440話
「馬鹿な!?何故王都にあの様なドラゴンがいるのだ!!」
「まだです。ドラゴン4体だけでは終わりませんよ。」
「…何?」
「な、何だあれは!?」
「あれ?」
レナードは空中を見回しながら必死の表情で叫んだ後、凛の発言を受けて視線を移すのだが、近くにいるエリックが尻餅を突いて叫んだ為、疑問を浮かべた様子でエリックが見ている方向を向く。
『………。』
「ば、化け物…!?」
レナードが上空を見てみると、藍火達から更に50メートル程上空、及び藍火と朔夜の間から少し向こうに位置する北側にて、いつの間にか全長40メートル程で炎を纏った赤い鳥…朱雀が翼をはためかせた状態で出現しており、黙ったままこちらの事を見ていた。
それから朱雀と同じ高さで朔夜と団蔵の間の東側、団蔵と骸の間の南側、骸と藍火の間の西側の位置で、同じ位の大きさをした玄武、青龍、白虎の順番で姿を現していく。
4体が出現してから5秒程経った後、中庭から200メートル程真上の位置に、全長100メートル程で白銀色をした麒麟が現れるのだが、レナードは朱雀以外の4体もこちらに意識が向いていると分かった様だ。
上空を見上げたまま、戦慄した表情を浮かべてそう呟いた。
「朱雀、玄武、青龍、白虎…それに麒麟は、僕の仲間が姿を変えたものです。」
「な、なか…ま?」
「はい。」
凛は笑顔でレナードに朱雀達四神や麒麟の説明を行うと、レナードは驚いた表情のまま凛の方を向き、声を絞り出す様にして尋ねる。
これに凛は笑顔のままで答えた直後にふっと音を立て、その場から消えてしまう。
「消えた?そう言えば仲間がどうとか…心なしか先程よりも少し人数が減っ…まさか!?」
レナードはそう言いながら辺りを探すのだが、凛だけでなく美羽、火燐、雫、翡翠、楓の姿が見えない事が分かった。
そして途轍もなく嫌な予感がしたのか、はっとなった表情を浮かべて真上の方向を見る。
ゴロゴロ…パァン、パァンパァン…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
すると先程まで晴れていた筈の空に幾つもの雷雲が生まれて密集し始め、雷雲の中で何回か雷の音や稲光が発生した。
その後、雷雲の中から空気を震わせつつ直径20メートル、全長1キロメートル程で黄金色をした体の超巨大な蛇の龍…黄龍が姿を現す。
「なっ、なななななな何だあの馬鹿でかいドラゴンはぁーーーっ!?」
…ゴォガアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!
『!?』
黄龍が麒麟よりも更に高い位置で、特大の咆哮を上げる。
その咆哮の影響なのか、地上への落雷こそなかったものの雷雲から夥しい数の雷が発生し、エリックやレナード、兵達は物凄い音の衝撃や重圧を受け、そのほとんどが気絶した。
気絶こそしないまでも、その場にへたり込んで呆然とする者、頭を抱えて縮こまる者、壊れたり渇いた笑いを浮かべながら色々と垂れ流し、両手を挙げて正座をする者、もうダメだと思ったのか泣き出す者と様々だったが、既に泡を吹いて気絶しているエリックを含め、これから攻めこまんとしていた全員の心が折れてしまった様だ。
因みに、レオン達やガイウス達は黄龍達を見て感動していたが、ハンナ達冒険者組合総長やアマルガンは藍火達がドラゴンの姿へ変えた辺りから口をあんぐりと開けており、黄龍が咆哮を上げた後のレナード達の反応を見たタイミングで我に返った様だ。
しかし改めて(ハンナ達は敵だと思っている)黄龍達を見てみるも、明らかに自分達の方が格下だと分かっている為、かなり冷や汗を流しながらどう立ち回って攻撃するかを考え始めていたりする。
「皆ー!!もう充分みたいだよーー!!」
『…え?』
そんな緊張感(?)の中、ステラが上空へ向けて大きな声で叫んだ。
それにハンナ達だけでなくレナード達も反応し、不思議そうな表情を浮かべてステラの方を向く。
すると朱雀、玄武、青龍、白虎、麒麟、黄龍の順番で姿が消えたかと思いきや、火燐、楓、雫、翡翠、美羽、凛(その内の凛と火燐以外はスカートの為、風の抵抗を受けない様に障壁を展開しながら)が上空から次々にステラの近くへ降り立って来たのだった。