529話
ルシファーは亜空間に閉じ込められたと言うショックの余りに気を失い、鎖に引っ張られるがままにされていた。
ガチャン
「ぬ…?」
鍵が閉まる様な音がした事に気が付き、身じろぎしながら目を覚ます。
「私とした事が気を失っていたのか。ここは…!う、動かん!!」
ルシファーは軽く寝惚けた様子で前方を見渡した後、置かれた状況を確認する為に前へ進もうとする。
しかし体が固定されている事に気付き、慌てた様子で自分の現状を確認し始める。
「な、何だこれはーーーーー!?」
すると自由に動けるのは首から上だけだと分かり、鎖骨辺り以外は全て濃い灰色の石の様なものに埋め込まれ、ガッチリと固定されている事に気付く。
そして自らの周囲を見回した結果、その灰色の石が100メートル四方位の大きさがあると言う事も分かった。
ルシファーは灰色の石を見上げながら叫んだ後、石から抜け出そうとしてもがき始めるも、いくら暴れようが石はびくともしなかった。
ルシファーは魔法を使おうとするも、グレイプニルを通じて魔力を吸われたからか、初級魔法ですら放てない程に魔力が残っていなかった。
しかし、それでも諦めると言う選択肢はないらしく、その後も何とか脱出しようと試みては失敗するを繰り返していく。
インフィニットスペースにてルシファーを固定させた石は封印する為に設けたもので、鎖とセットでグレイプニルと凛は呼んでいる。
グレイプニルは100メートル四方の石を本体としており、ルシファーからギリギリ死なない程度に魔素を吸い続け、その魔素を空間の維持や石の硬化に当てている。
その為、いくらルシファーがもがこうとも決して壊れる事はなく、超回復効果もあって更に強度が増し、更に脱出が困難になる仕様となる。
因みに、グレイプニルはルシファーを捕らえる為だけに用意したもので、昊とは一切関係がなかったりする。
「…と言う訳で、ルシファーは動く事も死ぬ事も出来ない。仮に僕がいなくなったとしても、自らの魔力を動力として永久にあの空間の中で過ごす事になるかな。」
「…空間の牢獄か、想像しただけで気が狂いそうになるぜ。死刑よりも嫌な罰って事は間違いねぇよな。」
『(こくこく)』
凛が説明を終え、アレックスが締めくくると、それを同意する様にして美羽達やパトリシア達が頷いた。
「さて…残りは森の主か。」
「主って事はルシファーよりも強いんだよな?皆で当たった方が良いんじゃね?」
「いや、僕、美羽、アルファ、ステラで行けば大丈夫だと思う。悪いんだけどさ、アレクは皆と一緒に屋敷へ戻ってて貰えるかな?エリックさん達やアイリスさん達を休ませてあげたいしね。僕達は余力があるし、このまま一気に主の元へ向かう事にするよ。」
「んー、主ってのがどんなものかを見てみたかったんだがな…まぁ良いか。後で話を聞かせてくれよ?」
「分かった。」
凛はそう言って森の中心部の方を向くと、アレックスから声を掛けられ、今度はアレックスの方に顔を向けて答える。
アレックスは先程ジェフと戦った事で未だに疲労感が残っており、一緒に付いて言っても足手纏いになりそうだと判断したのか、凛からの申し出を受ける事に。
「…それじゃ、行って来るね。」
「ああ。気をつけてな。」
その後、それまでステラが抱えていたアイリスをアレックスに、美羽が抱えていたリシアンサスをミゲルに託した。
それから美羽とアルファは翼を広げ、ステラはブラストボードに乗る等し、出発の用意を行う。
やがて準備を終え、少し離れた位置から見下ろす形で凛がそう告げ、アレックスの返答を受けてから出発した。
30分後
凛達は(ゼノン達が走る速度に合わせる必要がなくなり)音速を越えた速度で森の上空を進み続けると、直径30メートル程の魔素点が見えて来た。
「あれが魔素点か…。」
「凄く大きいねー!」
「…あれ?あれが魔素点だとすると、その近くで休んでいるのが森の主になるんだよね?何だか見た事がある姿な気がするんだけど…。」
「…今まで黙ってたけど、僕もプロヴィデンスシステムで確認した時、実はそう思ったんだよね。」
「そうそう。色こそ灰色っぽい感じで違うんだけど、ボクもあの有名な火竜な風にしか見えなかったなー。」
先頭を進む凛が呟き、美羽が魔素点の大きさに驚く一方、ステラは魔素点の近くで寝そべっている存在に視線が向いた様だ。
目をぱちくりとした後、微妙な顔で呟いた。
凛と美羽はプロヴィデンスシステムを用い、既に魔素点や森の主の確認を済ませていたのだが、ステラの呟きに同意なのか半信半疑な様子で答える。
やがて一行は、魔素点から500メートル程手前の所に降り立ち、警戒しながら歩く事に。
すると、森の主が凛達が近付いて来るのに併せ、それまで横になっていた体を起こし、4本足で立ち上がった。
森の主は体長20メートル程で、前半分が白、後ろ半分が鈍色をした体のドラゴンとなっている。
「…我はリオレオス、森の主にして覇者である。貴様らはそんな我の前に現れたのだ、覚悟は出来てるのだろうな。」
「「「惜しい!!」」」
ドラゴンことリオレオスが名乗ると、凛、美羽、ステラの3人は盛大にずっこけてしまい、その後揃って悔しそうな様子になりながら突っ込みを入れる。
「「?」」
しかし、アルファとリオレオスは何故3人がこの様な反応を取ったのか理解出来なかった為、揃って不思議そうな表情を浮かべながら凛達の事を見るのだった。
まさかの○ウス参戦w




