4話
「それじゃ凛ちゃん。この世界の事なんだけど…。」
里香は凛が項垂れる事から回復するまで待った後、そう言って凛へ向けて説明をし始める。
まず、この世界について
この世界は地球の4分の1程の大きさで、オーストラリアを少し縦に伸ばしたような形をしている。
そして今から1500年程前に、他の世界からこの世界を侵略しようとして攻めて来る侵略者達がいた。
これに対抗すべく里香の様な『神』、
マクスウェル達の様な『精霊』、
そして人間達『人族』を中心に、
耳が長い事が特徴のエルフ族と人間よりも少し背の低いドワーフ族、
人間の半分位の大きさの小人族、
高い所に住んでるとされる天使族や悪魔族や翼人族、
下半身が魚の人魚族やトカゲが二足歩行したようなリザードマン族等を纏めた『亜人族』、
それと地球で言う所の犬や猫や兎等の哺乳類の特徴が、人間の耳や鼻等、体の一部に現れた様な『獣人族』と協力して侵略者達と戦った。
里香達はかなりの被害を出しながらも、首魁を倒した事で侵略者達を退ける事が出来たのだが、激しい戦いの影響でそれまであった世界中の建物や自然等がぼろぼろになってしまう。
大戦後、神達や精霊は元の場所へと帰って天使や悪魔も自らが住んでいる空へと飛んで行き、生き残った人間と亜人、それと獣人の人達は世界各地へと散ってそれぞれ国を興していった。
そして1500年程が経った現在、リルアースには5つの国が存在しており、それとは別に大陸の中央にいずれの国にも属していないとてもとても広大な森がある。
5つの国と言うのは北西に『アウドニア王国』(通称 王国)、
北から東にかけてが『ダライド帝国』(通称 帝国)、
南東が『シリウ神聖国』(通称 神聖国或いは神国)、
南から南西にかけてが『獣国マーレシス』(通称 獣国)、
西からやや北西にかけてが『商業国家ミョルソド』(通称 商国)、
そして大陸の中央にある広大な森が『死滅の森』となっている。
リルアースの文明は、魔法と呼ばれる便利な物があるおかげ(せいとも言う)か地球で言う所の中世ヨーロッパよりも下となっているが、長年そうしてきたからと言う事もあって人々が特に困った様子は見られなかったりする。
次に、それぞれの国の代表の決め方だが、
王国は『王』を中心とした王族による世襲制、
帝国は頂点である『皇帝』を倒した者(ただし人族に限る)、
神聖国は『教皇』を代表とし枢機卿以下主要な者達による選挙により代表が決まり、
獣国も帝国同様に頂点である『獣王』を倒した者(ただし獣人に限る)、
商国は主要な商家が交代でそのまま『代表』をそれぞれ国のトップとしている。
魔素、魔素点について
『死滅の森』は森の中心部辺りはかつては平原だったのだが、1500年程前の大戦では一大決戦地となり、最も争いが激しい場所となってしまった。
大戦後、かつてそこで放たれた数えきれない程の魔法や、戦って死んだ者達の死体や怨念等が相まって『魔素点』(マナスポットとも言う)が出来てしまい、そのまま森が広がって今の死滅の森へと姿を変えたのではと言われているが原因は不明。
魔素点は『魔素』(マナとも言う)と呼ばれる、この世界では生命体を構成する元だったり、活動する為のエネルギーになる等、あらゆるものを構成する素の様な物が集まって出来ているとされている。
魔素点は周囲に一定の魔素を漂わせるだけでなく、場所によって強弱の差はあるものの様々な魔物を生み出す効果がある。
しかし魔素は魔物にとっては餌にもなる為、魔素点の近くにいようとして常に魔物同士で魔素を巡る争いが絶えない様だ。
死滅の森以外にも魔素点は大陸の各地にあるが、大抵の魔素点はギルドランクと呼ばれる冒険者の階級が、銀級か金級あればなんとかなる程度となっている。
しかし死滅の森は特殊で、森に入ってしばらくの間は魔銀級でギリギリ行けるが、一定以上進もうとしたら神輝金級でないと死んでしまうとされる。
因みに、食べ物は魔素が沢山含まれている=美味とされている。
その為貴族や王族等の裕福な所では、金に物を言わせて魔素を沢山含んだ強い魔物の肉等を食べる事を好む。
そして高価な香辛料を沢山使用して食べる事が美徳とされている為、味付けは二の次となっており、偉い人程高血圧等が原因であまり長生き出来ないと言う傾向にある。
一般的な食事だと簡単な焼く・煮るが主で、パン(貴族等の上流階級だと小麦を使った白いパンで、一般だと少し質の落ちた小麦やライ麦や大麦を使ったパン)、サラダ、スープ、それとメインディッシュで何かが出てくると言った事が多い。
冒険者ギルドについて
話は変わるが、この世界には冒険者ギルドと冒険者と呼ばれる存在がある。
冒険者組合に登録したばかりを0、鉄級となり戦える様になったと仮定した状態を1、神輝金級になった状態を100とした場合、上から
100~ 神輝金級(通称 神金級)
60~ 魔銀級
40~ 金級
30~ 銀級
20~ 銅級
1~ 鉄級
0 紙級
となる。
紙級が登録したてでお使い等の簡単な仕事で経験を積み、鉄級へ昇格してからゴブリン等の討伐任務が許可される。
そして銅級になると一定の腕前やベテラン扱いとなり、銀級で一流、金級で超一流、魔銀級以上は人外とされている。
しかし死滅の森以外の魔素点のほとんどは、金級までの強さを持った魔物しか出現しない。
更に今では死滅の森へ挑む者がいない為か、魔銀級冒険者が複数名いる位で神輝金級冒険者は存在しなかったりする。
通貨や単位について
この世界には共通通貨として銅貨、銅板、銀貨、銀板、金貨、金板、白金貨、白金板、金を特殊加工した黒金貨がある。
銅貨1枚で市販されている茶色の丸いパンが買える(日本で言う100円位)とされる。
そして銅貨、銀貨、金貨、白金貨がそれぞれ10枚で銅板、銀板、金板、白金板1枚と交換出来る。
つまり銅貨100枚=銅板10枚=銀貨1枚、
銀貨100枚=銀板10枚=金貨1枚、
金貨100枚=金板10枚=白金貨1枚、
白金貨100枚=白金板10枚=黒金貨1枚となる。
銅板、銀板、金板、白金板については、里香が江戸時代の小判を参考にしたと言う事で縦長の楕円形をしている。
他の単位として
時間は秒、分、時間、日、月、年とされ、
曜日は闇・火・水・風・土・光の6日を1週間とし、30日を1ヵ月、360日=12ヵ月=1年としている。
重さはグラム、キロ、トン。
長さはミリ、センチメートル、メートル、キロメートルとなっている。
余談だが、凛は里香から地球での1年がリルアースでは500年になると言う話を聞いた際、まるで精神と◯の部屋だね…と思っていたりする。
魔素、魔力、魔法の関係について
この世界には『魔法』と呼ばれるものが存在し、体内にある『魔素』を精神で操作して生成したものを『魔力』、そして集中し形にして放つのを魔法として扱っている。
『魔力』は『魔法』として放つだけではなく、身体能力を補助・強化してくれる『身体強化』も行う事が出来る。
その為剣士や格闘家等と言った前衛職の人が、いざと言う時には身体強化を使って戦う事が多い。
そしてこの世界の生き物は相手に止めを刺すと、止めを刺した方に刺された方の魔素の一部が流れ、刺した方の魔素の容量が強化される。
これにより長時間戦えたり、より強い魔法を放つ事が出来る様になる。
やがて、RPGの経験値の様に一定にまで魔素が貯まると、格が上がる事で『進化』する事が出来る。
例えばゴブリンの場合、ホブゴブリンへと進化すると言った感じになる。
ただこの進化は一定ではなく、例えばゴブリンがホブゴブリンとは別にゴブリンアーチャーやゴブリンメイジになったりと言った感じに、『進化先一覧から次の進化先を選べる』のが正しいと言える。
野生の魔物は理性がなく本能で生きている為、自分がどう進化するかはその個体によって分かれてしまう。
勿論種族毎に『進化先一覧』は異なる為、例えばゴブリンからエルフに進化と言うのは出来ない。
進化先一覧は、進化の兆候が見られた者がある程度先まで分かる様になる。
里香は話の最後に、勉強も兼ねて転生に近い形で地球に向かったとの事を凛に伝える。
そして里香は凛にここまでの説明をしてもそれ程驚かれない様にと、小さな頃から里香がゲームをやっているのを家族に見せていたり、凛にゲームのをやらせたのだと説明して話を締め括った。
凛は里香の影響でゲーム好きとなった為、案の定と言うか里香の説明を聞くにつれ、驚きよりもワクワクとした表情となっていた。
「取り敢えずはこんな感じかしらね。それで凛ちゃんには、人間から仙人を飛ばして半神半人になって貰ったわ。お姉ちゃんなりのボーナスって事で♪これで死滅の森でも戦える筈よ。」
「(今デミゴッドとか言ってたけど、なんか凄く進化してない!?)…えっと。そこって里香お姉ちゃんの言う、世界で一番危ない所なんだよね?僕1人でも大丈夫なのかな?」
「いきなり中心部に放り込むなんて事はないから安心して頂戴。それと…ナビ。」
《はい。マザー。》
里香は一通り凛へ説明を終えると、嬉しそうな表情で凛にそう伝える。
凛は内心非常に驚いたものの、なるべく表情に出さない様に努めて里香へ尋ねる。
里香はそう言うと、どこからか機械の様な声がした。
しかし凛はきょろきょろと辺りを見回してみるが、辺りに里香とマクスウェル以外の姿はなかった。
「ナビには姿がないのよ。聞こえているのは私と凛ちゃんだけなの。凛ちゃんはまだ来たばかりだし、この世界の事は全然分からないでしょ?だからナビを凛ちゃんのサポートに、ね。」
《マスター。宜しくお願い致します。》
「うん。宜しくね、ナビ。」
里香がウインクを交えて凛へ説明を行うと続けてナビがそう言った為、凛はナビに返事をしようと少し上を向きながら答える。
「凛ちゃん自身の情報と向こうの世界の情報を検索・共有出来る様に、ナビとリンクさせて貰ったわ。これで凛ちゃんがナビへ伝え易くなると思う。」
「ありがとう里香お姉ちゃん!」
「…私の可愛い凛ちゃんだもの、これ位頑張るわ!次に、さっき凛ちゃんの調整した時に渡した私の加護についてなんだけど…これは実践した方が早いわよね。凛ちゃんは好きな武器は何かしら?」
「んー…僕は日本刀が好きかな。」
里香が凛にそう伝えると、凛は笑顔で答える。
里香は笑顔の凛を見て、凛を抱き締めたい衝動に駆られるのをどうにか抑えて凛へ尋ねると、凛は少し考える素振りを見せた後にそう答える。
凛はモ○ハンを始めとしたゲームで、よく刀を使ってプレイしていた。
「それじゃあ作りたい刀の形をイメージしながら『創造』、と唱えてみて頂戴。」
「うん?イメージ?分かったよお姉ちゃん。」
里香が凛へそう伝えると凛は座って胡座をかく。
そして両手をそれぞれの足に乗せ、掌を上にした状態でうーんと唸った後に集中し始める。
「…創造。」
しばらくして凛がそう唱えると、凛の頭の10センチ程上に1メートル程の大きさの黒い球体の様なものが現れる。
その球体は少しずつ下降しながら小さくなって行き、やがて球体が消えると、両掌の上には鞘に収まっている状態の打刀が乗っていた。
その打刀は全長80センチ程の長さで、鍔の部分は白色、柄と鞘の部分は黒色となっていた。
「!? 里香お姉ちゃん、これって!?」
「それが私の加護で使える様になった魔法…『万物創造』よ。武器でも魔法でも何でも創造出来る様になるの。使用者の力量とイメージ力次第で希望通りになるのだけど、弱かったり向かなかったりすると創造出来ずに失敗となるわ。後、何故か食べ物関連は地球で市販されてる品質の物が限界っぽいのよね。」
凛は手元に刀が現れた事に驚き、刀を両手で持ちながら立ち上がった。
里香は刀の事も踏まえて凛へ説明を行い、説明の最後に私でも向いてない家事関連はちょーーっとダメだったわ、と付け加える。
「凛ちゃんはこれから頑張って貰う予定だから、強くなったり経験を積めば今作ったのよりも良い武器とか、色々なのが作れる様になるわよ♪私の今後の為にも宜しくねっ!」
「里香お姉ちゃん、相変わらずちゃっかりしてるね…。」
「ふふん、当たり前じゃない!…そうそう。刀を持ったままだと話しにくいわよね。頭の中で『収納』って思ってみて頂戴。」
「(収納…)あっ!持っていた刀が消えた!!」
里香は凛へ向けてそう言った後、主に私に向いてなくてダメだった食事をよと言って凛に向けて親指を立て、良い笑顔でサムズアップしてきた。
凛はそう苦笑いの表情を浮かべて言ったものの、久しぶりに行うやり取りな為か懐かしく感じていた。
里香は腰に手を当てて自慢気に言った後、優しげな表情でそう伝える。
凛は言われた通りにすると、今まで持っていた筈の刀が消えた事で非常に驚いてしまう。
「それは私の加護の能力の1つで、無限収納って言うのよ。無限収納はこことは違う空間に繋がっていて、質量・状態を保持したままいくらでも収納する事が出来るの。念じればリストも出るし、実際に手元に出す事も出来るわよ。」
「いくらでも収納…凄いな…。」
「それじゃ最後に眷族召喚ね。召喚って言っても、さっき使った万物創造と瑠璃ちゃんを見れば分かるだろうけど、私にとって瑠璃ちゃんは大事な眷族なの。召喚は弱いながら何回でも出来るけど、眷族召喚は1回だけだから慎重にね。それじゃ凛ちゃん、イメージしてパートナーを創って頂戴。」
「眷属って、好きにイメージして良いの?」
「えぇ。凛ちゃんがどういった子を召喚するか、大体想像出来るしね。」
「あー、やっぱり里香お姉ちゃんには分かるよね。」
里香が無限収納についての説明を行うと、凛はそう呟いて軽く驚く。
里香が眷属召喚ついての説明を行っている際に凛は我に返り、里香へと尋ねる。
里香はにこりと笑って答え、凛は苦笑いしながら答える。
凛は里香が喚んだ瑠璃を見た時から、出来たら良いと思う子がいた。
凛は昔から初音◯クが好きで、里香達に隠れてこっそりとコスプレをしてたりして楽しんでいた。
しかしある日、里香達にコスプレをしている事がバレてしまい、その場でコスプレパーティー(ただし着替えるのは凛だけ)をやらされてしまう羽目になる。
凛は女装は嫌だけどミ○ちゃんなら良い!と断言出来る位好きな様だ。
「当然よ。私、家事とか料理とかは全っ然だけど、オタク関連には少し自信があるわよ!それに、何年凛ちゃんの姉をやっていると思うのよ!!」
「ははは…。(そのやる気を僕のコスプレ衣装収集や製作とかじゃなく、家事や料理に回して欲しかったかなぁ…。)」
里香は再び腰に手を当てどや顔で答え、凛は苦笑いの表情を浮かべながら内心そう思っていた。
「そんな訳で、凛ちゃんもパートナーを呼んじゃいましょうか。これは『眷族召喚』と唱えて頂戴。何度も言うけど、眷族召喚は1回だけで失敗出来ないの。だから眷属召喚は慎重にね?」
「うん…分かった。」
凛は里香にそう言われ、再び座ってから30分程集中する。
凛は集中している間、記憶の中にある(キャラメイクが出来るゲームにて初音ミ○を参考にした)『美羽』と名付けたキャラクターの事を考えていた。
「…眷属召還。」
凛がそう唱えると、凛の5メートル程先に直径2メートル程の白い光の玉が現れる。
やがて光が収まると、地面から20センチ位上の所に女の子が現れる。
その女の子の背中には半透明の翼の様な物が生えており、翼の影響かは分からないがふわっと地面に着地した。
その後少しして、背中にあった半透明の翼の様な物は姿を消した。
「(もう消えちゃったみたいだけど、今見えたのは翼…だったのかな?これからはこの子が僕の眷属になるんだね。)」
女の子は年の頃が16歳。
身長158センチ程で髪を膝下まで伸ばしている。
そして髪色はホワイトゴールドとでも言おうか、白く輝く金色をしていた。
その髪を赤地の中心が白のリボンで左右をそれぞれツインテールで纏め、白のノースリーブと水色と緑の中間位の色の短いプリーツスカート、それと黒のニーソックスに黒の短いブーツを履いていた。
ノースリーブの襟の部分には、髪に留めてるのと同じデザインではあるが少し大きいリボンが付けてある。
「…初めまして、マスター♪」
そして凛の前に立った少女は10秒程経つとゆっくりと目を開け、凛を見て笑顔でそう言うのだった。
ここでヒロインの美羽の登場です。
ある意味ヒロインよりヒロインらしい里香の事は取り敢えず置いといて←おい
作者は色んなPさん(でこさんの機械少女的なのを購入したり等)の中でも特にこすもさんが好きです←洗脳済み
未だに(0→∞や終点を含めた)消失シリーズが1番だと思ってまして、美羽登場の際、及び後から出て来る美羽が翼が好きだと言うのは激唱から来てます。
性格と言うか人格(?)は、うたはことミ○ちゃん=明るいイメージから来ております。