464話
正午過ぎ
凛と美羽がVIP宿で食事を摂っていると、フィリップ、女神騎士団団長のアーウィン、副団長のレイラ、凛と出会った時は女神騎士団の小隊長で現在は領地内の警備を行っているタッド、レオンの息子のレオパルド第1王子、ゼノンの息子のウェルズ第1皇子がやって来た。
フィリップは生き生きとした表情をしているのだが、他の者達は酷く疲れた表情をしており、タッドは何で俺まで…とぶつぶつ呟いている。
ポールは魔物闘技場やキャレカ関連で忙しそうにし、バーナードは王になってまだ浅いと言う事で色々と把握する為に仕事から中々抜け出せない状況にあった。
しかしレオン、ゼノン、フィリップの3人は、部下達に仕事を大体丸投げしても大丈夫な環境作りを行っている為、割と自由と言えば自由に動いていたりする。
そして3人は次期代表候補と言った有力そうな者達を交代で鍛えているのだが、先程フィリップは第1領地で警備をしていたタッドを捕まえ、そのまま訓練部屋へ引き摺って訓練へ参加させる事に。
タッドは訓練部屋に移ってからも訓練したくないとして脱出を試みるも、フィリップや(自分だけ抜け駆けは許さないと言う意味で)ウェルズやレオパルドから妨害を受ける羽目に。
フィリップは凛から黄金の林檎を食べさせて貰った頃にタッドの事を知り、その時からタッドに目を付けていた。
そして今日現在、(女神騎士団関係者と言う意味で)タッドはアーウィンやレイラに次ぐ強さとなる為、フィリップはタッドを女神騎士団団長か副団長、上位騎士であるグロリアスナイツのいずれかに就いて貰い、アーウィンを次期教皇か枢機卿に就いて貰うつもりでいる様だ。
「…皆さんお疲れの様ですね。」
「我々全員で掛かっても教皇様に勝てなくてな。むしろ嬉しそうなご様子でこちらに向かって来る位だ…。」
「私、凛様方以外で誰が1番強いかと問われましたら、間違いなく教皇様だと答える自信があります…。」
「本当にお亡くなりになりそうな位に弱っていたのか。今の教皇様を見たら、とてもじゃないですが信じられそうにありませんよ…。」
「「(こくこく)」」
フィリップは(元々光属性に適性があり、孫の様に接している)エイミーと楽しそうに話をしている。
凛はフィリップを見た後に隣のテーブルへ座ったアーウィン達に声を掛けると、アーウィン、レイラ、タッドの順番で返事を行い、レオパルドとウェルズは話す元気もないのか頷くだけだった。
フィリップは凛が行う柔剣に惹かれ、凛からコツを聞く等してメキメキと実力を付けていった結果、(剣だけと言う意味で)凛達の中でも強者の部類に入る様になった。
朝食後の訓練ではリュファスやエイミー、アーサーと言った者達と相手をする事が多く、神聖国で2番目に強い筈のアーウィンとは倍以上の開きがある為、例えこの場にいるアーウィン達5人を同時に相手してもそこまで苦労せずに勝てたりする。
凛はアーウィン達を宥めた後にフィリップと初めて会った時の事を話し、タッド、レオパルド、ウェルズの3人にかなり驚かれ、アーウィンとレイラはあの頃の優しい(だけの)フィリップはもういないのだなと遠い目をしていた。
「? 私がどうかされましたか?」
「いえ、何でもありません。フィリップ様も昼食を摂られてはどうかと思いまして。」
「おお、そうでしたか!今日から神輝金級の素材を用いた料理が出たと聞いておりまして。私、実はこう見えて楽しみにしていたのですよ。」
そこへフィリップがエイミーと話を終えてアーウィン達に合流し、自分に視線が集まった事で不思議そうな様子を浮かべる。
凛は首を左右に振った後に答えて促し、フィリップはそう話しながら、ヴリトラと言った神輝金級下位の食材を用いた料理が追加されたメニュー表を捲っていく。
そしてそれから1時間程経って昼食や食休みを終える頃、フィリップがにこにことしながら訓練を再開する事を告げてから歩き始め、5人はがっくりと肩を落としながらフィリップの後を付いて行った。
凛と美羽は苦笑いの表情を浮かべ、彼らの後ろ姿を見送るのだった。