428話
一方の美羽達はと言うと、凛達とは違い、和気あいあいとした雰囲気で死滅の森の散策を行っていた。
と言うのも、商国は完全に凛達の下に付いている事もあってその凄さは既に充分認識されており、獣国は前獣王のガルシア一味をステラ達が完封したと言う話が王都で有名となっている。
その為か、獣国の冒険者組合総長で50代前半の女性で兎の獣人であるエリンや魔銀級冒険者のアマルガンは、ステラを挟んで歩きながら自分達よりも強いガルシアがどの様にしてやられたのかと言う話を行っていた。
それを近くにいる美羽やナルやティナが拾い、ガイウスや商国の冒険者組合総長で40代後半のノリスが参加すると言う形となる。
ガィィイイン
「ぐっ!ぬぉぉぉぉぉおおお…!!」
ガイウスは現在、魔銀級上位の強さとなっている。
そんな彼がベヒーモスの突進を身体強化した状態で盾で受け止めた事で20メートル程後ろへ下がった所でぴたりと動きが止まった。
「グルルルル…。」
「…!今だ!!」
ゴォォォォン
「…!?」
ザシュッ
ガイウスはベヒーモスの力が緩んだ所を好機と捉え、離れようとするベヒーモスの頭に思いっきりシールドバッシュを叩き込んだ。
ベヒーモスはそれが元で脳震盪を起こしてしまい、動きが鈍くなった所へガイウスがベヒーモスの頭に剣を突き立てて倒す。
堅実な戦い方を行う、彼らしい倒し方だ。
「…ふぅ、こんな所か。」
「いや、お見事ですな。ベヒーモスにあの様な倒し方があるとは…。」
「これは剣と盾がベヒーモスよりも強かったから出来ただけの事。それ以下だとこうは行きますまい。」
「成程…。とは言えガイウス殿の強さもさる事ながら、お持ちの剣と盾は凛様の領地やホズミデパートで売り出されている、アズリール製のものですな?」
「ええ。こうやって狩りに出た時は重宝させて頂いております。」
「羨ましい…。アズリールシリーズはいずれも超高級品、一等地に豪邸を建てるよりも高いですからな。私もいずれ欲しいとは思っているのですが中々…。」
「ははは…。」
ガイウスはすぐに距離を取り、ベヒーモスが動かなくなった事で安堵の表情を浮かべながら呟いた所、ノリスが近寄りながら感心した様子で話し掛けて来た。
それから2人は軽く話を行うのだが、ガイウスは凛からアズリールソードとシールドを貰った、等ととてもではないが言える雰囲気ではないと感じた様だ。
ガイウスはかなり残念がるノリスの言葉を冷や汗混じりに苦笑いで誤魔化した後、ノリスが倒したベヒーモスを売って欲しいと言う事をガイウスが了承して話が終わる。
その後も美羽達は金級のドラウグルやキラースコーピオン、ハイ・ソードビーの群れから襲い掛かられ、皆で協力しながら倒して行った。
「ナル。あんた素手なのに、あたしよりも全然強いじゃないか。あたしよりも強い女性はそういないと思ってたからね、こうやって会えた事を嬉しく思うよ。」
「へへー。けどまともな状態での女性って意味でなら、あたしの師匠とか、藍火ちゃんやセルシウスちゃんとかの方が上なんだよー。あたしももっともっと頑張らないとなのだ。」
「へー、あんたがそこまで言うって事は相当なんだな。こりゃ、あたしも負ける訳にはいかないね!」
そんな中、ハイ・ソードビーの相手をしながらエリンがそう言い、ナルがその近くでハイ・ソードビーを倒しながら答えていた。
ナルの言葉によりエリンはやる気を出し、更に動く速度を上げて攻撃を加えて行く。
因みに、まともでないと言う意味でなら、勿論美羽が女性で1番の素手の使い手となる。
戦闘後、エリンとノリスは必殺技と呼べるものを持っていないと言う話になり、ナルは自分は持っていると自慢気に話していた。
すると丁度そこへ1体のキラースコーピオンが来て、エリン、ノリス、ガイウスが身構えた所、ナルが自分が相手をすると下がらせる。
「…それじゃいっくよー!魔炎流格闘術、奥義が1つ!爆・炎・拳っ!!」
ドゴォォォォン
ナルはキラースコーピオンの攻撃を避けつつ力を溜め、用意が出来た後も少しの間攻撃を避けていた。
そして両方の鋏をナルに突き出した所でナルは素早く右足を使って両方の鋏を蹴り上げ、万歳の様な構えになった所へそう叫びながら正拳突きの構えでキラースコーピオンの頭に攻撃を当てる。
するとナルの拳が当たった箇所の先から大爆発が起き、キラースコーピオンはその体のほとんどを吹き飛ばされる事になるのだった。