460話
「はぁ…なんか一気に疲れたよ。」
「マスター、ごめんね?ボクも手伝いたかったんだけど、マスターの国で言う所の家電製品はどうも苦手で…。」
屋敷のダイニングにて、凛は疲れた様子で少し遅めの昼食を摂り始め、その隣では美羽が少し焦ったような、申し訳なさそうな様子で凛を労いながら同じく昼食を摂る。
美羽は凛と一緒に各国を回りながら多少の手伝いをしたものの、ほぼ凛が1人で200インチのモニターを各国の首都やサルーンの冒険者ギルド本部、商業ギルド本部、及び転移門の近くの3ヵ所づつに設置していた。
そして最後に行った商都での作業中、商都と第1領地のカジノでは魔物闘技場に出現する魔物達が異なっているとの指摘をカジノ利用者から受ける。
その為、凛はそれまで商都と第1領地で別々に選んでいたのを撤廃して統一し、次の戦闘で出現する魔物の名前が出てから実際に始まるまでの時間を、それまでの10分から5分に引き下げると言う作業を追加で行った。
それにより1時間の内に行われる戦闘回数を、それまでの3~4回から4~6回に増やせる様になり、神輝金級の魔物が出る可能性が増した為、益々視聴する者達が盛り上がる様になる。
またこの日を境に、それまで冒険者にならなかった者達も映像を通じてやる気を出し、戦いに身を投じて行く事で国力が増すとゼノン達が喜んでいたりする。
因みにだが、凛は地球にいた頃、何かと姉達に頼られては家電製品や車を弄らされていた。
その為、回数を重ねた事でそれなりに詳しくなったのだが、それが災いして姉達の親友や仕事仲間からも依頼が来て苦労させられたりもする。
「僕にも勿論どうしてもダメな事はあるし、誰でも苦手なものの1つや2つはあるから大丈夫だよ。…そう言えば、最初に建てた屋敷に付けた魔導レンジ、美羽が爆発させて壊したんだったね。なんだか懐かしく感じるよ。」
「い、今は流石に慣れたから大丈夫…だよ?」
「美羽が翡翠や楓と料理をし始めた頃だったっけ。お昼用の玉子サンドを作ろうとして、パックごと卵を魔導レンジに…。」
「わーっ、わーっ!マスター、その話はもう大丈夫だってばー!」
「(くすくす)ごめんごめん。普段の美羽も勿論だけど、たまに見せるドジッぷりも僕は好きだよ。」
「マスター…今のって、ボクの事を褒めてくれたんだよね?」
「うん?勿論だよ?」
凛は苦笑いの表情で話し、美羽はビクッと体を強張らせたりわたわたと慌てた様子になりながら話の腰を折ろうとする。
凛は必死な様子の美羽を見て微笑みながら話し、美羽は軽く頬を赤らめ、目を潤ませた。
しかしすぐにじと目になって尋ねた為、凛は微笑んだまま首を傾げて尋ね返した。
「…あたしが言うのも何だけど、美羽ちゃんって意外におっちょこちょいな所があるよね。」
「それでも普段はしっかりと出来てるから羨ましいんだけど…。」
「あたしなんて、未だに出来ない事の方が多いんだよなぁ。」
「「まあ、アウラだし(ね)。」」
「ちょっ!2人して声を揃えるんじゃないよ!」
そこへエルマ、イルマ、アウラの3人がディレイルームのある地下ではなく、他の人達も使いたいだろうからと言う事で自室で進化を終え、揃って階段を降りてダイニングへやって来た。
エルマは笑顔で、イルマは苦笑いで、アウラは何とも言えない表情でそれぞれ話し、エルマとイルマが表情を変えずに突っ込みを入れ、アウラは焦った様子で突っ込みを返していた。
どうやらエルマとイルマにとって、アウラは少しダメな子扱いの様だ。
その後、エルマ達は凛達と合流し、一緒に昼食を摂り始めるのだった。