409話
「さて、レナードよ。これはどういう事だ?」
「だっ、騙されてはなりませんぞレオン様!そやつは嘘を申しているのです!!」
「…私は昔から知っているから分かるが、総隊長は嘘を付かない。」
「黙れ!と言うか貴様、私がまだ話していると言うのに横から口を挟むんじゃない!」
「レナード、黙るのはてめーの方だ。話がややこしくなるからおとなしくしてろ。」
「ぐっ…!」
レオンがレナードに尋ねると明らかにレナードは狼狽えた様子で弁解を行うのだが、ミゲルが納得のいかない表情で話した事でレナードはミゲルに罵声を浴びせる。
しかしレオンが睨みながら話すとレナードは悔しそうな表情で唸り声を上げ、その後黙る様になる。
「ミゲル、ギルバートとやらは信頼出来るのか?」
「ああ。ギルバートは私の元上司に当たる人物でな。裏の組織のトップにいるのにも関わらず、依頼で殺めた相手を弔ったり、毎月こっそりと孤児院へ寄付や食べ物を届けに行く位真面目な性格なんだ。」
「へぇ、依頼次第で相手を殺めるってのは感心出来んが、それは誰にでも出来る事ではないな。」
「そうだ。凛様には遠く及ばないが、ギルバートも尊敬するに足る人物ではないかと私は思っている。」
「…ただの自己満足だ。ひとまず俺はレナードからあんた達に攻撃を仕掛ける様にとの依頼を受けた後、各国の代表達がいるとの事で隊長以外に実力がある部下達を総動員したが失敗。俺達は部下達が失敗した後に第2波として行動する予定だったが…その前にミゲル達が現れて阻止させられた。主力である俺達がやられた今、組織ももう終わりだな…殺せ。」
レオンはミゲルに話を振って軽くやり取りを行い、ギルバートは少し視線を逸らす場面があったものの、真っ直ぐレオンを見て話した。
「…だそうだが?」
「知らん!とにかく私には関わりのない事です。そやつらが勝手にやって自爆しただけの事。それに、私が依頼した等と言う話もでまかせに決まっております。」
「でまかせだと?」
「ええ。私がそやつらに依頼をしたと言う証拠はありませんからな。」
「証拠ならあるぜ。…ほらよ。」
「…え?こ、これは!?」
レオンが今度はレナードに尋ねるも、レナードは叫んだ後に白々しくそう答えた事でレオンは少しだけ怒った様子で呟く。
これにレナードはどや顔で話すのだが、レオンはそう言いながら懐から2Lサイズの写真を取り出し、写真をレナードの足元へ向けて飛ばす。
一方のレナードはまさか証拠があるとは思わなかった為、魔の抜けた返事を行った後、少し手前の所で止まった写真を拾い上げて叫んだ。
その写真を撮ったカメラは凛が用意した物で、先程フーリガンへ移動した際にミゲルへレナードの跡をつける様に指示し、レナードがギルバートへ依頼をしていると思われる様子が写っている。
「レ、レナードよ…。」
「こんな物は出鱈目だ!そ、そうか分かったぞ。私を不利な状況に追い込み、公爵家の家督を継がせないつもりなのだな!?」
エリックはレナードが写真を見ながらぷるぷると震えている事でもう無理だと判断したのか、右手をゆっくりと前にやりながら話そうとしており、他の者達も不味いと思ったのか凛達の近くへ避難し始める。
しかしレナードは写真を床に投げ捨てた後、引き攣った笑みを浮かべながらレオンを指差して叫ぶ。
「…んな訳ねぇだろうが!お前の方こそでまかせしか言ってねぇじゃねぇか、この嘘付き野郎がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「…っ!?」
これには流石にレオンも頭に来たのか、テラーボイスを交えながら大声で叫んだ。
レナードとその延長線上にいたエリックはまともにテラーボイスを受けてしまい、2人は共に前方へ倒れた後にそのまま泡を吹いて気絶する事になるのだった。