379話
一方その頃の美羽はと言うと、アレックスとステラと雫、それとレオン一家とフィリップ達、ゼノン一家と言う、中々の大人数で霊峰エルミールへやって来ていた。
美羽達は先程のじゃんけんの後にエルミールへ行く事が決まり、レオンが一緒に行きたいと言って来た所へフィリップやゼノンがやって来てこの様な形となった。
フラム達やティナ達はアレックスと一緒に行きたそうにしていたが、エルミールへ行けるのを楽しみにしているレオン達に気を遣い、また今度と言う事に。
レオン達は朝食後の訓練を終えて一旦仕事の為に王城、女神教本山、帝国城へ戻り、午前10時になる頃にパスカードを使って屋敷へ戻って来た。
その間にアレックスはアイシャとヴァレリー家へ向かい、当主のメアリーと話を行ってアイシャを預かる事となる。
「「寒っ!」」
「それじゃ雫ちゃん、寒さを防ぐ障壁をお願いね♪」
「ん、分かった。…でもやる気が出ない。」
エルミールは年中吹雪いている為、ステラとアレックスは来てすぐに寒そうな仕草を取り、他の者達も少なからず震えていたりしていた。
美羽は雫の方を向いて笑顔で促した事で、雫は寒さを防ぐ障壁を火燐と同じく半径10メートル程の範囲で展開する。
しかし雫はただただ障壁を維持する為に来たと言っても過言ではなかった為、いつもよりもかなりテンションが低い様子で話していた。
「ふっふっふー。雫ちゃんがそう言うと思ってー…じゃじゃーん!(神輝金級の美味しさの)クォーツストロベリーとアルルちゃん達のミルクをふんだんに使った、いちご練乳のかき氷だよー!終わったらこれを雫ちゃんにあーげるっ♪」
「ふぉぉぉぉぉ…!私、頑張る!」
『(2人ともしっかりしているなぁ…。)』
そこへ美羽が自信に満ちた様な悪戯っぽい笑みを浮かべた後、無限収納から少しだけ透明がかった苺のソースとジャム、それに練乳がかなり掛けられた特大サイズのかき氷を取り出す。
美羽はかき氷を両手で持っており、笑顔でそう話しながら雫に見せていた。
これに雫はそう言いながら、目をキラキラとさせた後にやる気となった表情となる。
その様子をステラ達は何とも言えない表情で見ており、内心その様な事を考えていたりする。
因みに、美羽は今回クォーツストロベリーを用いたかき氷を用意したが、他にもルビーマンゴーやエメラルドマスカット、アメジストグレープ、アンバーバナナ、ペリドットメロン、シトリンオレンジ、モルガナイトホワイトピーチ、タイガーアイパイン、タンザナイトブルーベリーが存在している。
いずれも改良に改良を重ね、昨日と一昨日に神輝金級の物が実った事でひとまず完成とし、それらを総称してジュエルフルーツと凛達は呼んでいる。
凛達はこれからもジュエルフルーツを改良して行く予定だが、今の所ジュエルフルーツを使って良いのは代表の凛、凛の補佐の美羽、農作物を作っている代表の翠の3人だけとなっている。
その為(試食を除いて)実際に食べるのはこれが初めてとなり、雫のテンションはMAXになった様だ。
「~♪」
『………。』
ステラは雫が展開した障壁の先頭を歩きながらシールドソードビットを動かし、空間認識能力とサーチを用いてあらゆる方向から来る氷の魔物達を斬り刻んでいた。
サラとシーラとレオネルはキラキラとした視線をステラやシールドソードビットに送り続け、レオン、タリア、レオパルド、フィリップは感心した様子で戦闘を眺めていた。
しかしゼノン一家とアーウィンとレイラは違うらしく、その内シールドソードビットがこちらに向かって来るのではないかとひやひやしていたり、どうやって動いているのかが気になって呆然とした様子で視線だけを動かしていた。
「ステラ、ご機嫌だな。」
「向かって来るのは意志を持った氷の塊みたいなものだからねー、相手の事を気にしないで思いっきり戦えるから楽しいのかも。」
そんなゼノン達の様子を知らず、ステラのすぐ右後ろにいるアレックスが軽く笑いながら話し、アレックスの隣にいる美羽も笑顔でそう答える。
「しかし…氷水晶だったか、一応は貴重な物になるんだよな?あまり細かくしたら回収に時間が掛かるんじゃねぇか?」
「うん。けどここよりも下にいる魔物の方が氷水晶を多く含んでるからね。同じ時間を掛けるなら下の方が良いんじゃないかなって思ったんだ。」
「成程な。」
そこへ2人を挟んで後ろにいたレオンが問い掛けた為、美羽は顔を少し右へ向けながら答え、レオンはそう言って頷く。
その後、美羽達は道なりに祭壇の間まで上がり、皆が感動している様子を浮かべている所へレオンが祭壇の間についての説明を行う。
それから仕掛けを解除して下へ下って行き、氷で出来た魔物達を倒して氷水晶を回収しつつ、かつてセルシウスがいた所まで向かって帰るのだった。
クォーツストロベリーだけは実在する宝石の名前を前後に入れ換えております。
今回の話に出た苺は濃いめのストロベリークォーツだと思って頂ければ。




