456話
凛達は屋敷に戻った後、エイミーだけが自室へ行く為に階段を上がる…ではなく、今日中に進化を終えたいとして、反対にディレイルームがある地下へ続く階段を降りて行った。
一方の美華達はキッチンへ向かい、初めて倒した(テュポーンやグレンデルはとても美味しそうに見えない見た目の為にアウトとなった)ヴリトラやカルコタウルス、グラニが食べれるかのチェックを行いたいと告げて調理をし始める。
そこへ凛と美羽も参加しようとしてキッチンに入るのだが、美華からここは大丈夫だからガイウス達の様子でも見に行ってはどうだと伝えられる。
2人は美華の言葉を受け、ガイウス達がハンナに引っ掻き回されて苦労する様子が安易に想像出来てしまった為、互いを見ながら考える事は同じかと軽く笑い合っていた。
その後、2人はこの場を美華達に任せて王都へ向かう事に。
凛達はガイウスの私室に移動した後、パーティールームを通って外に出た。
するとパーティールーム内に100人以上の、外では300人以上の者達が酔い潰れており、そのほとんどが床や芝生の上で寝ていると言う惨状となっていた。
凛達は真っ直ぐ来た事で分からなかった様だが、実はエントランスホールでも100人程が酔い潰れていたりする。
「…あらら。まだ始まってから2時間を過ぎた位なのに、結構な人達が潰れちゃってるんだね。」
「よっぽどパーティーを楽しんでるって事なのかな?」
凛達は外に出て数歩進んだ所で立ち止まり、凛は苦笑いの表情を、美羽は不思議そうな様子を浮かべつつ、辺りを見回しながらそれぞれそう話す。
そんな凛達がいるガイウスの屋敷の庭では、今も200人程の者達がお酒が入ったグラスを持ちながら騒いでいた。
そして離れた位置にいるガイウス達が騒がしい様子となり始めた為、凛と美羽は顔を見合せた後、再び歩き出してガイウスの元へ向かう。
「らによ~、ヒック。ガイウスぅ、ヒック。あらしの酒がろめらいっれいうろ~?ヒック。」
「はぁ…飲み過ぎだ馬鹿者め。完全に呂律が回っていないではないか。」
かなり酔っ払った状態のハンナが、そう言いながら赤ワインの入ったグラスをガイウスに押し付けようとしていた。
それをガイウスは溜め息混じりで答え、グラスを取り上げてテーブルの上に置く。
ハンナは(上手く乗せれば多少安くで神輝金級の魔物を融通してくれるかも知れないと言う打算込みで)貴族達からヨイショされまくって上機嫌となっていた。
しかしその貴族達のほとんどが潰れていった為、つまらなく感じたのかガイウスにちょっかいを出し始めた様だ。
「ガイウスさん、お疲れ様です。」
「おお、凛殿か。どうやら恥ずかしい所を見せてしまった様だな、申し訳ない。」
「いえいえ、僕は大丈夫です。…もしかしてですが、この惨状の原因って…。」
「ああ。見ての通りと言うか…凛殿の考えで合っているぞ。」
そこへ凛がガイウスに声を掛け、ガイウスは何とも言えない表情となって返事を行う。
そして凛は笑顔で相槌を行い、ワイン等で汚れてしまっているハンナの体やドレスに清浄を掛けて綺麗にした後、困った表情を浮かべて違う方向を向いて話す。
ガイウスも凛と同じ方向を向き、やれやれと言った感じで答えた。
凛達の視線の先には、先程までワインやウイスキーと言ったお酒が入っていたであろう、空の瓶が何百本も散乱していた。
そしてアイザックを含め、かなりの者達がグロッキー状態で地面に倒れているのだが、彼らの近くではロイドとルルが上機嫌な様子でお酒が入ったボトルをラッパ飲みしていた。
そんな2人のすぐ近くではカクテルが入ったグラスを持ってはんなりとしているフューリエ、氷が入ったウイスキーの水割りのグラスを持ったゴーガン、白ワインが入ったワイングラスを持ったルークが楽しそうに談笑している。
その様子を少し離れた位置から頬を引き攣らせたアイザック一家が見ていた為、何だか近付けない雰囲気を醸し出していた。
それは屋敷の外、或いは入ってすぐの所にいる者達も同様らしく、現在の惨状からパーティーに参加しても本当に大丈夫なのかと不安がっていたりする。
「魔銀級の素材を用いた料理や酒がただで飲み食い出来ると言う事で盛り上がっておったのだが、あの2人が飲み比べをし始めてな。しばらく放置したらこうなってしまったのだ…。」
ガイウスは眠ってしまったハンナを芝生の上に寝せ、疲れた表情でそう話すのだった。