395話
このお話で章が終わります。
章の始めに登場人物紹介を載せさせて頂きますね。
「おお、凛殿達か。皆も今から昼食を摂るのだな。」
「お邪魔しているよ。」
「お疲れ様です。」
凛達が屋敷からVIP宿へ向かうと、入ってすぐの所で既に半分程昼食を摂り終えているガイウスとゴーガンに遭遇する。
ガイウスとゴーガンはそれぞれ笑みを浮かべながら凛に話し掛け、凛は2人を労った後に隣へ座って話をし始めた。
サルーンは街から都市へランクアップし、今も(凛から得た資金を含めた)大量の資金を投じて外部から大工等を呼んで急ピッチで家を建て続けている為、帝国や商国を含めた周辺からかなりの人が集まっている。
何故なら(凛の領地もだが)サルーンには運動場が存在しており、そこにいる指南役から無料で何度も指導を受ける事で自ずと実力がつく様になったと評判になっているからだ。
今ではサルーンに収まり切らないとして西側や北側の外にも運動場を設け、暁達以外の妖鬼や鬼神達を指南役として配置している。
そんな指南役から指導を何回も受ける事で、最初は死滅の森だから怖いとの理由で挑まなかった者達も実際に挑む頃には最低でも銅級の強さとなっている。
そして死滅の森にいる銀級や金級の強さを持った魔物の素材を第1領地にある解体場を経て商業ギルド総本部へ売却し、そこから(王国以外はポータルでだが)全世界の商業ギルドへと流れる事に。
死滅の森に挑まなかった者達もしばらく訓練を受けた事で実力が上がっている為、サルーンから拠点に戻った際に口コミとして広がって行った。
他にもサルーンは王国で唯一ホズミ商会があり、商会絡みで珍しい物が多いとして莫大な利益を生むと捉えられるのだが、それによってガイウスは貴族達に目を付けられてしまった様だ。
(実は騎士爵の)ガイウスやゴーガンを差し置いて、自分がサルーンを治めると言う貴族(主に男爵以上の者達)が何人も出て来た。
彼らのほとんどは(害意があるとして)凛の領地に入る事なく弾かれた者達だった為、単純にガイウス達の所へ向かっては八つ当たりや愚痴を溢していたりもする。
帝国は実力主義な所がある為、騎士爵でもガイウス強さだと大体が黙るのだが、王国は身分の高い者が低い者を使うのが当たり前だと考える傾向にある。
ガイウスはサルーンが完成した後に王都へ向かうつもりでいたのだが、発展途上の現在でも既に王国にいる貴族からのやっかみが凄く、ガイウスは精神を磨り減らしながら日々を過ごしている。
特に貴族達は最近、サルーンにある宿を借りつつ仕事中のガイウスの元へやって来ては長を代わる様にとの直談判を行っており、ゴーガンの方も貴族に仕えている者がギルドマスターを代わると上から目線で言われている。
他にも本人、或いは血縁の者がガイウス達の補佐や妻等にと言ったり、紅葉や暁の様な指南役を強引にスカウトしようとする者も日増しに増えて来ている様だ。
凛は朝食の度に(紅葉達の事もあって)ガイウスが疲れた顔で愚痴を溢したり申し訳なさそうにした後に訓練に打ち込む事で一旦はストレスを発散するのだが、訓練が終わってから仕事に行きたくなさそうな様子になっているのを見ていた。
その為(レオン達王族やゼノン達皇族が利用する事もあってそれまでは遠慮していたが)半ば強引にガイウスとゴーガンもVIP宿で昼食を摂る様に伝え、今日から2人もVIP宿で昼食を摂る流れとなる。
15分後
凛達は昼食を摂りつつガイウス達と話を行い、今は一段落している所だった。
火燐は今も食べ続けており、アウラも美味しさのあまり必死な形相で食べ続けている。
「はぁ…。王国の貴族が面倒だとは分かってはいたが、あの馬鹿共。揃いも揃って今のサルーンは凛殿の協力があってこそ成り立っているのだと全く分かろうとせん。それどころか、ただただ自分に領主の地位をよこせの一点張りだ。」
「今のサルーンを統治する事が出来れば伯爵、それにまだまだ伸び代があるって考えると、場合によっては辺境伯にだってなれる訳だからね。それでいて治めているのが騎士爵だって分かれば、皆は強気に出るってものだよ。」
「はぁ…あぁ、くそ。こんな事なら、パトリシア王女殿下に多少なりとも口利きを頼んでおけば良かった。…そう言えばだが、パトリシア王女殿下は無事に王都へ着いたのだろうか?」
「いえ。パトリシア王女殿下達は今朝の段階でまだ7割程でしたし、今のペースだと王都に到着するまで後1週間近く掛かるのではないかと。」
「そうなのか…。王都へ向かう時も顔色が優れない様に見えたし、進む速度が遅いのと何か関係があるのだろうか…。」
ガイウスは頬杖を突きながら愚痴を溢しており、そんなガイウスをゴーガンが苦笑いの表情で宥めていた。
ガイウスは溜め息をついた後に凛へ尋ね、凛がそう答えた事でガイウスは心配そうな表情となって呟く。
《マスター。そのパトリシア王女殿下ですが、どうやら現在フーリガン近くで襲われている模様です。》
そんな時、凛の元にナビからその様な情報が届くのだった。