414話
凛達は小休憩を挟んで再び歩き出すのだが、オアシスを過ぎた辺りから難易度が上がったのか出現する魔物の構成が変わった様だ。
アイアンアントが進化した金級のスチールアントの群れとは別に、魔銀級のスチールアントクイーンやキマイラロードやキングスパルトイ、アークグリフォンやベヒーモス、進化した事で倍の大きさとなったバジリスクキング(又はクイーン)、反対にサンドワームが進化して半分の大きさとなり、尻尾の部分にも頭が生えたアンフィスバエナが現れる様になる。
アンフィスバエナは片方の頭が炎のブレス、もう片方の頭が氷のブレスを吐いて攻撃を仕掛けて来た。
それらを先程と同様にアウラが前面に立ち…と行きたい所なのだが、先程の戦闘で進化寸前まで来た為、アウラ、火燐、雫以外の者達で倒しながら進んで行く。
「ベヒーモスか、そういや猛がここには同族がいるからって事で悔しがっていたな。」
「猛…凛の配下でベヒーモスキングの事だっけ?」
「ん。ベヒーモス対ベヒーモスの戦い、面白そうではある。」
「ああ。今の所味方のベヒーモスってのは猛だけだからな。それに見た所他にいねぇみたいだし、ベヒーモス同士が戦うってのはあんまなさそうだ。」
「あたしからすれば、あんな恐ろしいベヒーモスを軽々と倒す凛の方が怖く感じるんだけどね…。」
「それなら心配いらねぇな。」
「ん。アウラももう少ししたら簡単に倒せる様になる。」
「あんた達がそう言うと、本当にそうなりそうで怖いよ…。」
道中、(オークションでも人気があるからと言う事で最小限の傷で抑える為に)凛がビットを用いてベヒーモスの頭を撃ち抜く形で倒すのだが、火燐、アウラ、雫の3人は凛の様子を見ながらその様な事を話していた。
ベヒーモス及びベヒーモスキングの脅威は天使族の集落でも伝わってるらしく、かなり強い魔物として恐れられている
それと、猛は転生した影響もあって(戦闘時以外は)控え目な性格だが、ベヒーモス自体が非常に好戦的な魔物の為、猛以外で配下になったベヒーモスはいなかったりする。
凛達は1時間程進んだ所で先程よりも広大なオアシスが見えた為昼食を摂ろうと言う事になったのだが、湖の中に水棲の魔物がいると分かっているのもあって、少し離れた場所で昼食を摂っていた。
その後、昼食を済ませて再度歩き始めるとすぐに魔銀級の洪水龍や、リュウグウノツカイと呼ばれる白身魚の魔物達が湖から飛び出して来た為、凛達は迎撃して倒していった。
リュウグウノツカイは銅級の太刀魚が銀級の大太刀魚を経て進化した魔物で、見た目は地球と大体同じだが硬く鋭い鱗やギザギザ状の歯を持ち、体全体が切れ味抜群の刀の様になっている。
そして、リュウグウノツカイではなく大太刀魚でなら、鮭王や皇帝マグロ達と同じタイミングで火燐が捕っていたりする。
それから凛達は1時間程、魔物達を倒しつつ先を進んで行くのだが、スチールアントが進化して魔銀級となり、体長3メートルの大きさで外殻が炎属性の火鉱石で出来たスカーレットアントの群れが。
そして金級のキラースコーピオンが進化して魔銀級のヘルスコーピオンへ、それが更に進化して全長13メートル程となってオリハルコンで出来た黄金色の外殻を纏い、神輝金級中位に近い強さとなったパピルサグ2体が倒した魔物の中に含まれている。
2体のパピルサグの内、1体はエイミーが倒す事になったのだが、エイミーは凛に憧れを抱いている為か刀を使っている。
そして今では最も得意な属性が光と言うのもあり、凛から与えられた光属性の刀『天叢雲剣』を用いて一刀の元でパピルサグを沈めた後、凛に褒められた事で嬉しそうにしていた。
「分かっちゃいたけど、アレを一撃で倒すなんて恐れ入るね…。」
それにつられて周りも喜んでいる中、アウラだけは引き攣った表情でそう言いながら見ていた。
「…見えて来たね。」
「だな。」
「ん。」
先頭にいた凛がそう言うと、火燐と雫が続けて相槌を打つ。
「(ぐぐぐ…。)」
「(………。)」
凛達の視線の先には魔素点が20メートル程の高さの位置に存在しており、かつてのドネグ湿原の様な黒い触手の様なものを伸ばしていた。
その触手の様なものの先には、明るめのオレンジに近い赤色で30センチ程の女性の上半身部分の見た目をした者が掴まれて苦しそうにし、離れた位置では似た姿はしているもののネイビーに近い青色で構成された者が心配そうな様子で見つめているのだった。