429話
キラースコーピオンがいた所から後方100メートル程が、爆炎拳による大爆発の影響で木々や地面関係なくクレーター状に抉られていた。
「ぬっふっふー。」
「「………。」」
ナルは両手を腰に当てながら得意気な様子で軽く笑っている一方で、金級とは言えキラースコーピオンの硬い甲殻のほとんどを吹き飛ばす程の技の威力に、エリンとノリスは揃って驚いた表情を浮かべていた。
「………。」
ついでにではあるが、ステラと共に少し離れた位置にいたアマルガンも驚いていたりする。
「…何度見ても派手な技だ。しかし、属性を帯びた攻撃と言うものは羨ましくもある。」
「ガイウス様は魔法に適性がなかったんだっけ?」
「ああ、見事なまでにな。ゴーガンですらわずかに土属性の適性があったと言うのに、俺は本当に何もなかったのだ。だがその分身体強化に集中出来ているとも言えるし、複雑な所だが…。」
「でも言い方を変えれば、堅実な戦い方のガイウス様に合ってるって事だよね!」
「そうだな。そう言う事になるのだろうよ。」
そこへガイウスがナルの後ろへ向かいながら話し掛けた事で2人は軽く話を行い、ガイウスはふっと笑いながら話を締めくくった。
ナルは今回爆炎拳を用いてキラースコーピオンを倒したが、他にも蹴ってから数秒後に爆発が起きる爆炎脚、超級魔法ニュークリアブレイズを簡易化したものを掌から打ち出し、着弾した箇所に爆発を起こす爆炎波等がある。
いずれの技も相手を燃やし尽くす性質があるせいで使う場面は限られるが、ナルは派手好きな所がある為か分かっていながらたまに使っていたりする。
それからも美羽達は領地と領地を繋ぐ道に沿って進むと、かつて訪れた事がある鍾乳洞の入口が見えてきた。
「あー懐かしー!あの時の洞窟だー。」
「ミゲルさん達が仲間になった頃に入ったって言う洞窟だね。」
「そうそう。今でも勿論魔物が出るんだけど、中に照明を付けてあるから普通に歩く事も出来るよ。」
「照明?魔物がいる洞窟なのにかい?」
「うん。奥に地底湖やポータル小屋があってね。渚ちゃん達や流君達がいつでも来て泳げる様にってマスターが付けてくれたの。」
「成程ね。」
歩きながら美羽が少し興奮気味で叫び、そこへ納得した様子のステラと不思議そうなリアムを交えて会話を行う。
美羽以外の者達は美羽達の会話の内容から、死滅の森の中にある洞窟がどんなものか興味が湧いたらしく、美羽が中に入るか尋ねると満場一致で入る事が決まった。
「…へー、綺麗な所じゃないか。これで魔物が出さえしなけりゃ、観光地として充分にやっていけそうな位だよ。」
「…冒険者組合総長、感動するのは目の前の魔物達を倒してからにして下さい。」
「アマルガンさんの言う通りです。気を抜くには少しばかり早いかと。」
「ああ、分かってるさ。全く、鬱陶しい蝙蝠共だねぇ。」
美羽達が洞窟内に入って最初の広間に出た後、先頭を歩くエリンが周辺にある紫がかった鍾乳石等を見て感心した様子で話した。
そこへ少し困った表情を浮かべたアマルガンとノリスがエリンの両隣で話し、エリンはやれやれと言った感じで返事を行う。
広間の中では金級中位の強さを持つダークネスバットを含め、50匹程の蝙蝠の魔物達が鍾乳石に捕まる形で美羽達の様子を見ていた。
ダークネスバット達はこちらの事を見ている美羽達に対して黙って様子を見ていたのだが、しばらく経っても油断する気配がない為に痺れを切らした様だ。
「キィィィィ!」
ダークネスバットの1体が叫んだのを機に、配下のダークバット達が一斉に襲い掛かる事となる。
これらをエリン、アマルガン、ノリスの3人が中心となって風や土を用いた攻撃で倒していき、開始から1分程でダークバット達は殲滅された。
その事でダークネスバット2体が不利と感じたのか、その場から飛んで逃げようとする。
しかし飛び始めてすぐにステラから雷を纏わせた苦無を投げ付けられ、当たったと同時に強い感電に襲われた為、ダークネスバット2体は揃って息絶える事になるのだった。