480話
凛達はゼノン達やセルシウス達を加え、凛が先導してVIP宿に向かおうとするのだが、それよりも前にイフリートがサラマンダーの元へ向かっていった。
サラマンダーは嫌な予感がしつつも、ここで逃げ出したら絶対に不味い事が起きると感じ、体を強張らせながらイフリートが近付くのを待つ。
そしてイフリートがサラマンダーの前で止まり、サラマンダーをその場に立つ様に命令する。命令を受けたサラマンダーはびくびくとしながらゆっくりとその場に立ち上がり、それから10秒程何も起こらなかった事で周りが不思議そうに思っていた。
すると、イフリートは右の拳を下に振りかぶっていきなりサラマンダーにアッパーカットを喰らわせた為、サラマンダーはそのまま真っ直ぐ上に巻き上げてしまう。
その様子を見た周りの者達が呆然とするのを他所にイフリートも上空へ上がり、空中でサラマンダーを一方的にぼっこぼこにした後、最後は地面へ向けて思いっきり叩き付けた。
イフリートが管理する場所は仲間になった当時のサラマンダーが入れない位、溶岩の流れが速い等で厳しい環境にある。
その為、イフリートでも他の事に意識を向ける余裕があまりなく、前回や今回は里香やマクスウェルからの協力を得たから外に出る事が出来、火燐と話をした時も作業中のイフリートの元へ火燐が来たからとなる。
その際に当然ながらサラマンダーの事も話の内容に出ていた為、イフリートはサラマンダーを見て我慢出来なくなり、再会して早々ふるぼっこにしたと言う流れとなった。
サラマンダーはいきなり全身ぼろぼろになってしまったものの、何とかイフリートに許して貰おうとして深い土下座を行う。
イフリートは凛や里香から宥められたり、そこそこ殴った事で取り敢えずは溜飲が下がったらしく、ふんと鼻を鳴らした後にサラマンダーから離れていった。
そんな2体の様子を見たバーナード達やセルシウス達は、(イフリートとサラマンダーの間にある事情を知らなかったとは言え)自分達よりも上位(ただしセルシウス達は同じ位)であるサラマンダーがイフリートから一方的にやられたのを見てかなりぞっとした表情を浮かべていた。
「…創造神様、初めまして。僕はステラと申します。凛様と仲良くさせて頂いている者でございます。」
「貴方が日本から転生したって言うステラちゃんね。凛ちゃんから聞いているわ。こちらこそ、凛ちゃんと仲良くしてくれてありがとう。」
「(ステラちゃん…)…勿体ないお言葉。それでなのですが、恐らく皆様は昼食を摂りにいらしたのではないかと思いまして。食事が取れる場所まで我々が先導致しますので、その後ろに付いて来て頂けるとありがたく存じます。バーナード陛下、ゼノン皇帝、フィリップ教皇、レオン陛下、ポール代表。先導をお願いしても宜しいでしょうか?」
『…!分かりました。その命、慎んでお受け致します。』
ステラは固まったままのバーナード達を一瞥した後に里香の元へ向かい、跪いて挨拶を行った。
里香は両手を顔の横で合わせながら嬉しそうに返事を行うのだが、ステラは初対面なのにいきなりちゃん付けされた事で少し凹んでしまう。
その後、ステラは気を取り直して説明を加え、最後にバーナード達の方を向いて彼らに促した。
バーナード達はいきなり話を振られて驚いたと同時に、ステラがお膳立てしてくれたのだと瞬時に理解し、その場に跪いて答える。
その後、改めて一行はVIP宿へ向かい、里香は凛から貰ったオムライスを、
マクスウェルはご飯と肉じゃがと筑前煮と味噌汁とどら焼きを、
イフリートは肉尽くしや超大盛のご飯を、
ウンディーネとシルフとシロとクロはデザート尽くしを、
ノームは野菜が中心となった料理を(基本的に無言なので代わりに楓が注文)、
ついでにスラ子も肉尽くしの料理を頼み、凛達も好みの料理を頼んでそれぞれ食べ始めた。
里香とウンディーネとシルフとシロとクロは美味しそうにしながら、マクスウェルは好々爺然とした様子で、イフリートは常に燃え上がっている体を更に燃やしながら、ノームは楓に食べさせて貰いながら(端から見ると介護している風に見える)食事を進めていた。
そしてスラ子だが、料理が乗った皿を床に置いた状態で食べており、まあまあね…等と言いながらもしっかりと食べ進めていった。
その様子を周りにいた者達は黙って見ており、ゼノン達も里香達が一緒にいると言う緊張からかあまり食が進んでいなかったりする。
凛達は1時間程VIP宿で過ごして外に出るのだが、イフリート達大精霊が顕現していると言う噂が第1領地中に広がり、一目見ようとしたのか宿の周りには大勢の野次馬達が集まっていた。
そしてイフリート達の姿を見て騒然となっている中、里香達神々や精霊王マクスウェルの姿はそこまで認知されていなかった事もあって、一緒にいる凛に似ためちゃくちゃ綺麗なお姉さんは誰か、両手を腰にやって元気そうにしている白髪の女の子は誰か、凛と手を繋いでいる黒髪の女の子は凛の妹なのか、あの爺さん…ただ者じゃないぞと言う声が聞こえた。
ゼノン達は里香達の手を煩わせる訳にはいかないと思ったのか、野次馬達へこの場から散る様にとの指示を出す。
そして野次馬達の発言を受けた里香とマクスウェルは満更でもない様子を見せ、シロはふふんと得意げになり、クロは凛様の妹…それもありなの、と意味深な呟きを行っていた。
「ふむ。今日は皆揃って顕現した訳だし、折角代表達も揃ってるんですものね。各国の首都を見て回る事にしましょうか。」
『…!?』
人払いが済んだ後、里香が考える素振りを見せた事でゼノン達がぎょっとした表情を里香に向ける。
しかしどうやら決定事項になったらしく、ゼノン達が縋る様にして凛に助けを求めるも、結局は回る気満々な里香に阻止されてしまう。
その為、長距離移動の度に凛が転移魔方陣を展開し、かなり緊張の面持ちな様子を浮かべた各国代表の先導の元、王都、帝都、聖都、獣国王都、商都を見て回っては騒然となるのだった。