433話 81日目
それからも話し合いは続き、進化する事で得る光の適性を上げて応急処置を行える様にする為にも出来るだけ早くガイウスを聖人へ進化させ、そのついでとしてリムネー以外にも身辺警護を増やそうと言う事になった。
話し合いが終わって解散した後、ガイウス、ゴーガン、リムネーの3人は共に冒険者ギルドへ歩いて向かう。(今回はゴーガンも一緒だったからか襲われるまでには至らなかった)
そしてギルドの中にある酒場で待っていたロイド、ルーク、ルルを交え、飲みながらガイウスの今後について話し合いを行っていると、途中で酔っ払った状態のハンナとフューリエがやって来た。
ハンナはガイウスの隣でちびちびとオレンジジュースを飲んでいるリムネーの追及を行い、ゴーガンから一通りの説明を受けると、やる気になったらしく自分達もガイウスの進化や身辺警護の確保をする所を見たいと告げる。
これにガイウスは頭を抱えるのだが、ゴーガン達はハンナとフューリエがガイウスへ催促している様子を生暖かい目で見ていた。
81日目 午前8時過ぎ
凛、美羽、ガイウス、ゴーガン、ハンナ、フューリエ、ルルの7人で、死滅の森中層中部を進み始める。
「ガイウス様ー!頑張って下さーい!」
「「(にやにや)」」
「はぁ…。やり辛い…。」
リムネーは嬉しそうに前を歩くガイウスに激励を送り、結局付いて来る事になったハンナと面白そうだから付いて来たルルの2人は、にやにやとした表情でガイウスに付いて行きながらその後ろ姿を見ていた。
これにガイウスはげんなりとした表情で前を歩きながら呟き、凛と美羽はそんなガイウスを苦笑いで、ゴーガンとフューリエはにこにことして眺めていたりする。
「あ、そうでした。ガイウスさん、ここからそう遠くない場所に神輝金級の魔物がいます。念の為にこちらを。」
「…ん?ああ、分かった。ありがたく頂くとしよう。」
「「?」」
「それとですが、先に身辺警護要員を確保しようと思います。話が通じそうな相手なら僕が先行して説得するか、ガイウスさんがある程度弱らせた所で僕や美羽が説得を行います。そして魔物が僕達の説得を受け入れてくれる様でしたら僕がリムネーの時みたいに名付けや人化を行いますが、説得を受け入れずに攻撃を続けた場合はそのままガイウスさんが倒して下さい。」
「…分かった。」
凛はガイウスの元へ向かいながら話しつつ、腰に付けたアイテム袋(実際は無限収納だが)からコーヒー味のブーストエナジーを取り出して差し出す。
ガイウスはコーヒー味のブーストエナジーを何回か飲んでいる事もあり、すんなりと受け取って飲み始めた。
しかしブーストエナジーを知らないハンナとフューリエは商店で売られている缶コーヒーの様にしか見えなかった為、ガイウスは何故今ここで缶コーヒーを飲んでいるのだろうかと不思議そうにしていた。
凛はガイウスがブーストエナジーを飲んでいる間にこれからの予定の説明を行い、ガイウスはブーストエナジーを飲み終えた後に頷いて、空になった容器を自分のアイテム袋の中に入れて再び歩き出す。
それから1時間程ガイウスが1人で戦闘を行ってから凛達が説得、或いは凛が最初から説得を行い、ゲイザーや深部から流れて来たと思われるドレッドノート、それとジャガーノート2体を仲間にする事が出来た。
「ぬぉっ!なんと言う臭さだ!」
「…ガイウスから離れている筈の私達の所にまで臭いが届くのね。」
「臭いですー…。」
ガイウスはラフレシアクイーン3体と遭遇し、自身だけでなく離れた場所にいるハンナとリムネーも気分が悪そうにしていた。
「(臭いが)独特ですよね。そう言えば…人に姿を変えてからは大丈夫になったみたいですが、棗は初めて会った時はこの様な感じで敬遠され、とても悲しそうにしていましたね。」
『えっ!?』
しかし凛がそう告げると、棗と交流があるガイウス、ゴーガン、ルル、フューリエ、リムネーが目の前にいる存在が棗と同じだと知ってかなり驚いた様子で凛の方向を向き、一時ラフレシアクイーンと戦闘どころではなくなってしまう。
その間にラフレシアクイーン達は隙だらけとなったガイウスに攻撃を行おうとするも、瞬時にガイウスの近くへ移動した美羽により、伸ばした蔓の悉くを切断されてしまう。
それが切欠となって3体共心が折れてすんなりと仲間になり、凛はひとまず仲間を増やすのは終了と告げ、新たに仲間となった者達を連れて名付け部屋へ向かって行った。
ガイウス達は凛がいなくなった後も未だに固まったままだった為、ハンナはそんなガイウス達を不思議がっていたが、美羽が発破を掛けて進み始める。
そこから更に30分程経った頃にガイウスが進化出来る事が分かり、美羽達は森の散策を終了して第1領地へ戻った。
そしてこの日を境に、ガイウス達は棗に対してかなり優しい態度で接する様になるのだった。