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ゆるふわふぁんたじあ  作者: 天空桜
世界周遊~ダライド帝国編~
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384話

「クワーッ!(アースハイヒールなのです!)」


「…!グルル…。」


梓は倒れて動かなくなったティラノサウルスの元へ向かい、土系上級回復魔法アースハイヒールを唱える。

ティラノサウルスは梓が自身に対し回復魔法を行った事に驚いたのか、目を開けた後に梓の様子を窺おうと思った様だ。

その場に立ち上がり、軽く声を上げながら梓の事をじっと見ていた。


「梓ー、そのティラノサウルスにどうして岩を破壊してたか尋ねて貰って良いー?」


「(分かったのです。)」


凛は大声で梓に尋ね、梓は頷いて念話で返事を行ってティラノサウルスと話をし始める事に。


ティラノサウルス曰く、最初は猫が爪研ぎをするみたいな感覚で岩を削ったそうだ。

しかしすぐに削れた部分が修復されて元に戻った事で不思議に思い、何回か試しに削ってはその都度修復された事で少しづつ本気になっていった。

そして今は絶対に岩の壁を破壊し尽くしてやるつもりで削っている所だったとの事。




「早い話がただの好奇心が本気になり、それからは岩を壊しては修復を繰り返してたって感じか。取り敢えずこの子もおとなしくなった事ですし、壁の向こうにいらっしゃる貴方も出て来て貰って大丈夫ですよ。」


「こ、ここには誰もいないよ…?」


『………。』


「あの、沈黙だけは止めてくれないかな…。」


凛は梓から念話による説明を受けてそう呟いた後、壁の向こうにいる存在に向けて問い掛ける。

しかし壁の向こうにいる存在は凛の言葉が信じられないのか、明らかに嘘と思われる答えが返って来た。

凛達は返事を聞いて複雑な表情になって黙ってしまい、続けて壁の向こうから今度は困った様子の声が届いた。


「…お兄ちゃん。あの壁の向こうにいる()()()、風の超・級・魔法を放っても良いかなぁ?」


「ごめんなさーい!今すぐ行くから許してー!」


凛と翡翠はこの部屋に入った時から、壁の向こうにいるのが土に関する精霊だと分かっていた為、翡翠は精霊がふざけてると感じた様だ。

翡翠は少し怒った様子となりながら超級の部分を強調して話し、精霊の弱点である風魔法を放とうとしたのか、右手を胸の前に持って来て小さな竜巻を発生させていた。


精霊はこれに慌てた様子で話した後に岩の壁を解除するのだが、壁の向こうから現れたのは2メートル程の大きさで全身が黒っぽく、ゴツゴツした鎧姿の者だった。


どうやら鎧姿の精霊は物質にかなり近い存在かつ風に弱い性質を持っている為、翡翠の超級魔法を受ける位なら姿を現そうと判断した様だ。


因みに、壁が解除された事で翡翠は小さな竜巻を消したのだが、翡翠が用意したのは風系超級魔法テンペストだったりする。

テンペストは小さな竜巻を起点とした半径500メートル程の非常に大きな竜巻を発生させ、近くの物を吸い寄せた後に竜巻内での落雷や風の刃による攻撃を行う魔法となっている。

翡翠がよく使うテンペストアローはこれを弱めた威力となっているが、その分使い回しやすくしている。




「鎧?何でこんな所に鎧がいるんだい?中身は人間とか?」


「私、こんな姿だけど生物じゃないわよ。ほら。」


「なんてこったい…。」


「彼女は鎧の姿をした精霊なんだよ。」


「ふふーん。しかも私は高位の精霊なの。分かったら私を崇…って、ちょっと!なんで舐めるのよ!?」


ルルが不思議そうな表情で尋ねると、精霊は話をしながら両手で頭の部分を取り外した。

ルルは精霊に首がなかった事で複雑な表情となり、凛が説明した事で精霊は得意げな様子となる。

しかし言い終える前にティラノサウルスが頭上に頭を持って来て精霊の臭いを嗅いだ後に舐め始めた為、精霊は困惑した様子でティラノサウルスの方を向きながら叫んでいた。


「オーバに到着してすぐに彼女がいるって分かったからね、折角だからここまで来てみようって思ったんだ。翡翠もだよね?」


「うん!これで精霊がいないのはあたしだけになっちゃったけど、楓ちゃんが喜ぶかなぁって思ったらどうでも良くなったんだー。」


「成程ねぇ…。」


凛がルルから翡翠に視線を移しながら話し、翡翠が笑顔で答えた事でルルは納得の表情で頷く。


「ちょっと!お願いだから止める様に伝…え?貴方達、他にも精霊の知り合いがいたりするの?」


精霊は凛達が話をしている間ずっとティラノサウルスに舐められ続けており、少し鬱陶しそうな様子で凛達に止めて貰う様に頼もうとする。

しかし自分以外にも精霊を知っている口ぶりに聞こえた為、今も後ろから舐められている状態で尋ねてみる事に。


「うん。貴方みたいに高位だった炎と氷の精霊がね。」


「だった…?」


「お兄ちゃんが名前を付けた影響で大精霊に進化したんだー。」


「だっ、だだだだ大精霊!?…あ、あのー、それじゃ私にも名前を付けて貰えたり…?」


「「あー、ごめんだけどパスで。」」


「なんでよーーーー!?」


これに凛が答えた事で精霊が呟き、翡翠が説明の補足を行う。

精霊にとって大精霊は世界中でも数える程しかいない選ばれた存在の為、精霊はかなり慌てた様子となった後に先程までの弱かったりふんぞり返った態度(虚勢とも言う)から一転し、いきなり媚び始めて来た。


しかし凛と翡翠が揃って苦笑いの表情で断った為、部屋の中に精霊の叫ぶ声が響き渡るのだった。

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