416話
「(この子の事を助けてくれてありがとう。けど、貴方達は一体…。)」
「私達は貴方達を助けに来た。…と同時に、仲間への誘いにも来た。」
「(仲間…?)」
「オレ達の所には今んとこ大精霊が3体いるんだよ。だからお前達もどうかってね。」
「(成程ね。貴方達程の存在なら、大精霊を従えても全然不思議じゃないわ。)」
青い精霊はふわふわと浮いた状態のまま(自分よりも格上だと感じたからか)恐る恐ると言った感じで尋ね、雫と火燐が答えた事で満足そうな様子となる。
しかしまだ上位精霊となってそこまで経っていないからか、口から言葉を発するまでには至っていない様だ。
「ひとまずこっちの作業は終わったよー。」
「おう、お疲れ。んじゃ、取り敢えず目的は達成した訳だし…そいつが目覚めるまで話でもするか。」
凛は赤い精霊を助け出した後に地面に寝かせ、精霊の周りに光の魔力を纏わせながら触手や侵食に対しての浄化を行っていた。
そして作業を終え、赤ちゃんを抱く様な形で精霊を抱き抱えながら報告を行い、火燐がそう言いながらテーブルや椅子を用意し始める。
しかし、アウラだけは火燐の手際の良さに少し呆れた様子を浮かべていた。
30分後
「(んん…。)」
「あ、目が覚めたみたいだね。」
「(大丈夫?)」
「(あ、ねーちゃん!良かった無事で…。)」
「(その代わり、貴方が危ない目に遭ったんだけど…。)」
凛の太ももの上にいた赤い精霊が目を覚ました事で凛が声を掛け、凛の隣に浮いている青い精霊が少し心配そうな表情をしながら覗き込んで訪ねる。
赤い精霊は軽く驚いた後、安堵の表情を浮かべて返事を返し、赤い精霊の好奇心から今の状況を招いた事で青い精霊は呆れた様子でそう話す。
どうやら青い精霊の方が先にキソースへ来たのと、少し早く生まれた事もあって青い精霊が姉、赤い精霊が妹の様な関係でいる様だ。
それと因みに、テーブルの上には凛が用意した(ジュエルフルーツを用いた)フルーツポンチが各人の前に並べられているのだが、真っ先に飲み終えたアウラは寂しそうな表情で空になったグラスを眺めていたりする。
「(うっ。ま、まぁ、今は何ともないみたいだし良いって事で…。)」
「いや、ダメだろ。オレ達が来て間に合ったから良かったものの、お前あのままだと明日中には乗っ取られてたんだぞ。」
「(少しづつ意識が削られて行く感覚があったけど…あれってあたしを乗っ取る為だったのか。)」
「そう言う事だ。…特に異常もねーみたいだし、ここから離れても問題なさそうだな。」
「(え?ここから離れる?)」
「(貴方も私もこの方達の世話になるって事よ。)」
「(あたし聞いてないんだけど?)」
「そりゃ気を失ってたからな。お前は魔素点が魔素を与えた事で少し強くなったみてーだし、これから鍛えていくのが楽しみだぜ。」
「(何それ怖い…。)」
赤い精霊は突っ込まれた事でたじろいだ後に誤魔化す様にして話し、今度はじと目の火燐から突っ込まれた為、少し怯えた様子で独り言ちていた。
そして火燐が頷きながらそう言って立ち上がり、赤い精霊が尋ねた後に青い精霊が答えた事で呆然とした様子となった所、火燐から伝えられた内容が衝撃だったのかかなり怯えた様子となる。
その後、キソースの魔素点を消滅させた事で他の魔素点が活発化するかも知れないと判断され、敢えてこのまま残す事になった。
「後は帰るだけですよね?私、アウラさんのお手伝いをしますね!」
「すまないが宜しく頼むよ。」
そして最寄りのオアシスにポータルを設置して帰る事が決まると、エミリーとアウラがそれぞれそう言って集団での先頭を歩き始める。
その途中でキマイラロードに遭遇し、エミリーが弱らせた後にアウラに止めを刺させた事で進化出来ると分かり、以降はアウラ以外の者が戦闘を行いながら進んで行った。
凛達はオアシスに着いてポータル付きの小屋を立てた後、第1領地へ戻ってから赤い精霊に『ソル』、青い精霊に『ルナ』とそれぞれ名付けを行い、アウラと共に屋敷で休ませたのだった。