479話
「これは…鮭王、皇帝マグロ、大王イカ、カリュブディスにも見えるけど、大きいし少し見た目が違う様な…。それと、この魚は?リュウグウノツカイにも見えなくはない…のかな?」
凛は並べられた順に左から指差し、1番右に入った魚を指差した所で不思議そうにしていた。
「いずれも凛ちゃんが説明したのが進化したものなんだけど、最近は5体見なくなったからウンディーネに頼んで用意して貰ったの。左から鮭神、神帝マグロ、クラーケン、アルヘオカリュブディス。そして1番右の子は『魚龍神バハムート』って言うのよ。」
「え…魚なのにバハムートなの?」
「そう言えば凛ちゃんの所にはジーク君がいるんだったわね。元は同じジラントで、魚が好きな個体が海に適応しようとした結果が太刀魚みたい。見た目こそ魚だけど、この子も歴としたドラゴンって事よ。けどこっちは鯛を美味しくしたって感じで、向こうは不味くてとても食べれたものではなかったし、同じバハムートでも別物だと考えて貰って構わないと思うわ。」
「1体いるだけでも凄いと思ってたのに、まさか2種類も存在するなんて…って言うか、両方共食べたんだ…。」
里香が鮭神達の説明を行い、凛は説明の度に驚いた表情を浮かべていた。
里香は凛が来るまでに、死滅の森以外で発生した全ての魔物を食べた経験を持つ為、2種類いるバハムートも漏れなく試食の対象となってしまった様だ。
凛達の視線の先にいる鮭神、神帝マグロ、クラーケン、アルヘオカリュブディスは神輝金級中位に進化して1回り大きくなり、見た目のゴツさや禍々しさが増した。
そしてバハムートだが、元々リュウグウノツカイが他の魚系の魔物から頭1つ抜けていた事もあって、別名『魚龍王』とも呼ばれていた。
そんなリュウグウノツカイが進化し、もう1体の方と同じ神輝金級上位の強さを持った魚龍神バハムートとなる。
鮭神達は進化した事で水系統に関するスキルを1つ得ただけだったが、魚神龍バハムートは頭1つ抜けていたのが関係したらしく、複数のスキルを所持していた。
農耕神龍ケツァルコアトルと同じく『浮遊』、それとは別に陸上でも活動が出来る様になのか体の周りに水を纏わせる『纏水』や、纏わせた水を攻撃にも防御にも使える様にする『水操作』、そして背中の翼に生えた羽や鱗を飛ばして戦う為なのか『超速再生』を備えていた。
なお、同じバハムートでも飛竜と魚竜と違いはあるものの、背中には鳥の様な翼が生えていると言う共通点はあったりする。
「このバハムートもそうだけど、凛ちゃんは魔物によってはまだ創り出せない子がいるでしょ?ウェル爺と善戦出来たご褒美って事で、ナビの性能を上げておくわね。これでほとんどの魔物が出せる様になると思うわ。」
「やった!ありがとうお姉ちゃん、助かるよ!」
「どう致しまして。早速解析する?」
「うん、ナビの性能が上がったのが僕にも伝わったしね。ナビ、こっちのバハムートを解析するのにそこまで時間が掛からないと思うからさ、すぐに解析をお願いしても良いかな?」
《畏まりました。》
里香は凛の頭に手を当て、凛やナビで話を行った後、会話に魚龍神バハムートが出た事で好物が出て嬉しそうな様子のクロ、それと美羽達やマクスウェル達を交えて話をし始めた。
「くっ。妾だけこの仕打ちとは…クロよ、酷過ぎるのじゃあ…。」
しかしシロも会話に参加しようとした所でクロからメッと制されてしまい、凛達が楽しそうに会話をしている中、シロは1人だけポツンと正座したままとなる。
シロは悲しそうな表情を浮かべ、ひたすら正座に耐えていた。
午前11時頃
凛達は30分程会話を行った後、里香から凛達が住まう所を実際に見てみたいと言う話になり、少し早めだが昼食を摂ろうと言う事になった。
ウンディーネは部屋の隅に追い込まれて動けなくなっていたスラ子を、雫もスラ子と遊びたがっているライムをそれぞれ抱き抱え、凛は里香から教わったばかりの転移魔方陣を展開し、皆で第1領地へ向かう。
一行が転移魔方陣で凛の屋敷前に移動すると、そこで待っていたバーナード、ゼノン、フィリップ、レオン、ポール、他にもセルシウスやサラマンダー、デュラハン、ソルとルナ、エアリアルとヴォルト、アリアが凛達が帰還した事に気付いた。
しかし凛達だけでなく里香達も一緒だった為、バーナード達はかなり驚いた様子を見せた後、次々と勢い良くその場に跪き始める。
その様子を見た凛は何故バーナード達がここにいるのか、そしていきなり跪き始めたのか訳が分からなくなり、ポカーンとした表情を浮かべていた。
「凛様達がいなくなった後、皆に頼まれて僕がナビ様に凛様達の様子を尋ねたんだ。それで凛様が創造神様方と一緒にいる事を伝え、バーナード様達は仕事を手早く済ませたりして準備を終え、凛様達から話を聞く為にずっとここで帰りを待ってたって訳。ほら、凛様は当たり前に感じてるかも知れないけど、普通の人間だと生きている間に創造神様方とお会いする機会なんて事はまずないでしょ?実際、僕も今初めて創造神様とお会いしたからね。…とは言え、まさか創造神様方も一緒に来るとは思ってなくてさ、ただただ驚いちゃったって感じかな。セルシウスちゃん達もかなり驚いてるみたいだしね。」
そこへステラが凛の元へ向かい、苦笑いや困った表情を浮かべながら事情を話したのだった。