469話
「だが、こうして貴様達が死ぬ危険が出てくる度に我々が出張る…と言うのは、正直面倒でもある。」
「「…え?」」
「恐れながら皇帝陛下、それは一体どういう…。」
「何、貴様らが命の危険を顧みずに森を進んでいる、と上司に当たるお方から連絡があってな。そのおかげで余以外にも国王や獣王、教皇、代表、更に我が息子のウェルズ達や獣王の息子達、女神騎士団団長や副団長や各国の冒険者組合総長も救出しに出張る事となった。」
「「………。」」
しかしゼノンが腕組みをしてそう話した事で2人は呆然となり、互いの顔を見合わせた後にアズールがゼノンへ尋ねる。
ゼノンは目を閉じながら答え、2人はこんな豪華な面々を出張らせる程の人物とは一体…と言いたそうな表情になりながら絶句していた。
今回、ここへはゼノンがやって来たが、他の場所にはバーナード、レオン、フィリップ、ポール、ゼノンの息子であるウェルズとニール、レオンの子供達であるレオパルド、レオネル、サラ、シーラ、女神騎士団からアーウィンとレイラ、冒険者組合からエリンとクラークが向かっており、ゼノンと同じ様に魔物の鎮圧の後、無茶をし過ぎない様にとの説得を行っている。
そしてここに名前は載っていないが、ハンナは冒険者達の悪い見本になっているとしてガイウス達が別に呼ばれる事に。
森の中にいるのにも関わらずガイウスとゴーガンはハンナをその場に正座させ、フューリエが辺りの魔物を殲滅しながら2人掛かりでハンナに説教を行い、それを(今日もハンナに無理矢理連れて来られた)アマルガンが何とも言えない表情で見ていたりする。
因みに、ゼノンは自らが住まう城…帝城にて、家臣達や妻のオリビアから森へ狩りに行くのはウェルズ達を鍛える3日に1回にして欲しいと言う事で先程まで執務作業等を行っていた。
そんな中、凛からの呼び出しが来た事で嬉々として冒険者のフォローに参加し、フィリップも似た様な感じで嬉しそうに参加していた。
その為、本日ウェルズ達を鍛えていたレオンやしばらくは死滅の森等に赴いて戦闘を行わずに済むと安心していたバーナード、帝城でリラックスモードになりながら(帝都にある図書館から借りた)本を読んでいたニール、リュファスと一緒にパトリシア達と行動していたサラとシーラは説明の際、冒険者達が無茶をした『せい』で出張ったと少し怒った表情で話す一方、
森に出れる口実が出来たゼノンとフィリップ、レオンからのキツい訓練から解放されたウェルズ達は『おかげ』で出張ったと少し嬉しそうに話していたりする。
「我々の上司は誰よりも人が死ぬ事を良しとせぬお方でな。だが先程、冒険者達が領地から森へ出ようとして門を通った際、そこにいた門番達の言い付けを全く聞こうとしない者が多かったとの報告を受けておる。そのお方は森から帰って来ない者が出るのではと心配になる一方で、こうでもせぬと話を聞いて貰えないのではとでも思われた様でな。貴様達の扱いを我々に一任されたのだよ。…つまり、これからは貴様らが命の危険を冒しそうになる、その度に余達が出張らなければいけなくなると言う訳だ。」
「「も、申し訳ございませんでしたーーーっ!!」」
「うむ。…とは言え、折角の機会でもある。余自ら、貴様達の手助けをしてやろう。」
「「い、いえ!お気持ちだけで充分です!!」」
「つれぬ事を申すでない。ここまで来てやったのだ、これだけで終わる訳がなかろう。余としてもまだまだ暴れ足りない気分でな。」
「「………。」」
ゼノンは途中から右目だけを開けた状態で説明を行い、2人は自分達が原因でゼノン達を森へ招いてしまったとしていたたまれなくなったのか、慌てた様子でその場に土下座をして叫ぶ。
そしてゼノンは軽く頷いた後、にやりと笑って腕組みを解いた事で2人は上半身だけをばばっと勢い良く上げ、必死な表情になりながら再び叫んだ。
ゼノンはそんな2人の言葉を無視し、そう言った後に倒れているナッシュの元へ向かった後、未だに少し熱を帯びている鎧を無理矢理剥ぐ。
続けてゼノンは腰に着けたアイテム袋からエクストラポーションを取り出し、ナッシュに向けて使用するとみるみる内にナッシュの火傷が引いていった。
2人はその様子を呆然と見ている間にナッシュが完治して目を覚ますのだが、すぐ目の前にゼノンがいた事でかなり驚いていた。
そしてゼノンから紫水の糸を用いた服を渡され、不思議そうにしながら服を両手で受け取り、そこから腕、足、腹部の順番に視線を移す。
そして自分が半裸状態となっている事に気付き、その場で慌てて服を着始める。
その後、ゼノンからアズリールラージシールドを渡され、今まで使っていた物よりも上質だと分かった事でテンションが上がり、その様子をグエンとアズールが羨ましそうに見ていた。
それから探索が再開するも、アズール達3人はゼノンと共にいると言う緊張から、がくがくと震えながら歩いたり戦闘を行う。
ゼノンはそんな3人に呆れた視線を送りつつ、溜め息混じりに3人のフォローをしながら自分もしっかりと魔物を倒し、もう少しで神輝金級上位の強さに至ろうとする姿をアズール達へ見せ付けていった。
一方、バーナードやポール、ウェルズ達皇子(又は王子)達、アーウィン達、エリン達は助けた後に説得を行った事で冒険者達は安全に配慮する様になり、その場から離脱や後退する等して離れていった。
しかしレオンとフィリップはゼノンに負けない位に戦闘狂と言う事もあり、ゼノンと同様に領地へ近付きながら冒険者達のフォローを行いつつ、自分もしっかりと魔物を倒していた。
その後もゼノンは悉くを力でねじ伏せ、レオンは相手が攻撃を仕掛るよりも先に当て、フィリップは全ての攻撃を往なして一方的に魔物を倒していった為、アズールを含めて助けた冒険者達から「皇帝コワイ」、「獣王様コワイ」、「教皇様コワイ」等と言われ、自分達とは比べものにならない位に強いとして冒険者から別な意味で恐れられる様になる。
そして無茶をして森を進み続けると、ゼノン達がやって来てトラウマを植え付けられる、近場で無理しない程度に魔物を倒して進化を済ませる様にとの噂が広まっていくのだった。