449話 85日目
85日目 午前8時頃
この日も合同訓練が行われるのだが、凛はゼノン達に任せて別行動を取る事に。
因みに、レナードは訓練初心者なのにも関わらず、昨日は2人から目一杯扱かれて限界を迎えた事で気絶し、訓練後に清浄魔法である程度綺麗にしてから宿に運ばれていたりする。
そしてつい先程、レオンが昨日と同じくレナードを迎えに行ったのだが、レナードは昨日の凄まじい訓練の後遺症で全身が激しい筋肉痛となった様だ。
レオンが訪ねる前にベッドから落ちてしまったらしく、体をぷるぷると震わせながら床を這っていた所を訪ねて来たレオンに見られてしまう。
それから一拍置いてレオンが腹を抱えて笑い始め、レナードはかなり悔しそうな表情を浮かべつつ、体を震わせながらレオンを睨んでいた。
同時刻 アウドニア王国王城 謁見の間にて
凛は美羽達やガイウスの配下であるリムネー達と共に、礼服を着用した状態で王城にある謁見の間へ向かった。
(実際は嫌がらせに近いが)バーナードからの王命でガイウスが公爵に上がる事が決まり、王城で開かれる陞爵式に参加する為だ。
今回、ガイウスはそれまでの騎士爵から一気に5段階も爵位が上がって公爵となる。
その様な事例は今までなかった為、評判が評判を呼んで王国中の注目がガイウスに向いた様だ。
噂のガイウスを一目見ようとして、かなりの人数の一般人が王城入口へ、貴族の中でも身分の低い者は同じく王城入口へ、それ以外の貴族達は王城内や謁見の間へと集まっていた。
凛は昨晩、火燐達もガイウスの陞爵式に参加しないかと誘ったのだが、火燐達は何やらやる事があるらしく不参加となった。(ついでに詮索も禁止とされた為、凛は寂しそうにしていた)
しかし代わりに『ブレイブメイズ』を全員連れて行けば、色々な意味で抑止力になるのではないかとのアドバイスを雫から受け、凛はその提案を採用する事にした。
その為、今回凛側の参加者は美羽とブレイブメイズの面々となる。
ブレイブメイズとはエイミーを筆頭に、凛を慕う様々な種族(紅葉や渚等、ある程度身内の者は除く)で構成された10人の女性達の事だ。
ブレイブメイズは戦闘や家事と言った総合力の高い順番で選ばれており、在籍している者は専用のメイド服を与えられている。
彼女達は普段、VIP宿や屋敷の手入れ等の与えられた仕事をこなしつつ、有事の際は凛からの呼び出しを優先するとされている。
そして今も凛の傍でおとなしく立っている様に見えて、内心では凛の傍にいられるからと狂喜乱舞していたりする。
それと、凛や美羽だけでなくブレイブメイズも見た目が非常に整っている為、貴族の中にはガイウスではなく礼服姿の凛達に意識を向けている者もいたりする。
午前9時半前
1時間程で陞爵式が終わり、王城の中庭でガイウスに対するパーティーが開かれたのだが、凛達はリムネー達と共に着替えを行う為に一旦屋敷へ戻る事となった。
それから20分程で凛達が戻って来るのだが、ガイウスはそれまでの間1人となってしまう。
ガイウスが1人になったのを幸いとでも思ったのか、次々と貴族達が群がっては話し掛けて来たり娘や妹や姉を嫁に妾にと押し付けようとした結果、自分の所を優先させるあまり貴族同士での喧嘩に発展しそうになっていた。
しかしその様な修羅場に近い状況下でも、他の貴族達がチャンスとばかりにガイウスへ身内を押し付けようとし、先程喧嘩しそうになった貴族達がそれに気付いて慌てて参戦すると言った行為を行ってくる為、ガイウスは内心でかなり辟易としていた。
「ガイウス様ぁーーーっ!!」
「おお!リムか、(心の安寧でと言う意味で)待ち侘びておったぞ!お前達も、良く来てくれた。」
『勿体ないお言葉。』
そんなガイウスの元へ、水色を基調としたドレスに身を包んだリムネーが元気良く走って向かい、ガイウスは嬉しそうな様子を浮かべてリムネーを両手で受け止めた後、右手でリムネーの頭を撫でながら着飾った部下達を労う。
「すみません、人数が多くて準備するのに手間取ってしまいました。」
「ガイウス様、待たせてごめんね?」
『失礼します。』
「いや、良いのだ。凛殿、美羽殿、それにエイミー達よ。良く来てくれた。」
リムネー達から少し遅れる形で凛達が到着し、凛と美羽がガイウスに話し掛けた事でガイウスは安堵の表情を浮かべながら返事を行った。
凛は灰色を基調としたスーツを、
美羽は髪をアップに纏めて白いロングドレスを、
エイミーは反対に髪を下ろし、普段の可愛らしさから一転してスリットが入って大人びた赤いドレスを、他にも美華達4人やクリスティーン、アラクネ、月夜達以外の鬼神、アウズンブラ代表のアルル、バロメッツも様々なドレスを着用している。
貴族達はいきなりガイウスの元へやって来た(凛を含めた)美女・美少女軍団に驚いており、アルルやバロメッツの女性のドレスから零れそうな巨乳にも大勢の目が向かっては、一緒に来た連れの女性から足を踏まれたり肘打ちを喰らう等して悲鳴が起きたりもする。
因みに、エイミーは貴族の間で有名な為か、ガイウスに名前を呼ばれた事でこの場にいるのだろうかと辺りをきょろきょろと探した後、見付からずに首を傾げている者が一定数いた。
どうやら、今のエイミーの様子が普段と違い過ぎて気付かれていない様だ。
その後もパーティーは昼まで開催されるのだが、貴族達は1人1人がパーティーの主役級となる美少女達や美女達がバーナード国王やガイウスと親密に話しているのを見て、彼女達は一体何者なのだろうかと戦慄していたのだった。