458話
先程エイミーは今日中に進化を終える為に3階ではなくディレイルームがある地下へ降りて行ったが、これはアレックスが先にディレイルームを利用した事を知っていたからだったりする。
昨日、凛達がガイウスの陞爵式に参加している間、アレックスはユリウスやナル、フラム達を連れ、進化が可能になると分かるまで死滅の森中層深部で狩りを行っていた。
アレックスは日を追う毎に魔物が増えている様な気がしつつも2時間程倒し続けた結果、聖王へ進化出来る事が分かった。
そしてミゲルみたいに聖王へ進化したいと言う気持ちが押さえきれないらしく、まだ狩り足りないとぶーぶー文句を言うユリウスとナルを宥め、皆で一緒に屋敷へ帰った。
「進化の為にわざわざ自分の部屋に向かわなくてもよ、(凛が用意してくれた)ディレイルーム部屋を使えば今日中に進化が終わるんじゃないか?」
『…!』
帰宅後、アレックスが休む為に自室へ向かおうとした所へ、後ろから不思議そうな様子を浮かべたユリウスがそう声を掛ける。
アレックス達はその手があったか!と言わんばかりの表情で一斉にユリウスの方を向き、ユリウスは困った表情を浮かべる事に。
どうやら凛がリムネーが仲間になった日にディレイルームを作成し、短時間で知識や経験を積ませる事だけに意識が向き過ぎた為、他の者達も凛に倣うだけで誰も気が付かなかった様だ。
「…俺、何か変な事言ったか?」
「むしろ、何で今まで誰も気付かなかったんだって感じな位だ。(アドバイスの)礼と言ってはなんだが、進化から目覚め次第出来るだけ早く森に行こうぜ。ユリウスが進化するまで狩りを手伝ってやる。」
「あっ!ユリウスだけズルいー!あーたーしーもー行ーきーたーいーーーっ!!」
「分かった分かった。お前らも行くか?」
『勿論付いて行きます。』
「そうか。ってな訳で、適当に布団でも敷いて早速休む事にするわ。また後でな。」
ユリウスは困った表情のまま、アレックスは納得顔で、ナルは駄々っ子の様に地面をバタバタとしながら、フラム達は粛々と返事を行ってその場は解散となった。
夕食後、聖王へ進化を終えたアレックスはダイニングへ向かい、寛ぎながらもアレックスを待っていたユリウスやナルとハイタッチを行う。
そしてナビからアレックスの進化が終わると告げられて階段を降りて来た凛へ、ディレイルームで進化に備えて休んだら実際時間10時間程で済むと告げると、ユリウス達以外でその場にいた皆にかなり驚かれた。
そこへナビが全く動じていない様子でディレイルームを増やすかを尋ね、凛はアレックスが行っていた事を知っていたんだなと呆れた様子になりながら内心で突っ込みを入れたりする。
そしてそのまま夜が明け…ると言う事はなく、アレックスは目覚めたばかりなのに今から森へ狩りに行きたいと言い出した。
凛は遅い時間だからダメだと告げるも、アレックス達3人は午前中のだけでは足りなかった事や進化して体にどう変わったのかを知りたいと言う(戦闘狂らしい)理由を告げて全く折れる様子を見せず、反対に凛が中層中部までなら良いと折れてしまった。
それから3時間程アレックス達はフラム達を連れて狩りを行い、日付が変わって少しした頃にユリウスが進化出来ると分かり、そろりそろりと足音を立てながら屋敷に帰宅してそれぞれ別方向に別れて休む事に。
ユリウスは魔人からミゲルと同じく神輝金級最上位の『魔王』へと進化し、闇属性の適性が上がっただけでなく『フォース』と言うスキルを得る。
フォースは言葉1つで自分よりも弱い者へ強制的に命令を下せる様になり、受けた者は意識があるのに体は命令通り動かされると言う厄介さを持つ。
ユリウスは目覚めてからナビ越しに自分が魔王へ進化した事を知ってダイニングに向かい、そこでソファーに座りながら待っていたアレックスに報告を行う。
するとアレックスは魔王と言う単語を聞いて笑い転げてしまい、怒ったユリウスはブーストエナジーを服用して能力の底上げを図った。
それに気付いたアレックスは慌てた様子でちょっ、まっ!等と言うも既に遅し。
ユリウスは怖い笑みを浮かべながら早速フォースを発動させ、強制的にアレックスを土下座させた後、まるでヤ○ザの様に鞘から抜いた村正をアレックスの首元にヒタヒタと当てて引き攣らせていたりする。
その後、ユリウスとアレックスは凛に合流し、凛はやっぱり魔王になったんだ…と苦笑いを浮かべつつ、ユリウスにお祝いの言葉を述べる。
そこへひとまずヴリトラ達のステーキや唐揚げが出来たと言う事で美華達が凛達の元へ集まり、凛はそれらを皆に振る舞った事でパーティーが更に盛り上がりを見せ、結局エイミーやユリウスから遅れる形で進化を終えたナルが来る夜中まで行う事になるのだった。