スポーツの日特別番外編 374.5話 後編
前話の続きです。
今日はスポーツの日と言う事で運動多めにしております。
午後1時過ぎ
昼食に加え、デザートにかき氷まで食べた事で大体の者がまったりとしており、レオンは先程習ったバタフライで海を泳ぎ回り、火燐、翡翠、藍火の3人は再び浜辺や海の浅い所で遊んでいる。
「………。」
そんな中、雫は海に来てからずっとビーチチェアに座りながら(昼食と火燐との一悶着以外は)まったりとしていた。
雫の隣にあるテーブルの上には(他の者達もだが)トロピカルジュースが置いてあり、暁に頼んで既に何杯もお代わりを済ませている。
そして昼食が済んでからはサングラスをかけ始める様になった為、アレックスがこの場にいたらどこのセレブだよと突っ込みを入れていたかも知れない。
実際は日に照らされて暑く、動くだけでも体力が消費され続けて面倒だと言う事で、日陰にいながらのんびりしているだけだったりする。
ヒュッ バシン
「へぶぅ!」
ドサッ
「へぶぅ、だって!ははははは!!雫、お前朝からずっと座ってばっかで全然動いてねぇじゃねえか!つか、お前にセレブの真似は似合わねぇっての!」
そこへ、ビニールシートの上にあったカラフルなビーチボールを取りに来た火燐により、雫は思いっきりボールをぶつけられてしまう。
雫は悲鳴を上げた後、ビーチチェアからひっくり返されて落ちる羽目に。
そしてぶつけた火燐は左手で雫を指差し、げらげらと笑いながら突っ込みを入れていた。
どうやら先程笑われた悔しさをここでぶつけただけでなく、この場にアレックスがいなくても火燐がしっかりと突っ込みを入れた様だ。
「お、おのれ火燐め…。この恨み…晴らさでおくべきか!」
雫はそう言いながら右手で顔を覆いながらぷるぷると立ち上がり、言い終えた後にギンッと怒った視線を火燐へ送る。
「喰らえ火燐!グレイズショット!」
「おっと。」
「ひゃあっ!ちべたーーーいっすーー!!」
「(にやっ)」
「(ちっ)…なら温めてやるよ。バーニングショット!」
「あっつ!?ちょっ、火燐さん!燃えてる!自分燃えてるっすって!!」
「あわわわ!なら消さないと!ストームショット!」
「あ"あ"あ"あ"あ"翡翠さん、その方法は間違って…あばばばばばば…!!」
雫はビーチボールを取りに向かい、ボールの表面に氷を纏わせたものを火燐へ向けて投げるも、火燐はそれをひょいっと避け、避けた先にいた藍火の首元に当たった。
藍火は横を向いて油断していた為にかなり|驚いた声を上げ《良いリアクションを取っ》てしまい、火燐はにやりと笑った雫に美味しい所を持っていかれたとでも思ったのか、舌打ちした後にそう言ってボールに炎を纏わせたものを藍火にぶつける。
その影響で藍火の髪や上の水着が燃え始め、驚いた様子の藍火へテンパった翡翠が何故か風や雷を纏わせたボールを藍火にぶつけ、藍火はしゃべりにくそうにしたり感電したりしている。
「其方ら、楽しそうな事をやっておるの。どれ、妾も…。」
「朔夜、あんた何しれっと参加しようとしてるんすか!って言うか、皆して自分に技をぶつけないで欲しいんすけど!?」
するとそこへ面白そうだからと言う理由で朔夜が参戦しようとした為、藍火は軽くぼろぼろになりながらも右手を胸の前に当てつつ、いい加減にしろと言いたそうな雰囲気でそう叫んだ。
「「ちっ。」」
「…火燐さん、雫さん。舌打ちしたっすよね?今間違いなく舌打ちしてたっすよね!?」
「「ちょっと藍火が何を言ってるのか分からない(な)。」」
「…お二人って、なんだかんだで仲が良いっすよね。」
「「は?私(オレ)が火燐(こいつ)と?…笑えない冗談(だぜ)。」」
「ほらーっす!!」
火燐と雫は藍火に指摘された事が納得いかなかったらしく、少しイラッとした様子で舌打ちを行った。
藍火は右手はそのままに、左手で2人を指差しながら吠え、2人は揃ってやれやれと言いたそうな様子で返事を返す。
これに藍火はじと目で2人に追及を行い、2人は互いに見合った後に互いを指差して話すと、藍火も2人を指差したまま叫んだ。
「「…藍火、ちょっと私(オレ)とOHANASHIしよう(か)。」」
「上等ーーっす!自分がいつまでもやられっぱなしだと思うなよぉっす!!」
「「…ほぅ?」」
「あっ…!あの、やっぱりちょーーーっとだけ手加減してくれると、その、ありがたいなー、なんて…。」
「ははっ。」
「ふふっ。」
「「それは無理な相談(だ)。」」
「ですよねーーーっ!!」
2人は再びアイコンタクトを送った後、据わった目で藍火を見ながら話す。
しかしその事で藍火がカチンと来たらしく、地団駄を踏んだ後に2人へそう言い、2人は軽く笑顔を浮かべて(ただし目は笑っていない)返事した。
藍火は不味いと気付き、視線を泳がせて誤魔化そうとするも、どうやら遅かった様だ。
火燐はポキポキと左右の拳の骨を鳴らしながら、雫は背伸びをしながら歩き、笑顔でそう答えた為、藍火はそう言ってその場から逃げ出した。
それから火燐は『こんの駄竜がぁぁぁ!また躾てやんよぉぉぉぉ!!』と叫びながら、雫は『お仕置きしてあげる』と言いながら宙に浮き、藍火に向けて様々な大きさの火球や水球、氷球を放ち続ける。
火燐と雫の攻撃が次々に着弾した事で海がドォンドォンと水しぶきを上げ、藍火はそれらを『ぎゃああああああ!』と悲鳴を上げつつ、右手で手ブラしながら逃げ回っていた。
「全く、藍火も懲りぬのぅ!」
「本当に。皆さん、相変わらず仲がお宜しい様で何よりです。」
「…そうですね。」
「これって仲が良いって言えるのかな?」
「うーん、どうなんだろ…。」
「「………。」」
その様子を見た朔夜はそう話してからからと笑い、紅葉は温かい目で見ながら話すのだが、暁とエルマとイルマは少し困った様子で答え、レオンとタリアは引き攣った表情を浮かべていたりする。
そんな楽しそう(?)な藍火達を他所に触発されたのか、凛が紅葉達を呼んでビーチバレーをし始める。
紅葉達はルールを知らない為に戸惑った様子を見せていたが、凛と美羽が丁寧にやり方を教え続け、時間が経つに連れて楽しむ様になっていった。
そうしている内に藍火が捕まり、砂浜から頭だけを出した状態でスイカ割りを始める。
藍火はすぐ近くにスイカを置かれた事でかなりスリリングなスイカ割りを体験(結局は木刀をぶつけられる事になるのだが)し、皆でスイカを食べてからビーチフラッグを行う事に。
その途中、日焼けをしに来た色黒でガチムチなゴリラの獣人達が暁をロックオンし、『ウホッ!…やらないか?』と言われた事が切っ掛けでガチの追いかけっこが始まったと思いきや、何故か凛達と握手する等して仲良くなった。
彼らが帰った後、皆で漁に使う船を係留する為の桟橋を利用し、紫水の糸や重り、浮きを使って遊泳区画を設けてから砂浜を後にした。
後日、アゼルを海水浴場として使用可能にし、水着等の海水浴関連用品を購入出来るのがここだけと言う事で人気を上げただけでなく、リゾート地としても有名になっていくのだった。