490話
今話はルシファーに関する情報が主となります。
「ルシファー、それはもしかして七つの大罪の…。」
「ご名答。そう、私は君達の世界で知る所の『傲慢』と呼ばれる存在に当たる。」
凛は冷や汗を流しつつ、ルシファーの出方を窺う様にして尋ねた。
するとルシファーはパチンと指を鳴らし、話が進むに連れて上機嫌となっていく。
「くくく。あの時から君に目を付け、今も様子を見させて貰っているが…ここまで育ってくれるとはな。私は嬉しいぞ!ふはははははは!」
そして最後には両手を掲げ、盛大に高笑いを上げていた。
『魔神』ルシファーは凛が呼ばれる2ヵ月程前に魔素点付近で生まれ、(かつての侵略者の因子が含まれている事から)その時点で神輝金級最上位並に強い力を持っていた。
そして魔王の『強制』の上位互換である『完全強制』、
常時身体能力を上げながら相手を威圧する『絶対王者』、
殺した相手からスキルや記憶を奪う『簒奪』、
神と呼ばれる相手に有利となる『神殺し』が合わさった、複合スキルである『傲慢』、それと他の6つの大罪を任命出来る任命権を得る。
ルシファーは酷く寝ぼけた状態で目覚めたのだが、そんな状態でも自分を食べようと飛び掛かって来たアンズーを瞬殺する事が出来た。
それからしばらくの間、魔物達を倒し続けながら自分が何者なのかを知る為に森の中をさ迷う事となる。
そして凛が下界に降臨したタイミングで(里香の因子を持つ因縁からか)完全に目が覚め、凛にもうすぐ向かうぞと伝える為にプレッシャーを放っていたりする。
「…1つ、質問をしても宜しいでしょうか?」
「私は今、気分が良い。1つと言わず、好きなだけ質問して構わないぞ。」
「どうして僕がこの世界の住人でないと思ったのですか?」
「かつて配下だった者から教えて貰ったのだよ。その者は自分が異世界だと名乗った。そして、その者が話していたと思われる物が多数、君の所で見掛ける事が出来た。」
「成程。次に、2ヵ月程前、僕に向けてプレッシャーは与えたのは貴方でしょうか?それと、どうやって僕の事を?」
「そうだ。その頃に異世界人の配下を得てな。他にも異世界人がいないかを調べた際、真っ先に反応したのが君だった。君の事を調べた方法は企業秘密、とでも言わせて貰おうか。」
「…。」
凛はそのままの体勢で、ルシファーは腕を組んで話を行う。
そして凛はルシファーと話をしている内にある事に気付き、少ししかめっ面となる。
「…その配下の方はどうなったのでしょうか?」
「無論、殺した。君の所へ向かおうとした時に会ったドラゴンから力を奪うつもりが、反対に返り討ちにあってしまってね。私は大きく弱体化してしまう結果となった。それを見た配下達は私を倒せる好機…とでも思ったのだろう。愚かにも私へ歯向かって来たのでな、処分してやった。」
「………。」
ルシファーは最初こそ忌々しいと言わんばかりの表情を浮かべていたが、やり切ったとばかり愉悦に浸った様子となる。
一方の凛は想像通りの結果となり、悲しげな表情を浮かべた。
凛が理香に呼ばれる少し前、金級の腕前を持つ転生者率いる3人組パーティーが帝国側から死滅の森に入った。
そして反対に、ルシファーは強くなる為に簒奪スキルを用い、倒した相手から強制的にスキルを得る目的で、たまたま入口付近にいた所だった。
と言うのも、ルシファーは最強の一角とされる朔夜を一目見ただけで敵わないと悟ったからだ。
ルシファーは確実に勝つ為、(最深部の西側にいた朔夜達を避ける様にして)東側から森の外側へ向かい、たまたま表層付近にいた所で転生者パーティーと遭遇してしまったと言う流れとなる。
転生者達はルシファーの存在にかなり驚くも、パーティーの1人が表層にいる位だから大した事ないと言ってルシファーへ突っ込む。
しかしその場で細切れにされた事で突っ込んだ者は瞬殺、その光景を見た転生者ともう1人のメンバーは腰を抜かした。
ルシファーは強くなったりスキルを集めるのと並行し、自分の言う事を聞く配下も欲していた。
ルシファーは2人に生きたければ自分の言う事に従う様にとの提案を行い、2人は突っ込んだが為に死んでいったかつての仲間みたいにはなりたくないとして、ルシファーの配下となった。
その後、2人はルシファーから『強欲』と『怠惰』に任命され、それぞれ力を与えられる。
そして少し経った頃、ルシファーは返り討ちに遭った事で弱体化し、これをチャンスと捉えた『強欲』と『嫉妬』と『憤怒』が力を合わせ、自分達が主になる為にルシファーを倒そうとして挑んだ。
しかしルシファーはこんな事もあろうかと、予め配下達の心臓に施しておいた術式を発動させる。
その影響により『強欲』達は体中から血を流して倒れ、ビクンビクンと痙攣した後にそのまま息絶えた。
しかし転生者が死んだ事で、ルシファーは幾ばくかの魔素だけでなく、転生者に関する情報も得ていたりする。
その場にいた『色欲』や、残ったパーティーメンバーである『怠惰』は揃って顔を青ざめ、自分達はああなりたくないとして、ルシファーが力を取り戻す事に協力する様になる。
「私は万全を期す為に森の奥で力を蓄えつつ、君の様子を見る事にした。そのついでに配下集めもしていたのだが…どう言う訳か『暴食』だけは任命出来なかったのだ。」
「…(それって、ライムが先に暴食を得たから任命出来なかったって事なのかな。)」
ルシファーは話の途中で首を傾げ、凛はその様な事を考えていた。
凛の考えている事は正解で、ライムがエンペラースライムになった事により、ルシファーは暴食を任命する機会を失っていた。(どうやらライムが人前で本来の姿に戻る事がなかった為に気付かれなかった様だ。)
因みに、ルシファーの配下である『色欲』も時前で持っていたりする。
地球からリルアースへ転生する際、その案内役を務めるのはシロとなる。
転生してからルシファーに殺されるまで20年以上経っていたのだが、転生者はしっかりとシロと会った事を覚えていた様だ。
ルシファーは転生者からシロの情報を得ただけでなく、監視を通じて里香達…更に強いて言えばシロの様子を見聞きしていた。
「そうそう、かつて配下だった者は神とやらに会った経験があるらしくてね。一昨日、その者が覚えていた気配を君の所から感じ取り、帰ったのを確認して動いたと言う訳だ。…さて、おしゃべりはもう飽きたな。時間も惜しくなって来た事だし、そろそろ死合うとしよう…かっ!」
やがてルシファーは話を終えたとばかりに腕組みを解いた後、サッカーボールを蹴る様にしていきなり凛へ蹴りつけて来たのだった。




