段を下るステラを眺めつつ、ダンジョンの難易度についての説明を行う。
「…どうやら着いた様ですね。各階の入口には、ステラが触っている『クリスタル』と呼ばれる石が設けてあります。クリスタルに触れる事でレスカの情報が上書きされ、次に来る時は短縮して来れる場合もあると言った利点があります。」
そして1分を少し過ぎた辺りで、画面がパッと切り替わった。
どうやらダンジョンの中にもカメラが配置されているらしく、石で出来た階段の一部、それと草原が広がっている様子が映し出される。
凛は画面が切り替わった事に驚く観客達を他所に、映像内にステラが現れ、降りてすぐの所に設置された石…クリスタルを左手で触れる様子について語る。
クリスタルは高さ1メートル程で青い半透明色をした結晶体で、正八面体を少し上に伸ばし、ひし形状の見た目をしている。
そして地面から軽く浮いており、上半分は右方向へ、下半分は左方向へとゆっくり回転していた。
「おや、ゴブリンが現れましたね。…と、この様に、ダンジョン内で魔物を倒すと、すぐに白い光となって消滅します。
…お、今度は何やら赤い箱が…どうやらポーションの様ですね。ダンジョンでは魔物の死骸が残りませんが、その代わり得られる魔素量が2倍になり、今までよりも強さを実感しやすくなっております。
それと、魔物の一部として毛皮や肉がその場に残ったり、宝箱と言う形でポーション等の道具がその場に残る事があります。
僕達はこれを、落ちるを意味する『ドロップ』、或いは『ドロップする』と呼んでおります。今回の場合、ステラがポーションをドロップした…と言う風に使います。」
ステラは草原を進み始め、200メートル程先の所で1匹のゴブリンがいる事に気付く。
ゴブリンもステラに気付いたらしく、何やら叫びながらステラに向かうも、持っていたアズリールソードであっさりと両断される。
するとゴブリンの体が白く光って消滅し、代わりに1メートル四方位の箱が現れた
その箱は所々に金の装飾が施された赤い箱で、ステラが箱を開けると、ホズミ商店等で購入出来る一般的なポーションが入っていた。
宝箱は中身を失った事で消失するのだが、ステラは少し大袈裟な位に喜んだ様子を見せており、凛はここまでの経緯や説明を伝える。
その後もステラは映像越しに草原を進み、襲って来るゴブリンやウルフ、グラスラビット、コボルトやスライムを倒し、ウルフやグラスラビットから毛皮や肉がドロップされる様子が映し出される。
鉄級 1pt~
銅級 10pt~
銀級 1000pt~
金級 1万pt~
魔銀級 100万pt~
神輝金級 1億pt~
凛はそれらの説明をしつつ、ダンジョンの魔物を倒すと上記の様にしてポイントが加算され、レスカに○○ptとして表記される内容も加えた。
そしてその途中、進行方向にあるフィールド内で赤い宝箱を見付け、ステラは中に入っていた毒消しを手に入れた。
凛は映像越しにはしゃぐステラを観ながら、ダンジョン内では床や地面に宝箱が配置されている場合がある旨を伝える。
3分後
「お、ついに大ボス部屋へ到着ですね。今回は説明の為、ステラを地下1階ではなく、敢えて10階へ向かわせました。
ダンジョンでは10階層毎にボスを配置しており、ダンジョンの最下層…つまり初級の場合だと10階ですね。10階の最も奥の場所に、そのダンジョンで1番強い魔物が配置されております。
そして、初級ダンジョンの大ボスは…この様にオークとなっております…が、ステラはとても強いので、オーク相手だとまず負ける事はありません。どうやら相手が悪過ぎたみたいですね。」
ステラは高さ10メートル程の大きな扉のすぐそばへ移動し、空いた左手で何度か扉を指差した後、左手で扉を開けて中に入る。
するとそれまで暗かった部屋に青白い松明の光が照らされる様になり、通常よりも一回り大きいオークの姿が露になる…のだが、通常よりも少し体が大きいと言うだけで、強さはそのままとだったりする。
オークはステラの存在に気付き、威嚇しようとして雄叫びを上げるのだが、その間にステラが素早く距離を詰め、あっさりと両断する形で戦闘が終わってしまう。
これには凛も上手い言葉が見付からず、説明の最後で会場が笑いに包まれるのだった。




