465話
午後4時頃
死滅の森中層にある凛の領地が中部に近い所まで進んで来た事もあり、昼食を終えて最前線に挑んだ者の中から2名が、神輝金級の聖人へ至る様になった。
ただ、本人達は勿論初めての進化の為、戦闘中に猛烈な眠気に襲われた事で(周りも含め)大きな混乱を起こしていた。
そこを近くで森の巡回を行っていた凛の配下が助け、それぞれパーティーごと最寄りの領地へ戻り、借りている宿で休ませる事に。
「あの…すまない。疲れたって訳でもないのに、戦闘中にいきなり眠くなったのは初めてでな。何か心当たりがあれば参考にしたいと思っているんだが…。」
「ご安心下さい。それは『進化』と言いまして、これから神金級の強さへ至ろうとするのに伴い、適応させる為に体が休息を求めている合図だと考えて頂ければ大丈夫です。遅くても明日の朝、早ければ今日中に目が覚め、休息へ入る前よりも体が軽くなったとか、強さが増したと実感出来る様になると思いますよ。」
『進化…!』
2人の内の1人(どちらも男性)が警備によりベッドへ運ばれた後、眠さと納得いかないのが入り交じった表情で警備の男性に尋ねる。
そして警備から眠くなった理由を伝えられ、尋ねた本人やその場にいる全員が驚いた後、男性は早く進化したいと思ったのかすぐに寝息を立てて休み始めた。
男性以外のパーティーメンバーは少し呆れた様子で、警備は苦笑いの表情で男性が休息に入ったのを見届けてから宿を出る。
宿を出た事で警備はその場を後にするのだが、そこへ入れ替わる様にして先程慌てて宿に入る所を見た知り合いが3人の内の1人に声を掛け、この場にいないメンバーが神輝金級へ進化する為に休んだと言う説明を受けた事で驚き、周りで様子を窺っていた野次馬達も同様に驚いていた。
そこから加速度的に今晩か明日の朝には神輝金級の者が現れると言う噂が領地内に広まっていく中、自分達以上に進んでいるとされる冒険者組合総長達はどうなのかと言う話になり、そこへ丁度ハンナがアマルガンを連れて森から帰って来た。
冒険者達はハンナに恐る恐ると言った感じで現在の強さを尋ねると、(面倒だから)公にはしていないが、自分達はとっくに神輝金級の強さとなっている旨をハンナとアマルガンから伝えられ、更に領地内が騒然となる。
因みに、真面目なエリン達と違い、ハンナは自分の仕事を放り出して狩りを行っていた。
ハンナの部下達は勿論これに怒りを隠せないのだが、下手な発言をしてハンナの機嫌が悪くなる方が面倒な上、日増しに強くなっている事も相まって魔法の実験台とかになりたくないと判断し、怒りを我慢しながら仕事を行っていたりする。
午後7時過ぎ
夕食を終え、凛がダイニングで寛いでいる所へ(凛の直接の配下となって屋敷に住むようになった)ポールがやって来た。
「凛様。本日の売上を計算した所、皆様キャレカで買い物を行うのが楽しいらしく、全体として2割、店によっては4割もの売上向上が見られた様です。これから益々楽しくなりそうですね。」
「便利になるとついつい今は必要ないんじゃないかって物まで買っちゃいますからねぇ…。それに、手間が省けた事で買い物が楽しくなると言うのも分かります。」
「ですね。恥ずかしながら、私も皆様と同じ様な感じでして…。」
「ポールさんもでしたか。先程、レオン様やゼノン様からも同様の報告が届きましたよ。」
「…便利過ぎると言うのも少し考えものですな。」
ポールは満面の笑みで報告を行うも、話している内に段々と恥ずかしくなっていったのか気まずそうにしていた。
しかしそれからは凛と談笑する様になり、これからについて話していくのだった。