483話 91~92日目
91日目
里香達が第1領地を訪れた事がその日の内に世界中で話題となり、次の日には沢山の者達が詳しい話を聞きに第1領地を訪れる様になった。
それは里香達に関して気にしていたのは畏れ多いとして身を引いたガイウスやゴーガンも同様で、朝食の際に凛へ尋ねた事で凛達、それとゼノン、フィリップ、レオン、ポールの4人が答えた結果、ガイウス達が自分達は参加しなくて良かったと顔を青くしながら呟いていた。
因みに、未だにバーナードだけは(凛の事を尊敬してはいるが)ゼノン達のノリに付いて行けず、基本的に自らの城で過ごす事が多かったりする。
しかし一旦身を引いたものの、やはり里香達の姿を一目見てみたいとするガイウスとゴーガン、それと懲りずに死滅の森へ散策しに向かい、見る事が叶わなくてガイウスの執務室に押し掛けて来たハンナを始め、多くの者達が里香達に関する情報が欲しいとの要望が上がった。
その為、王都にはイフリート、帝都にはノーム、獣国王都にはウンディーネ、商都にはシルフ、聖都にはマクスウェル、サルーンにはシロとクロ、そして第1領地には里香を模したオリハルコンの彫像を、転移門の近くに次々と凛が建てていった。
《マザー達に失礼があってはいけません。折角の機会ですし、精一杯頑張らせて頂きました。》
第1領地にて、台座付きの里香の彫像を建てて作業を終えた後、ナビが満足そうにしてそう言った。
里香とウンディーネは優しげに微笑む姿を、マクスウェル達は凛々しい表情でポーズを取りながら立った姿を、シルフは元気一杯に笑う姿を、シロとクロは互いに手を繋いで仲が良さそうな表情を浮かべている姿で彫られていた。
恐らくだが、彫像を見た里香は照れ臭そうにし、マクスウェルは朗らかに笑い、イフリートとノームは満足そうに頷き、ウンディーネはあらあらと楽しそうに笑い、シルフはお腹を抱えて笑い転げ、クロが忌々しそうに舌打ちしている所をシロが涙ながらに追及を行っている事だろう。
92日目 午前7時前
「…ん?」
「凛?どうかしたか?」
「いや…何でもない、と思う。」
「何だ?はっきりしねぇな?」
「うーん…(森が)一瞬だけざわついた感じがしたんだ。けど今は何もないみたいだし、多分気のせいだよ。」
「そうか。…サーチには何も引っ掛かってねぇみたいだな。だが念の為、警戒はしといた方が良いかも。」
「そうだね。」
朝食を終え、訓練に向かおうとした所で凛が止まり、死滅の森の中心の方を向く。
そこをすぐ後ろにいた火燐が凛に声を掛け、互いに窺う様な表情で話した後、凛がくすりと笑って頷いて話は終わった。
午前10時頃
「…!?」
凛が自室で作業を行っていると、凛が保有する領地で最も南に位置する第1056領地を中心に、第1050~第1060領地へ広がる様にして、非常に大勢の魔物が押し寄せようとしていた。
凛はそれに気付き、すぐに転移魔方陣を用いて第1056領地へ向かう事に。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
「…少しではあるけど地面が揺れてる。かなり距離があるのに響くのは、それだけ多くの魔物達が行動を共にしているからって事か。」
凛は第1056領地の南門近くに到着すると、凛はすぐに沢山の魔物達がいる地点から500キロ近く離れているにも関わらず、地面が揺れている事に気付き、複雑な表情を浮かべながらそう呟いていた。
「凛様!これは一体…!」
「ごめん、僕にも原因が分からないんだ。ひとまず君達は人々を守る事に専念して欲しい。場合によってはブーストエナジーや、エクストラポーションの使用も許可する。」
「分かりました!それでは、失礼します!」
そこを凛の存在に気付いた南門を守る門番の1人が急いで駆け付けてから窺う様にして尋ね、凛が何とも言えない表情で答える。
しかしすぐに凛が真面目な表情で指示を出し、門番の男性は深く頭を下げた後、急いだ様子で南門へ戻って行った。
「ナビ、これってもしかして…。」
《間違いありません。スタンピードです。》
凛は門番を見送った後にナビに尋ね、ナビはきっぱりとそう告げるのだった。