391話
凛達はエリオット達にオーバ山の事を任せ、フィリップ達と共に先程聖都でオープンしたばかりの商店や喫茶店へ向かう事にした。
そして凛達が女神教本山から外に出て最寄りの商店や隣接する喫茶店へ近付いた所、店の前に並ぶ行列は短く、それでいて女神騎士団に属する者以外の客同士が入店するのを譲り合っている事に気付く。
どうやら神聖国は他の国と比べて購買意欲や食欲が控えめで規律を重んじる風習にあるのと、女神騎士団に所属する騎士は一般人よりも高い身分にあるとされる事が関係する様だ。
フィリップ達は店の前で様子を窺っている者達に遠慮なく商店や喫茶店を利用する事を告げ、(非番で私服姿の)騎士達へは模範客となる様に促しながら凛達と共に聖都内を回って行った。
午前11時頃
凛達が女神騎士団本部へ向かうと、何故かバルムンクを用いたジークフリートとEXブレードを用いた骸が手合わせを行っていた。
…ギィン、ガン、ガガン、ガン、ガキィィン
「…で、2人はどうしてここで手合わせをしているのかな?」
「いやぁ、それがな?騎士達が俺とジークフリート、どちらが強いのかって話になったんだよ。」
「僕達は上には上がいる事を知ってるからな。どちらが上などどうでも良かったのだが、折角だから手合わせをさせて貰ったと言う所だ。」
2人は凛達に気付いたてから数合打ち合って少し距離を取った後、互いに武器を背中の鞘に収めて凛の元へ向かう。
凛が2人に尋ねると、笑顔の骸と冷静な表情のジークフリートがそれぞれ答えた。
ジークフリートは喫茶店が休みの時に騎士団本部で騎士達を鍛え、エルマとイルマもたまにそれに付き合っていた。
その事を聞いていた骸はどの様な感じでジークフリートが騎士達に指南を行うかを尋ね、ジークフリートは今日が休みとの事でエルマとイルマも休みを貰い、クリムゾン達やスカーレット達と一緒に女神騎士団本部に来て見物を行う。
しかし始まって30分程経った頃に、訓練の順番を終えた騎士の1人が折角来たのに見ているだけなのかと骸へ尋ねる。
骸はそれもそうかと答えた事で指南役として参加する様になり、ついでにクリムゾン達も指南役として加わる事に。
骸は大剣、クリムゾン達男性陣は大太刀、槍、大斧、スカーレット達女性陣は片手剣と盾、双剣、双斧を用いて騎士達の相手を務める事に。
そして指南役が一気に増えた事で1人当たりの訓練時間が増え、30分程前に騎士達全員が疲れてダウンしてしまう。
対する骸達は全然元気だった事もあり、近くにいた騎士の1人がこの中で誰が最も強いのかと言う話になった為、2人が手合わせする流れとなった様だ。
因みにシャルルとシャルロットは雫と一緒に、社会勉強の一環として火燐達と行動を共にしている。
「ふーん。あれがあんたにべったりだったジークフリートかぁ…。あんた達もだけど、皆して強くなっちゃってるからビックリしたよ。」
「あー、しばらく会ってなかったもんね。ジークもあたしがいなくなった時はジラントだったし、今みたいに人の姿になれる様になったのも最近と言えば最近だからね。分からなくて当然だよ。」
「そっか。んで、そのジークと骸…だっけ?と親しげに話してる女の子は誰なんだい?」
「あの方は凛さんって言って、あの可愛さで男性なんだ。くれぐれも間違えちゃダメだよ?」
「男ぉ!?…あ。」
凛達から離れた所にある木陰にて、後ろに両手をやってるエルマと両手を前で組んでるイルマ、それと灰色の翼を生やした女性が腕を組みながら壁に凭れる形で凛達が談笑している様子を見ながら話をしていた。
女性はさばさばとした口調でエルマやイルマと話をしていたのだが、イルマが凛を男性だと伝えた事で驚いた様子となって叫んでしまう。
その女性の声が凛達に届いたのか、3人共こちらに顔を向けた事で女性はやってしまったと言いたそうな表情で呟いてしまい、凛達は互いに顔を見合わせて歩き始める。
「初めまして。僕は凛と申します。一応ではありますが、ジーク達やエルマ達を纏めさせて頂いてる立場にいる者です。」
「…ご丁寧にどうも。あたしはアウラ、中級堕天使だよ。」
凛は女性の前に立って笑顔で話し掛けるのだが、女性は先程凛について叫んでしまった事で少し気まずそうにした後、佇まいを正して自己紹介を行うのだった。