518話
「ふんっ。」
「…うぉっ!」
『憤怒』は笑ったまま素早くアレックスとの距離を詰め、その勢いのまま豪快に斬り掛かる。
アレックスは『憤怒』の速度が上がった事に驚きつつ、しっかりとフランベルジュで光景を受け止めた。
「はっ!…はぁっ!!」
ブォン
「マジか!レナードの奴、○脚みてぇな技が出せんのかよ!」
そして『憤怒』は空中へ跳んでからその場に留まり、右足を大きく振りかぶった蹴りを行った。
すると『憤怒』の前に幅2メートル程の飛ぶ斬撃の様なものが現れ、真っ直ぐアレックスの元へ向かって来る。
これにアレックスは更に驚いた様子となり、昔ステラがアニメや漫画で見せてくれた様な、ヒョウやキリンの人達が繰り出した技の名前を叫びつつも、しっかりと飛んで来た斬撃を弾いた。
「はーーーはっはっはっはっはぁっ!!」
「負けてたまるかぁ!!」
「なんの!」
「よっ。よっ。」
『憤怒』は単にアレックスが驚いたと言う事で気分が良くなったらしく、上機嫌な様子で嵐○もどきを行い続け、アレックス、ユリウス、ナルの3人に無数の飛ぶ斬撃を飛ばす。
それをアレックスはフランベルジュで、ユリウスは村正で、そしてナルは今回凛から用意して貰った炎属性の小手…阿修羅に魔力を纏わせ、ひたすら『憤怒』の攻撃を捌き続ける。
そして1分程行われた攻防の結果、アレックス達は傷を負う事はなかった。
しかし、戦闘の余波で近くにあった木は斬り刻まれてボロボロに、地面も無数に斬痕が残ってズタズタとなっていた。
「ほう、やるではないか。」
「この程度で褒められても全然嬉しくねぇっての!炎狼斬!」
「黒炎龍牙ぁ!」
「爆炎波っ!」
『憤怒』はにやりと笑ったままそう言い放つと、アレックスは叫びながら炎で出来た狼を、ユリウスは闇に炎を混ぜた(首から上の)ドラゴンを、ナルはハンドボール位の大きさの炎の球を、それぞれ武器を前に構えたり払う形で技を放つ。
それらは真っ直ぐ『憤怒』に向かって行くのだが、『憤怒』は腕を組むだけで避ける素振りを見せず、その場に留まり続けるだけだった。
そしてアレックス達が放った技が全て『憤怒』に着弾し、空中で大爆発が起きる。
「…中々良い攻撃だが、今の私に傷を付ける程ではないな。」
「何てこった。まさか無傷だとは思わなかったぜ…。」
しかし、『憤怒』は当たる直前に魔力障壁を展開しており、アレックス達の攻撃を無傷で防いでいた。
『憤怒』は障壁を解き、腕を組んだまま話すと、アレックスは不愉快そうに眉をひそめながら呟く。
「今度はこちらから行くぞ。」
「上等、こっちはまだまだギアは上げられるんだよ!2人共、しっかりと付いて来い。」
「ああ。」
「速度なら負けないもんね!」
『憤怒』が腕組みを解いて移動を始め、アレックスはそう言って跳躍し、『憤怒』の元へ向かう。
それから少し遅れる形でユリウスとナルもその場から跳び、そのまま空中戦へと移った。
4人は森の上や森の中を飛んだり跳ねたりしながら斬り結んだり、魔法や技を繰り出す様になる。
そしていずれかが木や地面に着弾しては、その度に爆発を起こしていく。
「きゃっ!…もう、元気過ぎるのも考えものね。」
「全くですわ。」
そんな中、パトリシアの近くに着弾した事で激しい突風が起き、パトリシアは左手でスカートを押さえ、恥ずかしがる素振りを見せる。
アイシャはパトリシアを見た後、隙を見付け次第射ようと、『憤怒』がいる方向に視線を戻しながらそう呟くのだった。




