451話
凛達が建てた屋敷は入口から入ってすぐの所に広めのエントランスホールがあり、ホールから通路を曲がった先にキッチンを含めたパーティールームが、そしてエントランスホールやパーティールームの横に客間やバスルーム等がある。
エントランスホールとパーティールームは10メートル程の高さ、客間とバスルームはそれぞれ30畳程の広さとなっている。
そしてキッチンの下にはワインセラーと言った、酒類を保管する為の地下保管庫が、パーティールームから階段を上がった2階には15畳程の広さを4畳位に圧縮した部屋が40程、1番奥には大きめに用意したガイウスの私室が設けてある。
凛達が屋敷の用意をしている間、周辺から凛が高さ20メートル程で展開した灰色の障壁が見えたらしく、外で待っていたガイウスやリムネーの後ろや周りに沢山の野次馬が集まっていた。
そんな中、凛と美羽が障壁を抜けて外に姿を現し、障壁を解除して全貌を露にする。
ガイウスは感心した様子で、リムネーは目をキラッキラさせながら興奮した眼差しで塀や屋敷を見ており、野次馬達は先程まで更地だった筈が立派な塀や芝生や屋敷となって姿を現した事にかなり驚いた様子を浮かべていた。
ガイウスとリムネーは驚いている野次馬をそっちのけで凛に早く中が見たいと告げ、4人は一緒に入口にある門を通って敷地内に入る。
凛と美羽は庭や屋敷の周辺にある芝生を含め、外でもパーティーを開く事が可能である事を伝えた後、屋敷の玄関から入ってエントランスホール、客間、バスルーム、地下保管庫を含めたパーティールーム、2階の個室、同じく2階奥にあるガイウスの私室の順番で説明を行っていった。
「…別荘の筈が、サルーンにある屋敷よりも立派になってしまったな。」
「こう言うのは見栄えが大事ですからね。屋敷の方も近い内に行わせて頂きます。」
「ああ、そうして貰えると助かる。」
ガイウスの部屋で凛が説明を行うのだが、その間リムネーが備え付けの大きめのベッドの上できゃっきゃっとはしゃいでおり、ワンピースのスカート部分が捲れて少々大変な事になりつつあった。
それに気付いた美羽が慌てて直しに向かい、ガイウスが咳払いを交えてそう話すと(リムネーの様子を見た)凛が苦笑いからの笑顔で答え、ガイウスも笑顔となって頷く。
その後、凛達はガイウスの別荘からそこまで遠くない位置にあるベルガー公爵家に向かい、ガイウスとそれなりに歳が近くて仲の良いアイザックの元を尋ねる。(王都にいる貴族の中で唯一の知己とも言う)
アイザックは午前中に予定があった為、先程の陞爵式は顔見せ程度しか出来ずすまなかった等と話した後、アイザック夫妻やレナード以外の2人の息子の家族と共にガイウスの別荘へ向かう事に。
凛達は屋敷の入口で中の様子を窺っている野次馬達をすり抜けて敷地内に入り、アイザック達を屋敷の中へ案内した。
「ほう!いつの間にか屋敷が出来ているのも勿論だが、とても短時間で出来たとは思えない程に立派な造りなのだな!」
「ありがとうございます。」
2階にあるガイウスの私室にはポータルを設置してある為、1階部分や地下しかベルガー家の案内をしていないが、それでもアイザックは屋敷の雰囲気(特に地下の保管庫)が気に入ったらしい。
他にも部屋の造りや調度品、備え付けの冷蔵庫やレンジやドライヤーと言った魔導具に感動しており、テンションが高い状態でそう話した所へ凛が笑顔でお礼を返した。
リムネーはアイザックの孫達の相手をしており、エントランスホールからパーティールームを抜け、今は外で走り回っている。
「…ガイウス殿。貴殿が今度パーティーを開く際、可能であれば私も参加してみたいと思っているのだが…。」
「おお!それは是非!」
「でしたら、午前中にパーティーを行ったばかりではありますが、ガイウスさんさえ良ければ別荘を建てた記念と言う事で早速開いてみますか?」
「…すまないが、頼めるだろうか?」
「分かりました。折角のパーティーですし、外で屋敷の事を窺っている方々にも声を掛けてみますね。」
「分かった。」
そしてアイザックは少しそわそわとした素振りで話し、ガイウスはアイザックと親睦が深められると喜んで答える。
しかし凛の提案を受け入れたいと思いつつ、冷蔵庫の中身や食材等が何もない状態の為、現在自分だけだとパーティーを開けない事を理解する。
その為、ガイウスは申し訳なさそうにしながら凛へ頼み、凛は了承して屋敷の外にいる者達もパーティーに参加させる旨を伝えた。
ガイウスはこれを了承し、凛達やリムネー達がパーティーの準備を行った後、ベルガー家や外にいた者達と共に夜までパーティーを開いて盛り上がりを見せるのだった。